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21※ちょいシリアス。
しおりを挟む毎日が、とても楽しかった。
トルナードさんもミモザさんも優しくて、ロイとスピカがいて、そこにわたしが入ってもみんな笑顔で、家族みたいに過ごせて――――
でも、そんな楽しい日々は終わりを告げた。
『ネイサンはこちらの学校に通わせるので、迎えを遣ります。長期に渡りネイサンをお預かりくださり、感謝します。お世話になりました』という、両親からの手紙で。
嫌だった。
帰りたくなんてなかった。
スピカと、ロイと、ミモザさんと、トルナードさん達と、離れるのが酷く寂しかった。
ロイは、またわたしのために怒ってくれた。
ミモザさんもトルナードさんも難しい顔をして、
「辛かったら、お祖父様とおばあ様を頼るんだよ」
とわたしに約束させた。
そして、帰るまであと何日と指折り数えて、クロシェン一家と過ごして――――
**********
その日。
わたしは朝早く起きて、
「ごめんね。帰らないと、いけないんだって」
と、まだ眠っているスピカのおでこにキスを落とした。そっと亜麻色の髪を撫でて……
それから、クロシェン家を出た。
スピカの泣く顔は、見たくなかったから。
ロイはすごくふてくされた顔で、
「元気でな、ネイサン。絶対また来いよ!」
そう言ってくれた。
けど、わたしは頷けなくて……
ミモザさんとトルナードさんは、心配そうな顔でわたしを見送ってくれた。
迎えに来た馬車の座席は、やっぱり空っぽ。
荷物とお土産を積み込んでもらって、こちらへ来るとき同様。わたし一人で座席に乗った。
実家を出るときには、あんまり寂しいとは思わなかったのになぁ。
まさか実家へ帰るときになって、こんなにも寂しい思いをするだなんて――――
全然、思いもしなかった。
スピカ、泣いてないといいんだけど……と思いながら、持たされたサンドウィッチを噛った。わたしの好きな物ばかりが入っていて、美味しい筈なのに、どこか味気なく感じる。
久々の一人の時間が、なんだかとても長く感じた。
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