腐ったお姉ちゃん、【ヤンデレBLゲームの世界】で本気を出すことにした!

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
116 / 158

神殿に顔を出してしまったアーリーたんが、シエロたんの身代わり……人身御供にされてしまったのではないか、という疑念だ。

しおりを挟む



 その間に――――アーリーたんの受け入れ体制を整えて、シュアンのお見舞いでも行きますか。

 アーリーたんは、そりゃあもう天の御使いかと紛う程のとんでもない美形だ。その色香に惑ったりしないで、間違ってもアーリーたんを邪な目的で襲ったりしないような、男女共に確りした人じゃないと近くに置けないと思うのよねー。

 側妃宮うちに入ったら、基本はあたしからあんまり離さないようにしなきゃいけないかしら? 多分、二十四時間体制での護衛も必須ね! 一応、アーリーたんの城内滞在の名目は侍従見習いだし、あたしの部屋には更に使用人が控える為の部屋が付いてるから、そこに入ってもらいましょう。

 多分、あたしの近くが一番安全地帯な筈。

 ああ……そういう意味ではやっぱり蒼のとこじゃなくて、あたしの言うことを無条件に近く聞いてくれる側妃宮うちで引き取って正解なのかしら?

 あっちはあっちで……レーゲンの息が掛かってる人達が多いだろうし。保護する目的の場所で、危険な目に遭わせちゃうなんてこと、言語道断だものね!

 というか、そもそも――――本来のストーリーに対し、あたしは一つの疑念を抱いている。隠しキャラとしてアーリーたんが登場しても、登場しなくても・・・

 蒼を思い出す以前のシエロたんは、偶に神殿にお祈りに行っていた。蒼であることを思い出してからは、『こんな腐った世界の神なんぞに祈ってられっかっ!?』と、神殿に行くどころか貴腐神かみ様への信仰を捨てたらしい。

 まあ、信仰は個人の自由だし? 無神論者でもアニミズムでも、鰯の頭を拝むなり、好きにしたらいいと思う。

 けど、問題はそこじゃない。

 偶にとは言え、シエロたんは、クソ外道神官のいた神殿に通っていたのだ。儚げで見目麗しい、天使のような美貌を持つあどけないシエロたんが、クソ外道神官に目を付けられていないワケがないっ!?

 ただ、シエロたんには護衛がいた筈、王家の近衛が付いて守られていた筈。

 高位の神官とは言え、さすがに王族に、それも私生児なのに第二王子という身分を与えられている国王のお気に入りのシエロたんには手を出せないだろう。

 それで――――もしかしたら、偶々王都に立ち寄って、神殿に顔を出してしまったアーリーたんが、シエロたんの身代わり……人身御供にされてしまったのではないか、という疑念だ。

 その疑念を抱いてから……いえ、抱く前から。この世界でネロたんとして前世の茜あたしが目覚めたときから、アーリーたんが変態クソ外道共に穢されちゃうだなんて言語道断、絶対赦してなるものかっ!! フィクションでなら許せても、やっぱりリアルでなんの罪も無いロリっ子やショタっ子、一般人達が酷い目に遭うのは絶対駄目っ!! というスタンスは変わってないけどね!

 蒼にアーリーたんのことを気にし過ぎだとか、過保護じゃね? とか言われようが、これはもうあれでしょ! 是非ともアーリーたんを囲い込……じゃなくて、保護して、その天の御使いの如く神々しくて麗しいご尊顔を毎日舐め回すようにガン見して、『ありがたやありがたや~』って拝まなきゃっ♡

 というワケで、アーリーたんに簡単に欲情したり劣情を抱いたりしない人の選抜を急がなきゃ! もう、いっそのこと、『アセクシャル』の人とかいないかしら? 『性欲を持ってない人』なら身近に置いても、アーリーたんの貞操の危機は守られる筈!

 とは言え、この世界にアセクシャルなんて概念が浸透してるワケもなし。禁欲的な人と、生れ付き性欲を持たない人とでは、全く違う。

 片や、『性欲を我慢している人』。片や、『生まれたときから他人へ欲情しない人』。持つ者と持たざる者……1と0では、天と地程も違う。どちらが安全かなんて、比べるべくもないというもの。

 『性欲が無い人』は、身体的接触を好まない人が多いし。人によって、他人との接触はハグまでなら許容できるけど、キスは駄目という人だっている。または身体的接触を一切好まず、他人とは握手することすら嫌だという人もいるから、そういう人には相手に苦痛を与えない距離感が大事だ。

 ちなみに、そういう人は恋愛感情を持たないだけで、愛情が理解できないワケじゃない。家族愛や友情はちゃんと理解できるから、愛や慈しみという感情自体はわかる。むしろ、そういう人の方が無償の愛という概念を感覚的に体得していそうだ。

 そして、『恋愛感情は理解できるし、本人も持っているけど、性欲が無い』というパターンの人もいる。こっちはプラトニックな愛情で、身体的な接触を好まない場合が多い。自分が相手を愛するだけで満足できちゃう人ね。

 まあ、全く逆に、『恋愛感情を理解できないで性欲はある』というパターンの『アロマンティック』と称される人もいるけど。そういう人は、男女共にワンナイトラブを繰り返し、相手を取っ変え引っ変えしてるイメージよねー。恋愛感情が理解できないから、他人に恋愛的に嫉妬される意味が理解わからない。

 いつか、誰かに刺されちゃいそうな爛れた危うい生活を送っている人は、本人は無自覚でこの、性欲はあるのに恋愛感情が無いというアロマンティックの人がいたりする。個人的に、こういう人と結婚しちゃうと割と地獄だと思うわ。

 あたしの偏見だけど、相手の恋愛的な好きという気持ちは全くわからないのに、身体の関係だけは要求するんだもの。ぶっちゃけ、求められるのは性欲を満たす為にだけと言える。それを拒否すると、すぐにパートナー以外と関係を持つ人も少なくない。そんな人と恋人、夫婦として付き合えるのは同類の人か、割り切った関係だと達観できる人くらいなもんでしょ。

 BL作品や、数多ある恋愛を取り扱った作品で、最低なクズにこういう傾向があるのよ。

 それはおいといて。

 あたしの予測では……修道士や修道女など、神へ遣えることを選んだ人の中には、性欲を理解できなくて、もしくは性欲が皆無でその道を選んだ人が一定数いる気がするのよねー?

 ほら? 不犯ふぼんの誓いを立てて一生涯独身という境遇は、恋愛感情を理解できない人や性欲が無い人に取ってはある意味すっごく楽で、ある種の救いでもあると思うの。

 結婚するのが当然で、結婚しない人にはなんらかの瑕疵があるのでは? と邪推されるような価値観の世の中じゃ、恋愛感情を理解できず、性欲が無くて異性や同性にも全く興味が無いという人は、至極生き難いと思うのよねー。

 だから、そういう煩わしいことが無い神門へ入ったという人だっている筈だという予測なワケなのです!

 やっぱり、価値観が多種多様な世界の方がマイノリティの人達が生き易いわよね!

 嗚呼……多種多様なBL作品が懐かしいわ♡

 国や時代が違えば、同性愛者なんて精神病扱いならまだマシな方。最悪、悪魔や魔女扱いされて処刑されちゃってたことだってあるもの。

 マイノリティの排斥は、いつ、どこだって、どの時代でも、誰にだって起こり得ること。

 あたし自身の、BLやヤンデレが好きという趣味嗜好が少数派なだけに、そう言ったマイノリティの人達を切り捨てる世の中には、ちょっと思うところがあるのよね。

 別に、そういうマイノリティな趣味嗜好を普通の人に好きになれとは言わないけど。気持ち悪いとか、偏見で排斥や排除しないでほしいと思う。

 できるなら、多種多様な価値観を……理解しろとまでは言わないから、ちょっとずつ黙認や容認して、存在を許容してくれる世の中になってほしいものだわ。

 そうしたら、いがみ合いや諍いが少しは減ると思うのよね。

 だって、大抵の争い事は無理解や不理解から来る恐れ、拒絶、断絶、決裂から生み出されると思うから。

 相手を知って、怖くないということを理解すれば仲良くできると思うのよねー。

 ま、さすがにそういうのは全~部理想論だってことは知ってるけどねっ☆

 でもでも、理想を夢見るのは個人の自由だもの。

 人間、誰しも絶対に理解できない相手というのは存在する。そういう相手がいないという人は、まだ出逢っていないだけ。相性が最低最悪で、なにがなんでも対立しかできない相手。けれど、そういう相手にだって『死ね』や『消えろ』とかじゃなくて、存在自体の黙認はできちゃうと思うの。

 まあ、そういう壮大な社会目的は兎も角。アーリーたんを任せられるような、性欲の無いアセクシャル且つ、屈強で護衛に長けている人……どこかに落ちてたりしないかしらねー?

 そんな都合の良過ぎる優良物件いたら、即行で雇うのになぁ……

 ひとまずは、侍女長とアストレイヤ様の手先の執事さんに相談かしら。

 アーリーたんの貞操と身の安全を図る為に!


――――――――――――

 茜「嗚呼……多種多様なBL作品が懐かしいわ♡」(*´﹃`*)ジュルリ…

しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜

真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。 しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。 これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。 数年後に彼女が語る真実とは……? 前中後編の三部構成です。 ❇︎ざまぁはありません。 ❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。

罠に嵌められたのは一体誰?

チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。   誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。 そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。 しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

ウワサの重来者 どうか、心振るえる一生を。(中辛)

おいなり新九郎
ファンタジー
 最新情報:幼いサヤを背負い少女は炎と化け物の中を潜り抜ける。一途にこの娘を地獄から逃がすために。 ーあらすじー  侍の家に生まれたユウジは16歳の少年。  家族がいろいろあって、家を継ぐことに。  ある日、特別な力を与えてくれるという「宝」を引ける催しに参加する。  そこで、彼が引いてしまったハズレとしか思えない「宝」とは?  宝のせいなのか、問答無用にふりかかる災難。  個性豊かな、お宝美少女達に振り回され、ユウジは冒険を続ける。  そこには思わぬこの世界の因縁と謎があった。    作者より  タイトルにある「重来者」はリターナーと読みます。  途中、主人公交代を検討しております。  お一人でも多くの方が楽しんでくだされば幸いです。  理不尽な世の中で、どうか心振るえるひと時を・・・。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

処理中です...