157 / 158
……もしやと思いますが、シエロ王子も面食いなのですか? 女性は中身が大事ですよ?
しおりを挟むさてさて、今日はどうしようかしら?
サファイラちゃんとあれこれしたいけど、ちょっとやりたいことが多くて選べない……って、ハッ! そうよ、選べないなら選びに行けばいいのよ!
「というワケで、本日は町ぶらお買い物デートにしようと思います」
「あの、なにがというワケなのですか? それに第一、ネロ様はデートの意味をわかっていらっしゃるのですか?」
シュアンの呆れた顔が向けられた。
「ふっ、当然です。お互いに好意を抱いていたり、逆に好意なんか微塵も抱いていなくても、お見合いだったりお付き合いだったり、ときには利害関係なんかで、男女がお出掛けすることをデートと称するのです。仮令、どちらか……または双方共にがどんなに苦痛で、無駄で無為な時間に感じようとも、男女が一緒に同じ空間にいたという事実のみでデートと称することもできるのです」
「……ある意味間違ってはいないのですが……普通は、お互いに好意を抱き合う男女が仲を深める為に出掛けることをデートと称するのではありませんか?」
「まあ、別にわたし。今更男女の仲がどうこうということには一切幻想を抱いてませんから」
「っ!? す、すみません、余計なことを言いました」
サラッと言ったあたしの言葉に、酢でも飲んだかのような顔でぎょっとして謝るシュアン。
別に謝らなくてもいいのに~。むしろ、あたしは男女の仲よりも男同士の仲の方が気になるし! なんだったら、友情どころか無関心同士の男の人達の仲を邪推という邪目線で見捲って、腐妄想するのが大好きな腐女子だものっ!!
まあ、それは一旦おいといて。
「なんかこう、サファイラ嬢のキャッキャウフフした顔が見たい!」
「え?」
「わかるっ! そうだよな、美少女がキャッキャウフフする姿とか、もうそれだけで眼福だよな!」
「ですよね! 可愛い女の子とか関係無く、美形がきらきらした笑顔で楽しく過ごすと、もうそれだけで眼福! 目の保養! 広がるパラダイス!」
「可愛い女の子が可愛い女の子と一緒にキャッキャウフフしてたら最高だよな!」
「……もしやと思いますが、シエロ王子も面食いなのですか? 女性は中身が大事ですよ?」
シュアンが心配そうな顔で蒼を見下ろす。
「そ、そうですよシエロ様! 幾ら見た目が良くても、性格の悪い女性はいますからね! そういう女性に引っ掛かったらどうするんですかっ!?」
と、焦ったように珍しくシュアンに同意するグレン。
「あ? ぁ~……ま、顔だけ良くて性格最悪な女がいることは知ってるぞ? つか、そういう顔だけ女とは別に付き合いたいとか思ってねぇし。そういう顔だけ女や顔だけ男は、普通に観賞用だろ? な、ネロ」
「ふっ、当然です。お近付きになりたくない相手であれば、別にこちらから近付かなければいいだけのこと。近付いて来るなら避けるべし! けれど遠くから、『美形だなー』と思って眺める分にはいいのです。なにせ、『観賞用』ですからね。見るだけで害になる人というのも珍しいでしょうし……」
アーリーたんとか並みの、見てる人を狂わす程の美形はそうそういないわよ。
「まあ、どんなに性格が悪かろうが、クズでゲスい外道だろうが、容姿が優れているという一点のみで惹かれる人はいますけど」
「だよなー。ちなみ、そういう性格ブスに引っ掛かって入れ込む程俺はアホじゃねぇ」
「そうです。それに、そういう性格ブス女に引っ掛かる前に、わたしがその女の本性を暴いて排除するので大丈夫です!」
「やー、排除はさすがにやり過ぎじゃね?」
「え~? だって、話の通じないお馬鹿って、なにするかわからないし……それに、大事な大事なシエロ兄上を騙したり傷付けようとする輩赦すまじ! 地獄を見せてくれるわ!」
「落ち着け。まだ騙されてねぇし。つか、騙される予定もねぇから」
どうどうと、蒼があたしを宥める。
「そうだね。シエロとネロを騙そうとする輩には、お仕置きが必要だよね」
にっこりと頷くライカ。
「ですよね!」
「ライカ兄上が言うと洒落にならない気がしますが? そして、俺はむしろライカ兄上が騙されないか心配なんですけど」
「ふっ、大丈夫です! ライカ兄上と婚約したがるお嬢さんの本性もわたしが暴いてやりますとも!」
そこらの有象無象な輩に、この可愛いツンデレぷにショタはくれてやらん!
「それは安心なような、むしろ不安が増すような……? 最悪、ライカ兄上の縁談全部潰されそうな気もするんだが?」
「え? 僕ってそんなに心配されてる感じなのっ!?」
「ま、当然ですね。なにしろライカ兄上はかっこよくて賢い王子様。これでモテない道理が無いでしょうに? な、ネロ」
「そうです。賢い上に可愛くて優しい、リアル王子様♪」
今のところ、王位継承権第一位の王子だし。母親であるアストレイヤ様の実家も、国一番の軍閥。権力を持ちたい貴族家にとっては垂涎ものの優良物件。そして、ツンデレ美形なぷにショタ♡
「これはもう、普通にモテてモテて困っちゃうくらいにモテるに決まっています。というかモテない方がおかしい!」
「ええ~……そ、そうかな? っていうか、リアル王子なのはシエロもネロも一緒でしょ」
照れたお顔でぷいっと顔を背けながら、ツンデレた言動だこと♡こういうところが可愛いのに、本人はきっとわかってないのよね~♪
「やー、俺もネロもある意味かなり扱いに困る系でしょうに」
「ですねー。面倒にも程がありますよ」
それはもう、なんていうか? 地雷臭がぷんぷんする系の難アリ王子よねー? 自分で言うのもなんだけど、シエロたんもネロたんも国王からの扱いとか? あとは……あたし、中身腐女子だもの!
「殿下方。そろそろ、サファイラ様とのお出掛けの準備をしなくてはいけないのではありませんか?」
スンとしながらも、シュアンが若干眉を寄せて話を変える。
「ハッ! そうですよ、ライカ兄上はどんな変装にします? ちなみに、今日のわたしはレイシーちゃんと呼んでくださいね♪」
「ぁ~、前のやつか。なら、俺はシェンで」
「え? 前? レイシーちゃんとシェンって?」
「変装したときの偽名です」
「あの、それじゃあ、俺はグレインですか?」
満面のワクテカ顔で聞くグレン。
「あ、今日はグレンさんは普通にシエロ兄上の護衛見習いで結構です」
「ぁ、そうですか……」
一気にしょぼ~んと落ち込むグレンに、
「ほら、今日は男性が苦手なサファイラ嬢とのお出掛けですから。サファイラ嬢とは適切な距離を保ってくれないと困ります」
フィーラちゃんにあまり近寄るなと言っておく。ほら、グレンってシエロたんが絡むとすぐにガルガルするから。男が苦手になりつつある女の子とは相性良くなさそうだし。
「そうでしたね。わかりました」
「というワケで、ライラさん。お着替えしましょうね?」
「へ? ライラ? って、僕のことっ!? 昨日のあれ、冗談じゃなかったのっ!?」
「ライカ兄上が不用意に行きたいって言うからですよ。女装が嫌なら、大人しく待っていた方がいいと思います。きっと、ネロがライカ兄上を可愛い可愛い言い捲って、絵姿を描かせたりするでしょうし」
「ええっ!? 本当にそんなことするのっ!?」
「ふっ、無論です! 絵の得意な人にじっくりとライラちゃんを観察してもらって、沢山描いてもらうに決まっているでしょう! 恥じらうお顔とか、最高に可愛いじゃないですか!」
初めての女装に恥じらうぷにショタとか最高! 垂涎もの! ごはん何杯でも、ガンガンイケちゃうわ!
「そして、額に入れて飾って永久保存します! なんなら、ライラちゃんコレクションを作ります! 任せてください!」
「あ、僕やっぱりお留守番したいな」
すっと視線を逸らしたライカが気まずそうに言う。
「え~? ライカ兄上も一緒に可愛い格好して行きましょうよ♪」
「こら、嫌がってるライカ兄上に無理強いすんな。あと、その目やめろ。ちょっと怖いし……」
「ちぇー……残念……ライラちゃん、絶対可愛いのにー」
「はいはい、ライラちゃんはお前の心の中に存在する幻の女の子ってことで。ほら、お前女装すんだろ? さっさと準備して来い」
「仕方ないなぁ……」
と、蒼に宥められて着替えに向かった。
♩*。♫.°♪*。♬꙳♩*。♫
ライカ「えっと、ネロを止めてくれてありがとうねシエロ」(*゜∀゜)=3
シエロ(蒼)「まあ、アイツは可愛いものや綺麗なものが大好き過ぎるだけで、悪気があるワケじゃないんで。許してやってください」(ヾノ・∀・`)
ライカ「ふふっ、わかってるよ」(*´∇`*)
シエロ「まぁ、その分余計に性質が悪かったりもするんだが……」(lll-ω-)
ライカ「ん? なにか言った?」(੭ ᐕ))?
シエロ「いえ、なんでもありません」( ・`д・´)
20
お気に入りに追加
112
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

『奇跡の王女』と呼ばないで
ルーシャオ
恋愛
サンレイ伯爵嫡子セレネは、婚約の話が持ち上がっている相手のジャンが他の伯爵令嬢と一緒にいるところを目撃して鬱々していた。そこで、気持ちを晴らすべく古馴染みのいる大兵営へと向かう。実家のような安心感、知人たちとおしゃべりしてリフレッシュできる……はずだったのだが、どうにもジャンは婚約の話を断るつもりだと耳にしてしまう。すると、古馴染みたちは自分たちにとっては『奇跡の王女』であるセレネのためにと怒り狂いはじめた。
元王女セレネが伯爵家に養子に出されたのは訳があって——。

帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる