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……シュアンには、聞かせたくない話ってか?
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――――――――――――
シュアンがいきなり倒れちゃって、ちょっとびっくりしたわねっ!?
あたしと蒼の悲鳴に、近くにいた護衛の人がとっさにシュアンを支えてくれて助かったわ。
そして……むふふっ♡
気絶した綺麗め青年が、おじさまにお姫様抱っこで運ばれるという腐女子的に垂涎でよだれじゅるりな……いいものを拝見させて頂きました♪ありがとうございますっ!!
慌ててお医者さんを呼んで診てもらうと……結果は過労。
あちこち連れ回したし、もしかしたら昨日のミレンナとの話し合いはやっぱり精神的に結構来てたのかしら? 悪いことしちゃったわねー。
ということで、治るまでシュアンを休ませてあげることにしましょう。
起きようとするシュアンを寝かせてよしよししながら考える。
まずは、アレだ。ネロリン信者に、あんまりシュアンをイジメないようにと通達ね! シュアンより年下の子は今側妃宮にいなかったと思うから、『弟だと思って可愛がってあげてね♡』という感じのことを言っておこう。
さてさて、他にシュアンが回復するまでにやっておいた方がいいことは……
「な、さっきのアストレイヤ様の話、なんだったん?」
シュアンの寝息が聞こえた頃、蒼が声を潜めて問い掛けた。
ミレンナの件が主だったんだけど……昨日のことは蒼やライカに言うつもりはない。
ミレンナの離縁申請は、案外あっさり通ったらしい。レーゲン自体が自分に酷く執着していたミレンナに辟易していたというのもあるっぽいけど。
でも、まぁ……アレよねぇ? 少しでも国政を考えているのであれば、自分の基盤を一番支えてくれているであろうミレンナの実家の侯爵家が惜しいと、もっとごねるかと思っていたんだけどねぇ?
余程国政のことを考えていないのか、それとも……アストレイヤ様の公爵家が自分を支えてくれるから安泰だとタカ括ってんのか。どちらにしろ、大いに愚かであることは間違いない。
アストレイヤ様のご実家だって、別にレーゲンを支えたくて支えているワケでもないでしょうに? 嫁がされた娘の為。そして、生まれた孫の為であって。決してレーゲンの為ではないでしょうに?
まあ、一応ミレンナとレーゲンの離縁は成立される。とは言え、レーゲンの政権を一番支えているのがミレンナの実家である以上、傘下貴族達に一気に抜けられても困る。
というワケで、重職や要職に就いている人達は引き継ぎを終えるまでは居残ってもらうよう交渉などをしないといけないそうだ。
うん。引き継ぎは超大事だものねっ!! 引き継ぎ無しだと後釜に座る人達が右往左往てんやわんやで滅茶苦茶大変だものね! 下手すると、就任早々になんらかの責任を取らされて更に別の人が生贄にされちゃうとか、恐ろしく悲惨な阿鼻叫喚な惨状が繰り広げられることになるもの。
国政安定を図るアストレイヤ様的には、そんな混乱は避けたいところだろう。
そういう交渉や引継ぎ的なことはアストレイヤ様の方でなんとかするらしいので、大人しくしているようにと釘を刺された。「呉々も、レーゲンやミレンナの実家に突撃しないように」と。
全く、人のことをなんだと思っているのかしら? さすがに、ミレンナの実家には行かないわよ。レーゲンが自分ン家のミレンナ思っクソ馬鹿にして、蔑ろにして、それでいて侯爵家の甘い汁は吸い上げてたんだから。そんな、クソ野郎の子供なんか、幾ら孫とは言え顔も見たくないんじゃないかしら?
まあ、クソ野郎のところに行けないのはちょっぴり残念だけどね!
そして、ミレンナの他にも話がもう一つ。
「ん~? 保護した子をどうするか、とか?」
「保護って……ああ、アーリーのことか?」
「うふふっ……」
「うっわ、めっちゃ喜んでる……」
「ええ。これで、どこぞの王子の魔の手から守り切ることができますからね!」
それにそれに、アーリーたんのあの天上の美も斯くや! というご尊顔が、これから近くで拝観できるのよっ!! これが歓喜せずにいられようかっ!!
「ぁ~……うん。まあ、そういうことにしといてやる」
蒼のしら~っとした視線。
「それで、ですね」
「あん? まだなんかあんのかよ?」
「アーリーさんをシエロ兄上のところで引き取るかわたしのところで引き取るか、どうするかは二人で決めなさい、とのことです」
「は? お前ンとこじゃねぇの?」
「ん~……わたしとしては、どちらでもいいかな? と」
「え? それ、マジで言ってんの?」
「はい」
う~ん……なんだか嫌そうな顔ねー? あ~んな、めっちゃ麗し過ぎる美形を毎日拝めるのに。なにが不満って言うのかしら? サイコパスになる主な要因共は綺麗サッパリ排除して、おまけにそういう輩に攫われたりしないように保護までしたから、アーリーたんは元の優しい子のままだと思うんだけどにゃー?
「お前ンとこで面倒見りゃいいだろ」
「え? いいんですかっ♪」
「好きにしろ。つか、元々保護するって決めて強行したのはお前だろうが。つか、俺はお前が面倒見るって言い張ると思ってたんだがな?」
訝しげな蒼の表情。
「シエロ兄上とアーリーさんが二人揃っている情景なんて、天上の楽園も斯くやという大変素晴らしい極上絶景は、至福で眼福でハッピーで非常に有難いと思いまして♡」
そんな二人が微笑み合っている姿を目撃しちゃった瞬間にはきっと、目が潰れて鼻血が滝のように噴出しちゃうわね!
「なんだその意味不明な動機はっ!?」
「え? 麗しい光景を拝観したいだけですが?」
「ンなくだらねぇことよか、優先すること沢山あるだろうがっ!?」
「もう、シエロ兄上ったら。しーっ、病人の近くで大声なんて上げちゃダメですよ?」
人差し指を立てると、ぷいっとそっぽを向く蒼。
「っ!? それは、悪かったけど……でも、お前がアホ言うからだろっ」
「ふふっ、それじゃあ真面目なお話をしましょうか」
「真面目な話?」
「ええ。シュアンも丁度、お休み中のようですし」
蒼の声に目を覚ますかと思ったけど、寝息は変わらない。
「……シュアンには、聞かせたくない話ってか?」
ちょいちょいと手招きして、小声で話す。
『そう、ちょっとね? 話すなら、裏を取ってからがいいかなって思って』
『なんの裏だよ?』
『クラウディオがあんなことになっちゃって。その婚約者って、どうしてると思う?』
『っ!? ……ぁ~、なんか今頃、めっちゃ冷遇……とか?』
ハッとした顔で、気まずそうな言葉が返る。
『そうなのよ。きっと将来の王妃として必死に勉強して来たであろう彼女の一生が、クラウディオのやらかしのせいで台無しになっちゃったと思うのよねー』
『……まあ、うん。俺らもめっちゃ噛んでんだけどな』
『そうなの。というワケで、クラウディオの婚約者さんの現状をちょっと調べてみようと思い付いたワケなのよ』
『現状、なぁ……碌なことになってねぇだろ絶対』
『そうよねぇ。未来の王妃として遇されて来たお嬢様が、王子妃に格下げ。もしくは、婚約解消の可能性あり。最悪だと、口封じに殺されちゃったりするかもなのよ』
『マジかっ!?』
『王妃教育がどこまで進んでいたかによるけどね? 国の暗部とやらを知っちゃったら、簡単には外へ出せないし。かと言って、クラウディオの他の兄弟に婚約者が既にいたら、そのままスライドする……ってワケにも行かないでしょ』
『ぅっわ、どう考えても悲惨な未来しかないじゃん……』
『そうなのよねー。というワケで、クラウディオの婚約者さんの現状を調べてみて、手を出せそうなら手を出しちゃおうかと思って』
『手ぇ出すってなに? 具体的には?』
『そうねぇ……婚約者ちゃんが、まだ壊れてなくてまともそうなら助けてあげられないかな~? って』
『? 壊れてなくて、ってどういう意味だ?』
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