虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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番外。セディー視点14

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 それから――――

 あっという間に、ネイトの隣国への留学が決まった。

 なんでも、ネイトがこの家にまた暮らすようになったこと……母がお祖父様の家から無理矢理ネイトを連れ出したときのようなことを防ぐ為に、わざわざ隣国への留学なのだそうだ。

 隣国の、おばあ様の親戚のクロシェン伯爵家にネイトを預けるのだと聞いた。

 物理的に距離があれば、簡単に行き来ができなければ、ネイトを連れ戻すことが難しくなるから、とのこと。

 おばあ様の親戚は、安心できる優しい人達をちゃんと選んだから、ネイトが酷い目に遭うことはない、と。

 きっと、ネイトを大切に育ててくれる、と・・・

 それを聞いて、本当に情けなくなった。

 お祖父様とおばあ様にとって、うちは……

 両親は、安心してネイトを預けられなくて、ネイトに優しくなくて、ネイトを酷い目に遭わせるかもしれなくて、ネイトを大切にしない人達なのだと思われているということなんだから。

 そして、本当にその通りなんだから、なんとも言えない。両親は、ネイトに優しくない。

 ネイトと離れるのは嫌だけど・・・

 納得、するしかないじゃないか。

 その方が、ネイトの為になるなら。

 僕がもっと大きかったら、もっと丈夫だったら、こんなに寝込まなければ、ネイトをちゃんと守れたのかな?

 なんて・・・益体もないことを考えてしまう。

 あぁ、早く大きくなりたい、と思った。

**********

 ネイトが隣国に出発する日。

 向こうで必要になる荷物は、お祖父様とおばあ様が用意して荷作りを済ませてくれたそうだ。

 つくづく、なんとも言えない。

 ネイトになにもしてあげられないから、せめてと思ってお菓子を用意した。日持ちのする……ネイトの好きな焼き菓子を、

「道中でおやつにしてね」

 と渡した。

「ありがとう、兄上……セディー」

 ネイトの寂しそうな、少しふてくされたような、不安そうな顔に胸が痛む。

「元気でね、ネイト」

 しばらく会えないと思うと、寂しくて寂しくて涙が出そうだったけど、我慢して笑顔を作った。

「セディーも、元気でね」
「っ・・・うん!」

 ネイトは一人で隣国に行く直前で、不安で堪らないだろうに、僕の心配をしてくれるなんて・・・なんていい子なんだろうっ!?

 お祖父様とおばあ様が名残惜しそうに別れを告げ、ネイトが馬車に乗った。

 両親は一応ネイトを見送りはしたが、結局は馬車が出発するまで、一言もネイトに声を掛けなかった。

 ネイトは、そんな両親を少し気にしていたけど・・・なにも言わないで、諦めた顔をして行ってしまった。

 小さくなって行く馬車を見送って――――

 さっさと家に入ってしまった両親に、お祖父様もおばあ様もなにも言わなかった。

**********
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