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しおりを挟む一頻り花を堪能したスピカが落ち着くと、トルナードさんに、
「スピカを乗せてみるか?」
と聞かれたので、頷いた。
トルナードさんの前でスピカを抱っこしてポニーに上げて、わたしもその後ろに乗って、スピカを支えながら暫くポニーを歩かせてみて、危なげないとお墨付きをちゃんともらってから、次回からスピカを乗せてもいいとOKしてもらった。
トルナードさんから、もしも落としたら、わかってるよな? 的な威圧的な笑顔を向けられたけど、もちろんスピカはわたしが落馬してでも死守しますとも。スピカは絶対に落としません!
ロイも同じようにしてスピカをのせることをトルナードさんにOKをもらって、近隣なら三人で出掛けてもいいと了承をもらった。
摘んだ花は、家に帰る頃には萎れてしまっていて、
「おかあさま。さっきまで、おはなさんげんきできれいだったの。しおしおでごめんなさい」
と、スピカはしょんぼりしながら握った花をミモザさんへ渡していた。その姿にトルナードさんはおろおろ。ミモザさんは苦笑して、けれど……
「ありがとう、スピカ」
と嬉しそうに花を受け取っていた。
そして、今度はミモザさんも一緒に五人でピクニックに行こうと決定した。
♘⚔♞⚔♘⚔♞⚔♘⚔♞⚔♘
それから、スピカをポニーに乗せたわたし達の行動半径が少し広がった。
クロシェン家の近隣を、三人であちこち散策した。
それにも慣れて来ると、もう少し遠出が許されるようになった。
ロイとスピカとわたしの三人だったり、トルナードさんとミモザさんも一緒に五人で出掛けたり……
お弁当を持って、クロシェン家から少し離れた場所の景色の綺麗な湖だったり、ベリーの採れる森、一面のクローバー畑、ポピー畑、牧場、街へ出たり、クロシェン領の視察に連れて行ってもらったり、ただただ遠くまでポニーを走らせるだけだったり。
いつの間にかわたしは、馬車で出掛けることも抵抗が薄れて、段々と平気になっていることに気が付いた。
そうやってクロシェン一家と過ごして――――
毎日が、とても楽しかった。
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