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 ははっ……入学、しちゃったよっ!?

 二年掛けて学んだことが、パーだよ!

 まぁ、予習の全部が役に立たないということは多分ないだろうけど、ここは騎士学校だし。授業内容がどうなっているか……

 あ~あ、これからを思うと気が重い。

 そして、案内されてやって来た寮内にて。

 わたしに絡んで来た馬鹿がいた。足を踏まれて肩を小突かれた。それだけならまだしも……

「ここはなぁ、お嬢ちゃんの来るようなところじゃないぜ?」

 という阿呆らしいことを、ニヤニヤと嘲るように小声で言われた。

「は?」

 わたしだって、ここに来たくて来たワケじゃないのに! 恥だって言われて、今更入学の取り消しすることはできないと思うから、覚悟を決めたというのに! と、ちょ~っとムカついたから、

「ぐがっ!?」

 ゴツン! と、にやけ面に頭突きヘッドバットをかましてやった。そしたら、なんだか凄く驚いた顔をされた。なんで驚くんだろうか? もしかしてバカなんじゃないかと思いつつ、

「ああ、期待に応えられなくてごめんね? わたし、そんなに弱くないから。やられたらちゃんとやり返すよ?」

 薄く笑って、同じく相手に小声で返す。わたし、女の子じゃないし。

「舐めんな、アホが」

 クロシェン家にいた頃は、ヤンチャなロイと殴り合いや取っ組み合いの喧嘩をしたこともある。きっかけはもう忘れたけど、くだらないことで偶に喧嘩をしたことを思い出すなぁ。
 ロイとの勝敗はどっこいどっこい……というか、勝敗が決まる前に大概は喧嘩両成敗で、ミモザさんにぶん殴られたことなんかも……イイオモイデ、デス。頭のてっぺんが痛かったけどね!
 無論、スピカが見てる前では手の出るような喧嘩はしなかった。スピカを怖がらせたくなんかなかったから。その辺りは、ロイもちゃんと弁えていた。

 でも、舐められると厄介だからね。上品じゃない行動も、偶には取ります。

「そこ、なにしている?」

 頭突きヘッドバットの音が目を引いたのか、寮監がこちらへやって来た。

「ちょっと彼とぶつかってしまって。謝ろうとしたら、思ったよりも距離が近くて頭をぶつけてしまいました。あ、鼻血出てるよ? ごめんね、大丈夫?」

 たらりと、まぬけ顔で鼻から赤色を垂らした彼にハンカチを差し出したら、

「っ、ふざけんな! 覚えてろよ!」

 と、怒鳴った彼にバッと手を強く振り払われた。そして、駆けて行く背中を見送る。

「なにがあった?」
「少しぶつかってしまっただけです」

 わたしは悪くない。相手がアホなだけです。鼻血は……さすがに、ちょっとだけやり過ぎたと思わないでもないけど。

「問題を起こしていないならいい。気を付けなさい」
「はい」

 と、笑顔で頷いておく。ちょ~っと周りがざわついているような気がするけど、気にしない。突っかかって来る奴が悪いんだから。
 わたしは、手は出していない。ちょっとばかり強く、頭が彼の顔面にぶつかってしまっただけだ。堂々とにこにこしておく。
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