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しおりを挟む「だから、ネイトが我儘を言ったのでしょう? 帰りたくないと駄々を捏ねて、何年も向こうのお世話になっておいて。挙げ句、そんな我儘を言うだなんて。本当に恥ずかしいわ。どうせあなたは、セディーが苦しんでいるときにも遊んでいたんでしょう? ネイトは昔からそうだったものね。ほら、今だってただいまも言わないじゃない」
・・・まぁ、兄上が寝込んでいたときに遊んでいたことは否定できない。
というか、兄上が寝込んでいたということ自体、隣国にいたわたしには知りようがないんだけど。
ただいまも言わないって……一方的に捲し立てて、話を聞く気がないのはあなたの方でしょうに。
あと、聞こえなかったかもしれませんが、兄上にはちゃんと言いましたけどね。
母は一体、なにを言いたいんだろうか?
兄上が寝込んでいたとして、わたしが遊ぶのをやめたら兄上の体調が良くなるとでも言うのだろうか?
まぁ、それならそれで、一度くらいは試してみることも吝かではないけどね。
「母上っ!?」
「どうしたの、セディー? そんな大きな声を出して。興奮すると身体に良くないわよ?」
棘のあった口調が、柔らかく変わる。
「ネイトに酷いことを言わないでください!」
「酷いこと? なにを? わたしは、ネイトの我儘を叱っているのよ?」
すごいな。全然会話が噛み合ってない。そして、母的にはわたしが我儘を言ったことになっているのか。
「っ……ごめん、ネイト。帰って来たばかりで疲れてるでしょ? 中入ろうか」
大きく溜め息を吐いた兄上が、母から目を逸らし、わたしの肩を抱いて家に入ろうと促す。
「セディー、あなたがネイトに甘いのはわかるけど、甘やかしてばかりはよくないのよ?」
わたし達の後ろから付いて来る、如何にも困ったという風な母の声。
・・・なんというか、母は随分と人の話を聞かない感じの人になっているらしい。まぁ、わたしが知らないだけで、以前からこうだったという可能性もあるけど。
兄上が疲れるワケだよねぇ……
「ごめん、ネイト。大丈夫?」
苦い顔で小さく謝る兄上に、
「わたしは大丈夫だけど、兄上の方こそ。大丈夫?」
小さく返しながら……母がわたしになにかキツい言葉を言う度、兄上がすまなそうな顔をしていたことを思い出す。わたしは、兄上にそんな顔をさせたくなかった。
だから、母がいるときにはあまり兄上に近付かなかった。まぁ、母には「セディーのお見舞いにも来ないなんて、ネイトは本当に薄情なのね」だとか言われた覚えがあるけど。
「……ネイトは……」
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意思の疎通が難しい感じです。
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