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しおりを挟む邪魔だから退けたい、程度にしか思っていない。
そして、セディーも父のことを『あの人』だと言った。その口調には、親しみが感じられなかった。もしかしたら父は、わたしが思うより……セディーにも、あまり興味が無かったのかもしれない。
だから――――
「けど、でも、セディーには・・・申し訳ないと、思う。から、ごめん」
罪悪感を持つというなら、セディーに対してだ。
「お祖父様が現役の間はいい。けど、セディーが侯爵になったらきっと、『セディック・ハウウェルは父親を追い落として侯爵の座に就いた息子』だと、一生言われ続けることになる」
「あ~、そっか・・・僕は別に構わないんだけど、ネイトは優しいね。心配してくれてありがとう」
セディーは穏やかな微笑みでわたしを見詰める。
「でもね、僕だってネイトのお兄様なんだよ? 折角、可愛い弟が頼ってくれたんだから。そのお願いを聞いてあげなきゃ。偶には、僕にも兄らしいことをさせてよ?」
「ごめん、セディー」
ぽんぽんと頭が撫でられる。
「そこは、ありがとうお兄様、じゃない? ネイト」
イタズラっぽくパチンとウインクするブラウン。
「……ありがとう、セディー」
「うん、お兄様に任せなさい」
それから――――
気まずいお願いをしたというのに、快く了承してくれたセディーとたくさん話をした。
こんなにセディーと二人だけで長いこと話をしたのは、わたしがクロシェン家に預けられる前以来だ。
セディーとは向こうにいたときからずっと手紙でやり取りや、騎士学校に通っている間(この期間の手紙は検閲されるので当たり障りの無い簡素な内容)は外泊のときにお互い忙しい時間をやり繰りして会ってはいた。でも、それはいつも極短時間だけだったから。話したいことがあっても、時間が足りなかった。
何時間も二人だけで一緒に過ごすのは、それこそ幼少期にこっそりと母の目を盗んで夜にセディーの部屋に通ってお喋りをしていたとき以来かもしれない。
わたしは、ベッドの上の友人を兄だとは認識していない頃から、穏やかで優しいセディーのことが好きで――――
__________
セディーもネイサンも、お互いブラコンですね。(笑)
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