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番外。セディー視点4
しおりを挟むそして――――ある日突然、家の中からネイトの声が聴こえなくなった。
それからは、体調が良くなっても、ネイトに会わせてもらえない日々が続いた。
母がネイトを連れて来てくれない。
どうしてネイトを僕の部屋に連れて来て会わせてくれないのかを母に聞くと、
「お義父様……おじい様とおばあ様がネイトを預かってくれているの。セディーはなにも気にしなくていいのよ」
という答えが返って来た。
笑顔で。
意味が、わからなかった。
なんで? どうして? と、ネイトをお祖父様達に預けた理由を聞くと、
「だって、ネイトが煩く泣くと、セディーがゆっくり眠れないでしょう? セディーが可哀想だもの。ネイトのことはおじい様とおばあ様に任せて、セディーはゆっくり休んでいいのよ」
笑顔で、言われて・・・
僕はすごく、泣きたい気持ちになった。
僕は大丈夫だから、ネイトの声ならウルサいと思わないから、ネイトを家に戻してほしいと頼んだ。
けど、その頼みが聞き入れられることはなかった。
「セディーは気にしなくていいの」
「早く良くなりましょうね」
「お母様が側にいてあげるわ」
「大丈夫よ、セディー」
僕がネイトのことを聞く度、そんな答えが返る。
お祖父様とおばあ様がお見舞いに来てくれたときには、ネイトのことを聞いた。
ネイトがお祖父様達の家でどんな風に過ごしているかを、教えてくれた。
けど、ネイトをうちに返してほしいとお願いしたら……とても困った顔で、
「セディーの具合がいいときになら、ネイトを連れて来てもいい」
そう言われた。赤ちゃんはとても風邪をひき易い上、病気に弱いから、移したら大変なのだと。
僕は、ネイトに会うのを我慢した。
本当は、とってもとってもネイトに会いたくて堪らなかったけど・・・
**********
僕がネイトに会いたいと、ネイトの話をすると、母は笑顔で「セディーは気にしなくていいの」と言う。
そのクセ、雰囲気はピリつく。
母はお祖父様とおばあ様がお見舞いに来ると、僕の側にいないことが多くなった。
お祖父様とおばあ様は溜息を吐いて、母のことには触れない。
多分・・・僕の前で、母と揉める姿を見せたくなかったのだと思う。
母は、お祖父様やおばあ様がなにか話そうとすると、すぐに「セディーが可哀想」と言って泣くから。
僕は・・・
お祖父様とおばあ様が来ると、嬉しかった。
ネイトの様子を教えてくれるし、お土産だと言って、ネイトが好きな食べ物を持って来てくれるから。
まぁ、赤ちゃんが食べられる物だから、ちょっと僕には物足りないと感じることもあったけど。
さすがに味の薄いお菓子はねぇ・・・美味しそうなゼリーだと思って食べて、薄いリンゴ風味のあんまり甘くないゼリーだったり、あまり甘くないプリンだったりしたときの微妙な顔をした僕を面白がるのは、どうかと思うな? その後ちゃんと、美味しいお土産をもらったけど。
偶にそんなイタズラをされたけど、それも楽しくて、お祖父様とおばあ様は僕に優しかった。
お祖父様とおばあ様が帰った後、母に「なにか酷いことを言われなかった?」と心配そうに聞かれたけど、そんなことはない。
むしろ――――母が側にいないと、『可哀想』という僕を憐れむ声が聞こえないと、なんだか気が楽になる。
それから、僕の体調が良いときを見計らっておばあ様がネイトを連れて来てくれた。
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