上 下
21 / 673

20

しおりを挟む

 一頻ひとしきり花を堪能したスピカが落ち着くと、トルナードさんに、

「スピカを乗せてみるか?」

 と聞かれたので、頷いた。

 トルナードさんの前でスピカを抱っこしてポニーに上げて、わたしもその後ろに乗って、スピカを支えながらしばらくポニーを歩かせてみて、危なげないとお墨付きをちゃんともらってから、次回からスピカを乗せてもいいとOKしてもらった。

 トルナードさんから、もしも落としたら、わかってるよな? 的な威圧的な笑顔を向けられたけど、もちろんスピカはわたしが落馬してでも死守しますとも。スピカは絶対に落としません!

 ロイも同じようにしてスピカをのせることをトルナードさんにOKをもらって、近隣なら三人で出掛けてもいいと了承をもらった。

 摘んだ花は、家に帰る頃には萎れてしまっていて、

「おかあさま。さっきまで、おはなさんげんきできれいだったの。しおしおでごめんなさい」

 と、スピカはしょんぼりしながら握った花をミモザさんへ渡していた。その姿にトルナードさんはおろおろ。ミモザさんは苦笑して、けれど……

「ありがとう、スピカ」

 と嬉しそうに花を受け取っていた。

 そして、今度はミモザさんも一緒に五人で・・・ピクニックに行こうと決定した。

♘⚔♞⚔♘⚔♞⚔♘⚔♞⚔♘

 それから、スピカをポニーに乗せたわたし達の行動半径が少し広がった。

 クロシェン家の近隣を、三人であちこち散策した。

 それにも慣れて来ると、もう少し遠出が許されるようになった。

 ロイとスピカとわたしの三人だったり、トルナードさんとミモザさんも一緒に五人で出掛けたり……

 お弁当を持って、クロシェン家から少し離れた場所の景色の綺麗な湖だったり、ベリーの採れる森、一面のクローバー畑、ポピー畑、牧場、街へ出たり、クロシェン領の視察に連れて行ってもらったり、ただただ遠くまでポニーを走らせるだけだったり。

 いつの間にかわたしは、馬車で・・・出掛ける・・・・ことも抵抗が薄れて、段々と平気になっていることに気が付いた。

 そうやってクロシェン一家と過ごして――――

 毎日が、とても楽しかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたの『番』は埋葬されました。

月白ヤトヒコ
恋愛
道を歩いていたら、いきなり見知らぬ男にぐいっと強く腕を掴まれました。 「ああ、漸く見付けた。愛しい俺の番」 なにやら、どこぞの物語のようなことをのたまっています。正気で言っているのでしょうか? 「はあ? 勘違いではありませんか? 気のせいとか」 そうでなければ―――― 「違うっ!? 俺が番を間違うワケがない! 君から漂って来るいい匂いがその証拠だっ!」 男は、わたしの言葉を強く否定します。 「匂い、ですか……それこそ、勘違いでは? ほら、誰かからの移り香という可能性もあります」 否定はしたのですが、男はわたしのことを『番』だと言って聞きません。 「番という素晴らしい存在を感知できない憐れな種族。しかし、俺の番となったからには、そのような憐れさとは無縁だ。これから、たっぷり愛し合おう」 「お断りします」 この男の愛など、わたしは必要としていません。 そう断っても、彼は聞いてくれません。 だから――――実験を、してみることにしました。 一月後。もう一度彼と会うと、彼はわたしのことを『番』だとは認識していないようでした。 「貴様っ、俺の番であることを偽っていたのかっ!?」 そう怒声を上げる彼へ、わたしは告げました。 「あなたの『番』は埋葬されました」、と。 設定はふわっと。

婚約破棄? 五年かかりますけど。

冬吹せいら
恋愛
娼婦に惚れたから、婚約破棄? 我が国の規則を……ご存じないのですか?

【完結】護衛騎士と令嬢の恋物語は美しい・・・傍から見ている分には

月白ヤトヒコ
恋愛
没落寸前の伯爵令嬢が、成金商人に金で買われるように望まぬ婚約させられ、悲嘆に暮れていたとき、商人が雇った護衛騎士と許されない恋に落ちた。 令嬢は屋敷のみんなに応援され、ある日恋する護衛騎士がさる高位貴族の息子だと判明した。 愛で結ばれた令嬢と護衛騎士は、商人に婚約を解消してほしいと告げ―――― 婚約は解消となった。 物語のような展開。されど、物語のようにめでたしめでたしとはならなかった話。 視点は、成金の商人視点。 設定はふわっと。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

【完結】彼が愛でるは、龍胆か水仙か……

月白ヤトヒコ
恋愛
お母様が亡くなり、お父様が再婚して新しい義母と義妹が出来て――――わたくしはいつしか使用人同然の扱いを受けていました。 それでも懸命に過ごし――――という、よくあるチープな物語みたいな状況に、わたくしはつい数ヶ月前までおりました。 けれど、これまた物語のような展開で、とある高位貴族のご子息とお知り合いになり、あれよあれよという間に、彼がわたくしの状況を、境遇を、待遇を全て変えてしまったのでした。 正義感が強くて、いつもみんなに囲まれて、人気者のあなた。わたくしを助けてくれた、王子様みたいな優しいあなた。彼と婚約できて、幸せになれると信じておりました。 けれど、いつの間にか彼は別の……以前のわたくしと似た境遇の女性と親しくしなっていました。 「……彼女は、以前の君のような境遇にある。彼女のつらさを、君ならわかってあげられる筈だ。だから、そんなことを言わないでくれ。俺は、彼女を助けてあげたいんだ。邪推はやめてくれ。俺は、君に失望したくない」 そう言われ、わたくしは我慢することにしました。 そんなわたくしへ、彼の元婚約者だった女性が問い掛けました。 「ねえ、あなた。彼が愛でるは、龍胆か水仙か……どちらだと思います?」と。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

【完結】私の婚約者はもう死んだので

miniko
恋愛
「私の事は死んだものと思ってくれ」 結婚式が約一ヵ月後に迫った、ある日の事。 そう書き置きを残して、幼い頃からの婚約者は私の前から姿を消した。 彼の弟の婚約者を連れて・・・・・・。 これは、身勝手な駆け落ちに振り回されて婚姻を結ばざるを得なかった男女が、すれ違いながらも心を繋いでいく物語。 ※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしていません。本編より先に読む場合はご注意下さい。

処理中です...