虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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 ※この話からネイサン視点に戻ります。

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 学園寮に持って行く為の荷物を詰めながら……詰め終わっても、セディーとたくさん話をした。

 なんというか・・・自分で思っていた以上に、その、わたしはセディーに愛されていたらしい。

 いや、わたしもセディーのことは大好きなんだけどね? セディーのストレートな言葉には、照れるっ……!!

 十五の男子に「可愛いね」は、やめてーっ! という感じかな? 結構恥ずかしいからねっ!?

 あと、赤ちゃんの頃のことなんか覚えてる筈ないって。さすがにゼロ歳や二歳の頃の記憶はないよ?

「ネイトは赤ちゃんの頃からとっても可愛かったよ? 残念ながら、あんまり会わせてもらえなかったけど……ああ、勿論、今も凄く可愛いよ。綺麗になったとも思うし」

 まぁ、やめてくれないワケだけど。少し寂しそうに、けれどにっこりと楽しそうに話すセディー。

 なんかなぁ・・・わたしに掛けられる、『綺麗』や『可愛い』という言葉は、ここ数年程は侮蔑的な意味や、悪意があることの方が多かったんだよね。
 騎士学校では、本当に男しかいなかったし。『お嬢ちゃん』だとか『女みたいな顔のクセに』とか、嫌な意味で言われていた言葉だ。

 まぁ、そんなことセディーには言わないけど。

 面と向かってそういうことを言って絡んで来たり、わたしを貶めようとして来る連中には、それなりの対応をしたワケなんだけどさ。

 だから、こう……悪意の無い、むしろ純粋な誉め言葉としての、親愛の意がめられている、『綺麗』だとか『可愛い』という言葉に、どう反応していいのか困る。クロシェン家向こうにいた頃は、毎日のようにスピカにも言われてたけど。

 最近はあんまり嬉しくなかった言葉の筈なのに、こう・・・面映ゆいというか、くすぐったいような気分になる。

 多分、セディーのは身内の欲目というものもあるんだろうけどなぁ。セディーは女の子みたい、だともわたしに言わないし。

 あと、もしかしたらセディーは、好意の伝え方が少し子供っぽいのかもしれない。なんというか、照れるくらい言葉がストレートだし……

 離れていたからなのか、わたしのことを子供扱いしているような気もする。昔の感覚が、まだ抜けていないというか。

 まぁ実際、セディーよりも三つ年下なんだけどね、わたしは。

 騎士学校で兄弟のいる奴らから聞いた話によると、世の年頃の兄弟というものは、もっと仲が悪いものだそうで……「昔は可愛かったのに、あの野郎。今はクソ生意気で可愛さの欠片も無い馬鹿弟め」だとか、「少し年が上だからって、威張り散らしやがってクソ兄貴め」などを聞いていたから、ちょっと覚悟していたというのに。

 今のところ、セディーに邪険にされる気は全くしない。あと、わたしもセディーを嫌いだとは思わないし・・・セディーには、嫌われたくない。

 ずっとわたしの味方でいてくれたセディーに嫌われるかと思うと・・・精神的にかなりキツい。

 照れたり、ちょっと恥ずかしい思いをしたりして、たくさんセディーと話して夜が更けて行った。

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