腐ったお姉ちゃん、【ヤンデレBLゲームの世界】で本気を出すことにした!

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
118 / 158

なぜ? どうして? というのが多い婚約だったように思います。

しおりを挟む



 視点変更。

――――――――――――

 わたくしがクラウディオ殿下の婚約者に内定されたのは、十二歳のときでした。

 なぜ? どうして? というのが多い婚約だったように思います。

 わたくしは公爵家の娘ですし、政略として四つの年の差などは大した問題では無いのですが……

 けれど、わたくしよりもクラウディオ殿下と年の近い他の公爵家や侯爵家の、優秀と名高いご令嬢はいらっしゃいますのに。なぜ、四つも年下で、それも大して優秀とは言われていない……どちらかというとぼんやりしていると言われるわたくしが? と、不思議に思っておりました。

 不思議と言えば……わたくしがクラウディオ殿下の婚約者に決まったと告げたときのお父様とお母様も、なぜか全く嬉しそうではなかったことも不思議です。

 理由を聞いても、我が家は特段王家との繋がりを求めていないから、とのお答えでした。お父様とお母様の……どこか苦々しさを堪えているようなお顔は、とてもそれだけだとは思えないのですが。

 お父様もお母様も、クラウディオ殿下との婚約に乗り気でないのは明白。けれど、決まってしまったことは仕方ないと言ったところでしょうか。わたくしには話せないような事情がお有りかと思い、これ以上質問するのはやめることにしました。

 まずは確りと王子妃教育に励みなさいと言われました。

 王子妃教育で適正が見られなければクラウディオ殿下との婚約は公表されることなく、そのまま解消となる手筈なのだからと説明されました。

 いきなり王太子妃教育が始まらない理由は、適正が無くても王太子妃教育をある程度受けてしまえば、我が国の王族に嫁ぐより他なくなってしまうからだそうです。王子妃教育までであれば、他国の王侯貴族へ嫁ぐ為の準備にしてしまうことができるから、なのだとか。

 そんなこんなで、クラウディオ殿下の暫定婚約者として王子妃教育が始まりました。

 教育係からのわたくしの評価は、可もなく不可もなくと言ったところでしょうか?

 女性の教育係からはお墨付きを頂いても、なぜか若い男性の教育係からは辛い点数を貰うことが多く、このままではクラウディオ殿下の婚約者失格なのだとよく言われてしまいます。

 そんなことがよくあって落ち込むこともありましたが、わたくしはそれなりにやれていると評価されたのでしょう。

 十三歳になり、わたくしがクラウディオ殿下の婚約者として正式に決定。公表されました。

 婚約が決定して初めて、わたくしはクラウディオ殿下とお会いしました。

 灰色の髪に青灰色の瞳。自信に満ち溢れた端正なお顔。わたくしよりも、四つ年上の十七歳の……第一王子殿下。近々立太子なされる予定なのだそうですので、余程のことが無い限りはクラウディオ殿下が国王になると見做されております。

「お前がサファイラか。俺がお前を婚約者に選んだ」
「そう、なのですか……」
「ふっ、あまり嬉しそうには見えんな?」
「いえ、少々緊張しておりまして。大変光栄なことだと」
「ああ、そういうのはいい」

 わたくしの言葉を遮り、クラウディオ殿下は言い募りました。

「お前は、少々おっとりというか……ぼんやりしているという評判だそうだ」
「そうですね。そのようなことはよく言われます」

 ぼんやりしていると言われるだけで、実際にぼんやりしているワケではないのですが。少々考え事などをしているときに話し掛けられると、上の空でお返事を返してしまうことがあるようで、ぼんやりやおっとりなどと言われてしまうのでしょう。

「だが、頭は悪くない」
「ありがとうございます」
「俺が婚約者に……行く行くは王妃になる女に求める最大の条件は、醜い嫉妬をしないことだ」

 自信満々なお顔で、少々……いえ、なかなかなことを仰いますね、クラウディオ様は。

「俺は将来国王になる。側妃を複数迎えることもあるだろう。そのときに、醜い嫉妬をせず、後宮の管理を任せられる女でないと困るのだ。国内の女なら、公爵家の娘であるお前が抑えられるだろう。まあ、他国の姫が側妃になると少々難しいかもしれんがな」

 結婚どころか、婚約して初めての顔合わせで、それも自分より四つも年下のわたくしへ側妃を複数娶る……もしくは、後宮に女性を囲うという傲慢な宣言。それも、後宮の管理をわたくしへ丸投げ予定、ですか。

 好き嫌いという感情が芽生える以前に、この仕打ち。

 これから先が……非常に思いやられます。お父様とお母様が、クラウディオ第一王子殿下との婚約に乗り気ではなかった理由がよくわかりました。

 しかも、クラウディオ殿下のお付きの方々は……この宣言に、ニヤニヤしている方、当然だと頷いている方、無表情の方ばかりですね。ああ、いえ。数名、非常に不快そうな表情をしておりますね。

 わたくしの味方になってくれそうな方、そして敵に回りそうな方のお顔は確り覚えておきましょう。

 そういう風にして、わたくしとクラウディオ殿下との顔合わせは終了しました。

 なんとも言えない、苦々しい思いで――――

 それでも、わたくしはクラウディオ殿下の婚約者となってしまったのです。

✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰


 ある意味、クズでゲスいクラウディオの被害者、サファイラちゃん視点。(*ノω・*)テヘ

しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

『奇跡の王女』と呼ばないで

ルーシャオ
恋愛
サンレイ伯爵嫡子セレネは、婚約の話が持ち上がっている相手のジャンが他の伯爵令嬢と一緒にいるところを目撃して鬱々していた。そこで、気持ちを晴らすべく古馴染みのいる大兵営へと向かう。実家のような安心感、知人たちとおしゃべりしてリフレッシュできる……はずだったのだが、どうにもジャンは婚約の話を断るつもりだと耳にしてしまう。すると、古馴染みたちは自分たちにとっては『奇跡の王女』であるセレネのためにと怒り狂いはじめた。 元王女セレネが伯爵家に養子に出されたのは訳があって——。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

処理中です...