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親御さんの教育や、周囲が善人ばかりだったのですね、とか言われた。え~っと? 父さんと母さん、ご近所の人達が誉められてる?
しおりを挟むうん? あれ? 俺、城で保護されるに当たり、使用人として扱われるって聞いたんですけど?
疑問に思ったので質問すると、城で働く人は貴族の二男二女以下の人が多いので、貴公子としての振る舞いはできていて損は無いとのこと。
というか……おじいちゃんおばあちゃん講師の方々が、実は王族の家庭教師をしていた方々だって聞いてないんですけどっ!?
現在は引退して教え子を持っていなかった先生方だけど、孫や親族の方に優秀な礼儀作法の講師を探していると言われて紹介されたのが俺って……
若い講師達が、俺に教え切れなかったことが不甲斐ない、情けないとか言って、もう少し若人達をビシバシ鍛えると言っていました。あと、質の悪い教育を施す人を選別して解雇するそうです。
えっと、俺のせいで仕事解雇されちゃう人がいるのはちょっと申し訳ない気がするけど……でも、教師に向いてない人や教師としての適性が著しく低い人に教わる子供の方が可哀想だと言われればその通りなので仕方ないと思います。
というか、向いてなかったり適性が著しく低いのに、教師になれちゃうことがびっくりなんだけど……なんでも、貴族籍を抜かれても教師や学者と名乗れば箔が付いたり、ある程度食いっぱぐれることが少ない為、家庭教師や学者になる貴族子女がいるそうです。
よっぽどアレな貴族子女以外は貴族籍を抜かれたりしても、平民より高い教養を持っている方が多く、また未亡人などの方への救済措置だったりもする為、ピンキリだとしても礼儀作法を教えられる家庭教師は需要が高いのだとか。
とは言え、その中でもやはり適性の無い人はいるワケで――――
教え子に色目を使ったり、酷い体罰をしたり、そもそも教えるのが壊滅的に下手だったり、言葉や態度が冷た過ぎて教え子の心を折ったりするなど……そういう、駄目講師の一斉解雇だそうです。
なんで俺が試金石代わりにされてるんですかね? と思っていたら・・・自分に向けられる邪な視線や思惑を感じ取れるようになれ、とのこと。
ただでさえ君は、男女問わず惑わすような蠱惑的な美形なのですから、と言われて……ええっ!? 俺ってそんなに美形だったのっ!? と、驚いた。
だって、大人が子供のことを天使だって言うのはよくあることでしょう? 『うちの子は天使だ』、と真顔で言うとか。近所の子を皆さんで可愛がるとか。そういうのは当然のことじゃないんですか?
え? 違う? 俺の容姿はそんなレベルじゃないって、そんな大袈裟な……
大袈裟なんかじゃない? 傾国レベル?
・・・それ、本気で言ってます? 冗談じゃなくて?
と、驚いて胡散臭いと疑ったこと自体に心底呆れられた。
いや、だって、一応? 整った顔をしている方だという自覚はちょっぴりあるけど。でも、男女問わずとか、そこまでの美形だとは思ってなかった。ほら? 俺は『自分の顔素敵♡』とか言って鏡見てうっとりするようなナルシストじゃないし。
会う人会う人、いやに顔が赤いなぁ。今日は暑いのかな? それとも、風邪でもひいたのかな? とか、なんだか俺の顔を見てぼーっとする人がいるなぁ。体調悪いなら、おうち帰って休んだ方がいいですよ? という感じの認識だったよ?
なんだろ? 親御さんの教育や、周囲が善人ばかりだったのですね、とか言われた。え~っと? 父さんと母さん、ご近所の人達が誉められてる?
そんなこんなで、俺はまず、自分の顔がそこらにはいない程の美形だと自覚するようにと言い付けられた。
え~っと? それを自覚すること自体、なんだか抵抗があるんですが? 俺、そんな自分大好き自己愛の塊じゃないし。
とりあえず、自覚無いなら変装しなさいと言われて野暮ったいらしい伊達眼鏡を掛けるようにと命令されました。
黒縁眼鏡を掛けただけで、一体なにが変わるのか・・・
そう、思っていた時期がありました。舐めていましたことを謝ります。
なんか、伊達眼鏡を掛けていると、俺の話をちゃんと聞いてくれる人が増えた。前は、やたらぼーっとしてあまり俺の話を聞いてくれない人が多かったのに! あと、俺の顔見て顔を真っ赤にして逃げる人も減った!
あれ、俺がなにかしちゃったのかな? って、地味に傷付くんだよね。
なんか、伊達眼鏡の効果凄いっ!!
と、俺の教育や使用人としての仕事をある程度覚えられた頃――――
俺の主というか、俺を保護してくれるという王子様が決まった。
第三王子殿下のネロ様という方が、俺を保護してくれることになったそうだ。
俺よりも年下で……え? 七歳? 俺、七歳の子に保護されるの? って、かなりびっくりした。
いや、うちの国の王子様はみんな俺より年下なのは知ってたけど……でも、実際に七歳の子に保護されることになったって聞いて、驚いた。
そして、俺を迎えてくれたのは艶やかな黒髪に藍色の瞳をきらきらさせた……まさに天使って言うのはこういう子供じゃないのっ!? というくらいに、すっごく綺麗な子供だった。
「は、初めまして、アーリーと申します。本日より、こちらの離宮でお世話になります!」
「ようこそ、アーリーさん♪」
緊張しながらの自己紹介に応えたのは、どこか聞き覚えのある声。そして、見覚えのあるような藍色の瞳だと感じた。父さんと母さんが、俺を見詰めるような優しい視線が俺に向けられている。
「あなたが……」
黒い天使みたいな王子様の後ろで、苦虫を噛み潰したような顔で俺を見詰めているのは、俺より少し年上の男の人。
あれ? 王子様には歓迎されているみたいだけど、他の人にはあんまり歓迎されてない?
「ふふっ、こちらはシュアン。ちょっと不機嫌そうな顔をしていますが、胃が弱いので仕方ありません。皆さん、後輩にイジワルしちゃ駄目ですよ?」
ああ、胃が弱いのか。胃痛を起こしているなら、顰めっ面をしていても仕方ない。ちょっと神経質そうな人だもんなぁ。後で胃薬を差し入れよう。
「そのような子供っぽいことなど致しません。それと、胃は治りました。わたしはシュアン・ウェイバーです。一応、わたしもネロ様にお仕えする者としては新参者となりますが、わからないことがあればなんでもお聞きください」
ムッとしたように王子様へ答え、俺に告げるシュアンさん。実は面倒見がいい人なのかな?
「えっと、その、よろしくお願いします」
と、この日から俺は、黒い天使みたいな小さな王子様に保護されることになった。
小さな王子様が天使なのは見た目だけで――――その中身は、優しくもあるけど実はかなりシビアな面も持っていて。海千山千なやり手商人もびっくり仰天するような、とんでもなく稼ぐ才能の塊みたいな子だと判明するのは、この後すぐのこと。
まさか、ネロ様と兄君のシエロ様、ライカ様共々、国家予算を軽く超える程に稼ぎ出して、王妃様とシュアンさん達と一緒に、度肝を抜かれることになるとは思わなかったなぁ。
❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅
執事「アーリー君。ただでさえ君は、男女問わず惑わすような蠱惑的な美形なのですから。その自覚をお持ちください」( ・`д・´)
アーリー「ええっ!? 俺ってそんなに美形だったのっ!?」Σ(O_O;)
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