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しおりを挟む今のは少し、いやみっぽかったかな?
けどまぁ、うちの馬車が先に来ていたとしても、乗らなかっただろうなぁ。
最悪、なにかの事情で祖父母の家の馬車が迎えに来てなかったとしても……う~ん、多分うちの馬車には乗らないな。
学校に馬を借りて、祖父母の家に行っていたかも? 学校まで返しに行くのは少し手間だけど、家族や親類に疎まれているような生徒には、教官達がそれとなく優しい。
なにせ……もし生徒本人が望み、それなりの覚悟があるのなら、親類縁者との縁切りに近いこともしてくれたりすると聞いた。遠方への士官という荒業を使って、ではあるけど。
わたしは別に、そこまで望んではいないし、軍へ進むつもりもない。
まぁ、それはそれとして。
うちの馬車は、乗ったらどこに連れて行かれるかわかったもんじゃない。
目的地とは違う場所に行くわ、更にはそこへ置き去りにされる可能性もあるわと、堪ったもんじゃない。そんな信用の無い馬車に、誰が好き好んで乗りたがるだろうか?
六歳の頃には花畑に置き去りにされたし。十二歳のときには、入学する予定の学園じゃなくて、騎士学校に連れて行かれて置き去りにされたことだし。
まぁそれも、この家ではわたしだけなんだろうけど。
「なんの連絡もありませんでしたから」
「っ、なにが言いたいのっ!?」
それにしても、母は煽り耐性ないな? 社交をしていないのが丸わかりだ。おばあ様ならきっと、にっこり微笑んでいるところだ。
「いえ、別に? それで、なんの用でしょうか? あなたがわたしに用があるとは、珍しいですね」
「・・・ネイト。あなたに縁談を用意してあげたの。感謝なさい」
「は?」
「わたくしの姪ですが、少し夢見がちではありますけど、侯爵家を継げない次男のあなたなんかでもいいと言ってくれる優しい子よ」
「なに、を……?」
「セディーよりもあなたの方が先に縁談がまとまりそうだけど、仕方ないわ。セディーはいずれハウウェル侯爵家を継ぐのだから、そのお相手はもっと吟味しなくちゃいけないものね」
セディーのことを柔らかく語る声に……
母の実家とは、付き合いが薄い。あちらの親族とは、会ったことが無い。ああ、いや。隣国のクロシェン家にいたわたしとだけ、疎遠だったのかもしれないけど。それで、なんで今更? というか、あなたが他人を夢見がちだとか言うと笑えるんですけど? と、そんなことが頭に浮かんだ。
「お見合いは明日よ。服は用意してあげたから、あなたも準備しなさい」
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