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ミリィとの手紙のやり取りに加え、一体どこの誰へ手紙を出していた。
しおりを挟む視点変更。
――――――――――――
『拝啓、公爵様へ。
匿名で無礼な手紙を差し出すことをお許しください。
突然ではありますが、お宅の至宝がどのような扱いを受けていらっしゃったかご存知でしょうか?
青玉は、誠実を示す宝石。されど、誓うべき者が不実であれば青玉はたちまちくすんでしまうと言い伝えられています。
青玉の美しさを翳らせる前に、保管場所を変えてみるのもまた一興かと。貿易を検討してみては如何でしょうか? その際には、公爵様のよき取り引き相手となれるかと愚考致します。
よいお返事を期待しております。
プリンスCを嵌めた者より』
な~んてお手紙と、どこぞの両刀王子の買春疑惑に加え、サファイラちゃんの受けていた仕打ちを記した報告書をサファイラちゃんのパパ公爵へ届けてもらいましたっ★
一応、よっぽど鈍い人じゃない限りはこちらの意図は伝わるとは思うけど……どうかしら?
尚、ネロリン信者にお願いしたのでお届け方法などは不明。
すると、数日後に――――お返事が来ちゃった♪
なになに……ほう、いきなり窓に不審な封筒が貼り付けられていて驚いたという書き出し。
わお! 公爵家の窓に不審なお手紙貼り付けられちゃうんだ。ネロリン信者の中には、忍者かなにかの訓練を受けてる人でもいるのかにゃ~? まあ、それはおいといて。
娘が冷遇されていることは感じていたが、殿下の愛人……それも城内の男達からそのような扱いを受けているとは思わなかった、と。
そりゃあ、そうでしょうねぇ? あら、筆圧が強くなっている。きっと、かなりお怒りね!
まさか、王子様……しかも王太子がっ!! 男色を嗜んで、それも手近な城内の若い男に手を付けてて、婚約者にと望んだ筈の娘が嫌がらせ受けてるなんて夢にも思わんでしょ。
しかも、元々公爵家の、更には準王族となったお嬢様によ? 冷静になって考えれば、身分的に割と命懸けの嫌がらせじゃないかしら? 嫉妬に狂ってまともな判断もできなくなったのか……それとも、クラウディオの寵愛(笑)があるから平気だと思っていたのか。まあ、案外な~んも考えないで嫌がらせをしたってお馬鹿さんな輩もいるかもしれないわね。
さっすが、ヤンデレBLゲームの世界! ゲームでは語られていない舞台裏では、ヤンデレ攻略キャラの周囲の人達が滅茶苦茶迷惑被ってるわー。
それで、この手紙の差出人であるプリンスを嵌めたというあなたはどこのどなたでしょうか? なぜ、我が国の王子を嵌めたのでしょう……と。まあ、色々気になるのは当然よねー。
それじゃあ、またお返事返しますか。
『拝啓、公爵様へ。
わたしがそちらのプリンスを嵌めた、というよりは、そちらの国が我が国へ破壊工作を働いていたからです。
わたしは単に、それら破壊工作への対処として、そちらのプリンス一行を我が国から一掃したまでのこと。
公爵様へご連絡したのは、わたしのした対処法で公爵様方へ被害を与えてしまうことに思い至ったが故のこと。
とは言え、どの道あのプリンスではいずれ問題を起こしていたことでしょうね。後々取り返しの付かないことを起こすより、今のうちに引き摺り下ろされる方がマシかと思われます。
なにより、そちらの至宝を差し出す前にどこぞの王子のクズな本性が周知されてよかったのではありませんか? よもや、あれ程に蔑ろにされて、愚弄されてまで至宝を差し出したいと考える公爵様ではないかと愚考致しますが。如何でしょう?
そして、そちらではプリンスを庇ったという方がお亡くなりになられたそうですね。空の棺で葬儀が執り行われたようですが、お悔やみ申し上げます。
そう言えば、わたしは少し前に毛並みと行儀の良い犬を拾いました。
成犬になる前に、元の飼い主に置き去りにされた犬です。拾ったときにはショックを受けて少々弱っていましたが、今は元気にしています。おそらくは、彼の亡なった方のご家族の慰めになることでしょう。
わたしと交易なさるなら、公爵家の至宝の番犬代わりにもなることでしょう。
それでは、本日はこの辺で失礼致します。
成犬になる前の犬を拾った者より』
と、こんな感じで何度かフィーラちゃんのパパ公爵とやり取りをして――――
案の定、バレた!
「……ネロ。お前は、わたしになにか言うことがあるだろう?」
見覚えのある封筒を持った軍服ゴージャス美女に、据わった目で見下ろされてます。
……案外、気付くのが遅かったですね? な~んて言ったら、もっとキレられちゃうかしら。それとも、ネロリン信者がやたら優秀だったり?
「ミリィとの手紙のやり取りに加え、一体どこの誰へ手紙を出していた」
ちなみに、ミレンナは三日と空けずに手紙を送って来る。
主にネロたんの好きな物についての質問が多いかな? 『リーは元気にしてるかしら? お前はどんな色が好きなの?』とか、『リーは元気にしているかしら? こないだ美味しそうなお菓子を見掛けたけど、リーは食べたことあるかしら?』なんて短い手紙が……最初はお高い香水の香る高級紙に書かれていた。
『ミリィちゃん。高級紙に香水を振り掛けるのはやめようね? どこの家で使っている紙や香水かで、個人の特定ができちゃうから』と返事を出したあとには、『仕方ないわね。優雅さの欠片も無い、貧相な手紙で我慢してあげるわ』との返事と共に紙のグレードがダウンして、香水の匂いが付くことはなくなったけど。
三、四通に一回くらいでまとめて返事を返していると『お前、返事書くの遅くないかしら?』と、ちょっぴり不機嫌な返事の催促も届いたりする。
暇なのか……それとも、ミリィちゃんはよっぽどあたしのことが気になるのか、もしかしたら好きなのかしら? なんてねっ☆
「その封筒は……ネロ様、どういうことですか?」
ハッとした顔で封筒を見詰め、険しい表情であたしを見下ろすシュアン。
「答えろ、ネロ」
あらヤだ、低温の声に怖いお顔。今はお説教一歩手前の状況だったわね!
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