腐ったお姉ちゃん、【ヤンデレBLゲームの世界】で本気を出すことにした!

月白ヤトヒコ

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それって、僕にもシエロとネロに教えられることがあるってことっ!?

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 サファイラフィーラちゃんのパパ公爵との密会日が決定した。

 そして、フィーラちゃんを連れて来てシュアンと顔を合わせことにも了承をもらった。しかし、ここに来て重大な悩みが発生してしまった。

「ふぅ……」
「ん? どしたよ、ネロ」
「ネロ? 深刻な顔してどうしたの?」

 と、おそらくは憂いを帯びたネロたんこと、あたしを覗き込む蒼とライカ。

「実は、隣国の公爵様と極秘会談を取り付け、ライカ農場の農作物や保存食などの食糧をいい感じのお値段で売り付けようと思っているのですが……」
「おお、なんだ。もうそこまで話が進んでんのか」
「ええっ!? 隣国の公爵家と取り引きするのっ!? そんなのいつ決まったのっ!?」

 驚くライカに頷く。

「はい。決まったのは、ついこの間のことですね。ほら、隣国はクラウディオ殿下が王太子位を返上したので、情勢が不安定になりそうだと思ったので、その関係でちょっくら営業掛けていたんですよ」
「いや、普通はちょっくらで隣国の公爵家に営業掛けたりできないと思うんだけど……?」
「まあ、ネロだからな。コイツ自体、普通じゃないし。ライカ兄上、一々そういうこと気にしたら大変ですよ」
「え? そうなの?」
「そうです。で、なんかトラブルでも起きたのか? その処理に手間取ってるとか?」
「いえ。今のところ、トラブルはありません。順調ですね。シュアンのお父上からの情報も上がっていますし。交渉自体は……公爵様のお気持ち次第ではありますが。こちらに取っては、悪い取り引きにはならないという確信があります」
「あ? じゃあ、なんでそんな深刻な顔で溜め息吐いてんだよ?」
「どちらで会うべきか、と。少々悩み中ですね」
「は?」
「まあ、ぶっちゃけ、公爵様は前座です。その後にお会いする方に、ネリーを会わせるべきかと」

 あたしってばネロたんとネリーちゃんを一人二役なもんだから。パパ公爵とネロたんで会って、その後にフィーラちゃんとネリーちゃん姿で会って……となると、ちょい手間なのよねー。面会時間も、そう多くは取れないと思うし。お着替えの時間が勿体ないというか。

「え? もしかして、実はお忍びで王族が来る……とか?」

 ネリーちゃんの格好女装姿で行くべきかということを察したライカが、ひそひそと小さい声で聞く。

「いえ、公爵様のお嬢さんです」
「え? 公爵の娘? ……もしかして、ネロみたいにすっごく頭良くて交渉の場に出て来るとか?」
「才女であることは間違いないとは思いますが、交渉の場に出ては来ないと思います」
「? それじゃあ、実は極秘のお見合いとか?」

 ああ、そっちに思考が行っちゃうのねー。ま、相手の情報知らないからかもだけど。

「いえ、それも違いますね。相手のお嬢さんは確か……わたしより八つ程年上ですので」
「ああ、それなら違いそうだけど……ならどうして?? 向こうがネリーと友人になりたいとか?」

 ライカはきょとんと不思議そうに首を傾げる。

「いえ。実は、公爵様のお嬢さん。つい最近、クズな男と婚約を解消したばかりでして」
「え?」
「ぁ~……そっかそっか。そういうこと」

 成る程、という風に頷く蒼。

「その元婚約者の男が大層なクズだったらしく、そのお嬢さんは少々男性不信になっているようでして」
「あ……そういう繊細な事情が……って、これ僕が聞いて大丈夫な話?」
「まあ、オフレコ内緒話ってことで。男性不信気味なお嬢さんと、どう顔合わせをしたらいいものかと、少々悩んでいたところです」
「う~ん……わからなくはないけど、ネリー会って大丈夫なの? 後で、裏切られたとか思ったりしない?」
「まあ、子供なので大丈夫かな? とも思いますが……ほら、お嬢さんの男性不信の状態は直接会ってみないと判りませんからね」

 ネロたんという美幼児な男の子でも駄目なくらい深刻だったら、やっぱりネリーちゃんで会う方がいいわよね。

「ん~……そうだな。お前、顔女みたいだし。雰囲気を柔らかい感じにすりゃイケんじゃね?」
「……女の子みたいな顔って、シエロがネロに言うんだ」
「ライカ兄上、どういう意味ですか?」
「……いや、なんでもないよ?」

 ちょいキレ気味な蒼のにっこりした笑みに怯んだライカが、そっと顔を逸らす。

「あ、ちなみにシエロ兄上は参加決定ですので」
「は? あ~……ま、お前が行くならしょうがないか」
「はい。アストレイヤ様にはシエロ兄上が同行しないなら、別の人を行かせると言われているので」

 な~んか、蒼をあたしのストッパーだと思ってるのよねー。ふっ、そう簡単ににお姉ちゃんが止められると思わないことね! とか、内心でドヤってみる。

「また、僕だけお留守番か……」

 はぁ~、と落ちる深い溜め息。

 んもうっ、近頃のライカ君ったらデレ捲りなんだから! 仕方ないわねっ☆

「まあ、どの道ライカ兄上の署名は必要ですからね。アストレイヤ様の許可を頂けるのなら、ライカ兄上が同行しても宜しいのではありませんか?」
「えっ、いいのっ!?」
「ええ。遊びに行くのではなく、隣国公爵との貿易締結へ赴くという覚悟があるのであれば」
「っ!?」
「一応、アレだ。向かう先が観光地で、ネロがどんなに気楽で気軽に見えていようと、実質は隣国のお偉いさんとの交渉だからな。ライカ兄上、遊び気分はあんまりよくないと思う」
「……うん。そうだったね」
「とは言え、俺らが王族としての振る舞いに不安があるのも事実だしな」
「そう言えばそうですねぇ」

 礼儀作法などはそれなりに習ってはいるけど、如何せんたった数ヶ月じゃ付け焼刃感は否めない。その点、物心付く前から王族として教育されているライカは、あたしと蒼よりはマナーに長けているだろう。

「というワケで、ライカ兄上が表に出る出ないは兎も角。俺らのマナー指導をするって目的なら、同行の許可下りるんじゃないか?」
「っ!? それって、僕にもシエロとネロに教えられることがあるってことっ!?」

 と、驚きと喜び混じりに興奮した様子のライカ。

 おお、これは……あれかしら? お兄ちゃんのプライド的なものに火が点いちゃった感じ?

「そうですね。ライカ兄上の所作は、シエロ兄上やわたし達よりも洗練されていて綺麗だと思いますよ」
「ええ~っ、ホントっ?」

 照れっ照れの笑顔。

「はい」
「それじゃあ僕、母上を説得して来るから待っててねっ!!」

 嬉しそうな顔でダッシュしたライカに、アストレイヤ様はあっさり許可を出したそうです。

 というワケで、パパ公爵との交渉(本命のフィーラちゃんスカウトの旅)に、ライカも同行することになった。

 まあ、ネリーちゃん女装姿で行くか、ネロたんで行くかはまだ決まってないんだけど……

 う~ん、ホントどうしようかしらねー?

✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


 シエロ(蒼)「俺らのマナー指導をするって目的なら、同行の許可下りるんじゃないか?」(・∀・)


 ライカ「っ!? それって、僕にもシエロとネロに教えられることがあるってことっ!?」Σ(*゚Д゚*)

 ネロ(茜)「そうですね。ライカ兄上の所作は、シエロ兄上やわたし達よりも洗練されていて綺麗だと思いますよ」(*´∇`*)

 ライカ「ええ~っ、ホントっ?」((ノェ`*)っ))タシタシ

 ネロ「はい」(*´艸`*)

 ライカ「それじゃあ僕、母上を説得して来るから待っててねっ!!」ε≡≡(ノ≧▽≦)ノ

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