腐ったお姉ちゃん、【ヤンデレBLゲームの世界】で本気を出すことにした!

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
109 / 158

・・・ネロ様。あなたは昨日、ミレンナ様に散々『愚か』だと仰いましたが。あなたも、相当に愚か者です。

しおりを挟む



 視点変更。

――――――――――――

 なんか濃かったわー……な一日を過ごした翌朝。

 よく寝てスッキリお目覚めしたら、部屋の前にまだ見張りが立っていた。

 もう、やぁね? 今はまだそのとき・・・・じゃないから、側妃宮おうち抜け出してどこぞの汚物を蹴りになんか行かないってばっ★とりあえず、ご苦労さんなことで。確り休んでくださいね? と労ってあげた。

 ああ、そうだわ。お針子さん達にもボーナスを用意しなきゃねー?

 さてさて、今日はどうしようかしら?

 シュアン情報の、裏切り領主達の監査準備か……ああ、いえ。その前に、生ける屍ゾンビ軍団受け入れ体制や療養施設・・・・を整える方が先ね! 受け皿が無いのに、人数増やしても困るだけだもの。まあ、準備だけは並行して進めても問題無いかしら? 入れる建物ハコは先に造っとかなきゃだし。

 あとは……そうね。ここも人が増えた(アストレイヤ様の手先とかね!)ことだし、あたしの優先順位を明確に告げておいた方がいいかしらねー。

 で、それが受け入れられない人とは、少々距離を置くことにしよう。

 というワケで朝食の後、側妃宮の使用人達を集めてもらった。

 ネロ様からのお言葉、としてなんだかやたら有難がっている人。ネロたん第三王子ライカ第一王子のスペアとして見ている人。ネロたんの監視員としてここにいる人などなど。

「それで、ネロ様。お話したいこととはなんでしょうか?」

 シュアンが口を開く。

「側妃宮も人が増えて来ましたからね。この辺りで、わたしの優先順位のことを話しておこうと思いまして」

 にこりと応えると、

「ネロ様の優先順位、ですか?」

 怪訝そうな顔をされた。

「ええ。既にご存知の方も、またはアストレイヤ様から聞かされている方もいると思いますが……この場で、明確に宣言しておきます。わたしの中の最優先事項は、シエロ兄上の身の安全です」
「え? ネロ様? なにを……?」

 シュアン同様、あたしがなにを言ったのか理解できていない人も複数。

「わたしは、その為に動いています。それ以外のことは大体その為の副産物か派生とでも思っていてください。わたしの一番大事なものは、シエロ兄上です。わたしは、愛するシエロ兄上を守る為ならば、どのような手段も厭わず使うことでしょう。シエロ兄上を害す者は、仮令たとえそれが誰であろうと赦しません。アストレイヤ様とライカ兄上にくみするのも、レーゲンを引き摺り下ろすのも、全てはシエロ兄上の身を守る為の手段でしかありません。それを念頭に置いてください。ちなみに、反論は一切受け付けませんので」
「ネロ様の御心のままに」

 と、真っ先に跪いたのはミリーシャ。それに続いて、侍女長やネロリン信者が続々と跪く。立っているのは、アストレイヤ様の手先と納得が行っていない人や困惑している人など。

「ああ、アストレイヤ様は、わたしがシエロ兄上を守る為にアストレイヤ様とライカ兄上を支持していることは、既にご存知です。というか、わたしがシエロ兄上を最優先させることについての了承は、アストレイヤ様から頂いておりますので」
「なぜ、ネロ様はそこまでシエロ王子のことを……?」
「シュアンさんも、昨日見たでしょう? アレ・・がわたし達の日常でした。母はあの、ヒステリックに喚き散らす状態のミレンナ。父とは顔を合わせたことすらなく、いないものとして存在を無視されています。そんな中で、唯一わたし達のことを家族だと言ってくれたのがシエロ兄上だけだったからです。わたしのことを弟だと、ネリーのことを妹だと言い切って仲良くしてくれた家族が、シエロ兄上だけだったので。故に、わたしはわたしの全力をもってしてシエロ兄上を守ろうと決意したまでのこと。家族を守るのは、当然のことでしょう? それが仮令、情の無い実の母親が相手だとしても、ね?」
「昨日の、ミレンナ様とご友人になられるというのは、シエロ王子を守る為の手段だと?」

 顔を歪めるシュアン。なんだか、ショックを受けたような顔ねー?

「ふふっ、手段の一環にはなりますね。言ったでしょう? ミレンナとお友達になったのは、計算外のことです。今のミレンナとなら、仲良くなれそうな気がしますから」
「そう、ですか……」
「ええ。失望させてしまいましたか?」
「いえ、そんなことは……」
「別に構いませんよ? でも、そうですね。今のわたしの宣言に納得行かない人は、納得して頂かなくても結構。但し、わたしのことを主と仰ぐのであれば、わたしの大切にしているものも含めて大切に扱いなさい。勝手な判断で、わたしが大切にしているものを傷付けることは絶対に赦さない。そんな真似をする人など不要です。余計なことをする前に、今直ぐこの側妃宮から出て行きなさい。紹介状は用意して差し上げます」

 ネロリン信者は跪いたまま身動みじろぎ一つもしないが、アストレイヤ様の手先や入って日の浅い使用人達がざわりと狼狽える。昨日の護衛騎士をしてくれた侍女さんなんか、顔面蒼白だ。執事さんも硬い表情をしている。

「わたしの行動は、全てシエロ兄上の幸せの為。それを覚えていてください」
「シエロ王子は、ご存知で?」
「ふふっ、シエロ兄上とは、互いに生き残る為に協定を結んでいますからね」
「つまり、ネロ様がここまで深くシエロ王子のことを想っていらっしゃることはご存知ない、と? 失礼ですが、ネロ様はもしシエロ王子に裏切られたらどうするのです?」
「どうもしませんよ? シエロ兄上がわたしを裏切ることは、限りなく低いと思います。まあ、可能性はゼロではありませんが。けれど、それのなにが問題ですか? わたしが勝手にシエロ兄上を愛して、勝手にシエロ兄上を守ろうとしているだけです。シエロ兄上には、わたしを信じる義務はありません」

 なにせ、シエロたんは推しで、蒼はあたしの弟だもの! ある意味一蓮托生! この世界ではきっと、一番のあたしの理解者よ? 蒼があたしを裏切る可能性は、相当低い。もし蒼があたしを裏切ることがあるなら、それには絶対になにか事情がある。むしろ、死を覚悟している可能性すらある……かもしれない。

「・・・ネロ様。あなたは昨日、ミレンナ様に散々『愚か』だと仰いましたが。あなたも、相当に愚か者です」
「だから言ったんですよ? 早まらないように保留で、と」
「本当に、あなたは子供らしくない。愚かではありますが……ミレンナ様との違いは、そのお覚悟の差でしょうか。まあ、愚かしさを子供らしいと言うのであれば、その一途さも、家族を求める姿も、子供らしいと言えるかもしれませんね?」

 と、呆れたような、どこか寂しげな顔でシュアンがあたしの側に寄って来た。

「言ったでしょう? 返品も保留も受け付けません」

 目の前で跪かれ、

「わたしは、あなたをお守りします、と。ネロ様、あなたが子供らしくいられる時間を、わたしが守ります」

 強い瞳があたしを見据える。

「わたしを拾った責任を果たしてください」
「わたしが失脚すれば、道連れですよ?」
「それを回避させるのがわたしの仕事では?」
「……仕方ありませんね。そこまで覚悟があるなら、わたしの傍へ控えることを許します」
「御意に」
「では、話は以上です。解散し、銘々各自の仕事に戻ってください。ああ、この場で側妃宮を去ると言い出せなかった方は後程、執事長か侍女長へ相談してください。約束通り、紹介状は用意します。退職金も出しますので、遠慮は無用です。手切れ金だと思って受け取ってくださいね」

 と、解散させた。

「ネロ様……」

 じっとりとした視線を向けるシュアン。

「はい、なんでしょうか?」
「あのように、わざわざ敵を作るような仰り方をせずとも宜しかったのではありませんか?」
「獅子身中の虫よりマシです。どうにも、シュアンさんには甘いところがありますね」
「わたしが、甘いと? ネロ様には言われたくありませんが」
「そうですか? クラウディオ殿下が正妃の第一王子で、そのまま王太子であることが確定していたからでしょうかね?」

 この辺りは、クラウディオがやたら傲慢に育った理由かもねー? 脅威らしい脅威が無く、よっぽど危機感が薄かったのだろう。シュアンの諫言を無視し、シュアンを置いてさっさか逃げる程には馬鹿だし。

 その一強状態のクラウディオに付いていたシュアンも、ある意味……

「どうもシュアンさんは、この国の王位継承争いを甘く見ている気がします」
「……それは、否定できません」
「元々クソ親父がやらかしていた上、それを利用してどこぞの国が更に我が国を引っ掻き回そうとしていましたからね。割と面倒なことになっているんですよ」

 基盤がグラ付いてるところを、余計に揺るがそうとして。本当に迷惑なのよ。

「っ……」
「なので、潜在敵は早目に判っていた方が楽なので」
「理解は、しました。けれど……」
「けれど?」
「次から憎まれ役は、わたしがやります。なので、その為にネロ様の意向を確りと、わたしへお話しください」

 あらあら、シュアンは本当にあたしに仕えてくれちゃう気満々なのね。

「それと、シュアンとお呼びください。ネロ様」
「ふふっ、シュアンは真面目ですねぇ?」
「……ネロ様は、偶に悪魔みたいですね」
「なぜか最近、よく言われる気がしますねぇ?」
「本当に、どこが天使なんでしょうか? 目的の為に、これ程手段を選ばない恐ろしい方が……まさか、王妃殿下に与することが手段であると、ご本人へ許可を取っているとは」
「ふふっ、アストレイヤ様はお優しい方ですからね。というワケで、今日はアストレイヤ様とお話しに行きますか」
「本当にネロ様は……」

 はぁぁ~と、深い溜め息が落ちる。

「シエロ兄上のお顔を見に♪あ、ちゃ~んとアストレイヤ様のお顔も、ライカ兄上のお顔も好きですよ♪」
「・・・そう言えば、ネロ様は自他共に認める面食いでしたか」
「はい♪」

❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅

しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

『奇跡の王女』と呼ばないで

ルーシャオ
恋愛
サンレイ伯爵嫡子セレネは、婚約の話が持ち上がっている相手のジャンが他の伯爵令嬢と一緒にいるところを目撃して鬱々していた。そこで、気持ちを晴らすべく古馴染みのいる大兵営へと向かう。実家のような安心感、知人たちとおしゃべりしてリフレッシュできる……はずだったのだが、どうにもジャンは婚約の話を断るつもりだと耳にしてしまう。すると、古馴染みたちは自分たちにとっては『奇跡の王女』であるセレネのためにと怒り狂いはじめた。 元王女セレネが伯爵家に養子に出されたのは訳があって——。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………

naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます! ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話……… でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ? まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら? 少女はパタンッと本を閉じる。 そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて── アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな! くははははっ!!! 静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。

処理中です...