虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
52 / 673

51

しおりを挟む

 邪魔だから退けたい、程度にしか思っていない。

 そして、セディーも父のことを『あの人』だと言った。その口調には、親しみが感じられなかった。もしかしたら父は、わたしが思うより……セディーにも、あまり興味が無かったのかもしれない。

 だから――――

「けど、でも、セディーには・・・申し訳ないと、思う。から、ごめん」

 罪悪感を持つというなら、セディーに対してだ。

「お祖父様が現役の間はいい。けど、セディーが侯爵になったらきっと、『セディック・ハウウェルは父親を追い落として侯爵の座に就いた息子』だと、一生言われ続けることになる」
「あ~、そっか・・・僕は別に構わないんだけど、ネイトは優しいね。心配してくれてありがとう」

 セディーは穏やかな微笑みでわたしを見詰める。

「でもね、僕だってネイトのお兄様なんだよ? 折角せっかく、可愛い弟が頼ってくれたんだから。そのお願いを聞いてあげなきゃ。偶には、僕にも兄らしいことをさせてよ?」
「ごめん、セディー」

 ぽんぽんと頭が撫でられる。

「そこは、ありがとうお兄様、じゃない? ネイト」

 イタズラっぽくパチンとウインクするブラウン。

「……ありがとう、セディー」
「うん、お兄様に任せなさい」

 それから――――

 気まずいお願いをしたというのに、快く了承してくれたセディーとたくさん話をした。

 こんなにセディーと二人だけで長いこと話をしたのは、わたしがクロシェン家に預けられる前以来だ。
 セディーとは向こうにいたときからずっと手紙でやり取りや、騎士学校に通っている間(この期間の手紙は検閲されるので当たり障りの無い簡素な内容)は外泊のときにお互い忙しい時間をやり繰りして会ってはいた。でも、それはいつも極短時間だけだったから。話したいことがあっても、時間が足りなかった。

 何時間も二人だけで一緒に過ごすのは、それこそ幼少期にこっそりとあの人の目を盗んで夜にセディーの部屋に通ってお喋りをしていたとき以来かもしれない。

 わたしは、ベッドの上の友人セディーを兄だとは認識していない頃から、穏やかで優しいセディーのことが好きで――――

__________

 セディーもネイサンも、お互いブラコンですね。(笑)
しおりを挟む
感想 175

あなたにおすすめの小説

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

生命(きみ)を手放す

基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。 平凡な容姿の伯爵令嬢。 妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。 なぜこれが王太子の婚約者なのか。 伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。 ※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。 にんにん。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路

八代奏多
恋愛
 公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。  王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……  ……そんなこと、絶対にさせませんわよ?

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜

真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。 しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。 これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。 数年後に彼女が語る真実とは……? 前中後編の三部構成です。 ❇︎ざまぁはありません。 ❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。

王太子殿下が欲しいのなら、どうぞどうぞ。

基本二度寝
恋愛
貴族が集まる舞踏会。 王太子の側に侍る妹。 あの子、何をしでかすのかしら。

処理中です...