虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
24 / 673

23

しおりを挟む

「だから、ネイトが我儘を言ったのでしょう? 帰りたくないと駄々をねて、何年も向こうのお世話になっておいて。挙げ句、そんな我儘を言うだなんて。本当に恥ずかしいわ。どうせあなたは、セディーが苦しんでいるときにも遊んでいたんでしょう? ネイトは昔からそうだったものね。ほら、今だってただいまも言わないじゃない」

 ・・・まぁ、兄上が寝込んでいたときに遊んでいたことは否定できない。
 というか、兄上が寝込んでいたということ自体、隣国にいたわたしには知りようがないんだけど。

 ただいまも言わないって……一方的に捲し立てて、話を聞く気がないのはあなたの方でしょうに。
 あと、聞こえなかったかもしれませんが、兄上にはちゃんと言いましたけどね。

 この人は一体、なにを言いたいんだろうか?

 兄上セディーが寝込んでいたとして、わたしが遊ぶのをやめたら兄上の体調が良くなるとでも言うのだろうか?
 まぁ、それならそれで、一度くらいは試してみることもやぶさかではないけどね。

「母上っ!?」
「どうしたの、セディー? そんな大きな声を出して。興奮すると身体に良くないわよ?」

 棘のあった口調が、柔らかく変わる。

「ネイトに酷いことを言わないでください!」
「酷いこと? なにを? わたしは、ネイトの我儘を叱っているのよ?」

 すごいな。全然会話が噛み合ってない。そして、母的にはわたしが我儘を言ったことになっているのか。

「っ……ごめん、ネイト。帰って来たばかりで疲れてるでしょ? 中入ろうか」

 大きく溜め息を吐いた兄上が、母から目を逸らし、わたしの肩を抱いて家に入ろうと促す。

「セディー、あなたがネイトに甘いのはわかるけど、甘やかしてばかりはよくないのよ?」

 わたし達の後ろから付いて来る、如何いかにも困ったという風な母の声。

 ・・・なんというか、母は随分と人の話を聞かない感じの人になっているらしい。まぁ、わたしが知らないだけで、以前からこう・・だった・・・という可能性もあるけど。

 兄上が疲れるワケだよねぇ……

「ごめん、ネイト。大丈夫?」

 苦い顔で小さく謝る兄上に、

「わたしは大丈夫だけど、兄上の方こそ。大丈夫?」

 小さく返しながら……母がわたしになにかキツい言葉を言う度、兄上がすまなそうな顔をしていたことを思い出す。わたしは、兄上セディーにそんな顔をさせたくなかった。
 だから、母がいるときにはあまり兄上に近付かなかった。まぁ、母には「セディーのお見舞いにも来ないなんて、ネイトは本当に薄情なのね」だとか言われた覚えがあるけど。

「……ネイトは……」

__________

 意思の疎通が難しい感じです。
しおりを挟む
感想 175

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい

宇水涼麻
恋愛
 ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。 「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」  呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。  王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。  その意味することとは?  慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?  なぜこのような状況になったのだろうか?  ご指摘いただき一部変更いたしました。  みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。 今後ともよろしくお願いします。 たくさんのお気に入り嬉しいです! 大変励みになります。 ありがとうございます。 おかげさまで160万pt達成! ↓これよりネタバレあらすじ 第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。 親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。 ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。

【完結】さよなら私の初恋

山葵
恋愛
私の婚約者が妹に見せる笑顔は私に向けられる事はない。 初恋の貴方が妹を望むなら、私は貴方の幸せを願って身を引きましょう。 さようなら私の初恋。

【完結】本当の悪役令嬢とは

仲村 嘉高
恋愛
転生者である『ヒロイン』は知らなかった。 甘やかされて育った第二王子は気付かなかった。 『ヒロイン』である男爵令嬢のとりまきで、第二王子の側近でもある騎士団長子息も、魔法師協会会長の孫も、大商会の跡取りも、伯爵令息も 公爵家の本気というものを。 ※HOT最高1位!ありがとうございます!

なにをおっしゃいますやら

基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。 エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。 微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。 エブリシアは苦笑した。 今日までなのだから。 今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

今更「結婚しよう」と言われましても…10年以上会っていない人の顔は覚えていません。

ゆずこしょう
恋愛
「5年で帰ってくるから待っていて欲しい。」 書き置きだけを残していなくなった婚約者のニコラウス・イグナ。 今までも何度かいなくなることがあり、今回もその延長だと思っていたが、 5年経っても帰ってくることはなかった。 そして、10年後… 「結婚しよう!」と帰ってきたニコラウスに…

処理中です...