虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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「なぁ、ネイサン。俺さ、ずっと気になってたんだけどよ~」
「なに?」

 家庭教師からの宿題を二人でやっていたときのこと。飽きて来たのか、ロイが絡んで来る。

「なんでお前、そんな髪長いの? なんで女の子みたいに髪伸ばしてんの?」

 つんと、首の後ろで簡単に括った髪が軽く引っ張られた。

「え?」

 ロイに聞かれたことの意味がわからなくて、首を傾げる。

 そう聞いたロイの髪は、普通に短い。

 というか、わたしくらいに髪の毛の長い男の子は、見たことが無い気もする。

「? いや、だってお前、しょっちゅうスピカに髪引っ張られて迷惑そうな顔してんじゃん。痛そうだしさ。なのになんで切らねぇの? って思ってさ」

 ロイはとても不思議そうだ。

「ぁ~……いや、これは別に伸ばしてるワケじゃない、と思う」
「は? そんな長くてか? 腰くらいまであって? なに言ってんのお前」
「前髪は目に入ると困るからって、乳母が切ってくれてたけど……後ろは、切ったことない」

 確かに、わたしの髪は男にしては長い。結んでない状態で、腰くらいまでの長さがある。
 今嫌なことに気付いたけど、丁度スピカが立ったときに掴み易い位置にあるのかもしれない。

 まぁ、それはかく、実は物心付いてから、前髪以外切った覚えがない。だから、腰の位置くらいここまで伸びた……のだろう。

「? なんで?」

 ……多分だが、わたしの髪を切っていいのかわからなかったから、なのかもしれない。
 父も母も、わたしのことはあまり関心がないから。わたしの乳母は……母にあまり好かれてなくて、避けられていたみたいだし。髪を切っていいのか聞く機会がなく、ずるずるとここまで来たのだろう。

 祖父母も、特になにも言わなかったから……父か母の趣味で、わたしの髪を伸ばしているのだと思っていたのかも。

 兄上の髪は長めではあるけど、こんなに長くはないから……わたしのこの腰まである長い髪は、わたしへの関心の無さなんだろうけど。

「誰も切ってくれなかったから……?」
「マジかよっ?」
「うん」

 目をまるくして驚くロイに頷く。

「じゃあさ、お前が切ってもいいって思うんなら、切ってもいいんじゃね? そしたらさ、立ってるとき後ろから髪引っ張られなくて済むぜ」
「! そうだね! じゃあ、切ろうかな」

―-✃―――-✃―――-✃―-―-

 早速、ロイが散髪が得意だという侍女を呼んで来て、髪を切ってもらった。

 腰まであった髪の毛をバッサリと、肩の辺りまでの長さにしてもらった。

 もっと短くてもよかったけど、ずっと長かったのをいきなり短くすると、風邪をひいたり体調を崩すかもしれないからと、この長さに落ち着いた。

 確かに背中が涼しくなって、頭もなかなか軽くなった気がする。ずっと長かったから意識してなかったけど、髪の毛って意外と重さがあるらしい。

 そして、なにより一番嬉しいのは……これでもう、歩いているときにいきなり後ろからスピカに髪を引っ張られなくて済むということっ!!

 まぁ、抱っこしたり座っているときには、変わらず引っ張られそうな気はするけど……
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