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今度、ネロかシエロのところに侍従見習いの男の子が付くって話があるみたいだけど、知ってる?
しおりを挟むふっふっふ……フハハハハハハハハハっ!!
わたしは、帰って来たっ!! この、王都へっ! っつっても、クソ外道変態神官を嵌めるときや王都近郊を視察するとき以外はあんまり王都を出歩いたことないけどねー? って、んなこたどうでもいいのよっ!?
天の御使いの如く麗しい美少年バージョンアーリーたん♡のご尊顔を、舐め回すように拝観したいわっ!! あわよくば、お子様特権をフルに活用して、近くに寄ってハスハスしたり、なんだったらハグしてクンカクンカしたいっ!!
それになにより、お子様シエロたん(王子バージョン)と美少年アーリーたんの絡みとか絶対絶対最っ高じゃないっ!?
ハァハァ……想像するだけで、熱いパッションが滾るわっ!! と、内心で興奮しつつ、鼻血や涎が出ていないかをそっとチェック。
よし、大丈夫。顔から垂れたらマズい液体は垂れてない。涙は兎も角、ネロたんのお顔に鼻血は似合わないものね!
気合を入れて、アストレイヤ様に諸々の報告とシュアンの顔合わせ。
「今回の視察、ご苦労だったな。ネロ、シエロ」
「ただいま戻りました」
「元気そうでなによりだ。そして、それがお前達の拾ったシュアン・ウェイバーか」
「!」
「此度の件、我が国へは僥倖と言えるが。貴公に取っては災難だったであろう? 暫くは捕虜待遇ではあるが、家族諸共の亡命を許可しよう」
「……感謝致します、アストレイヤ王妃殿下」
シュアンはめっちゃ緊張しているみたいだけど。感触としては、そう悪くない感じかしら? というか、アストレイヤ様的にはシュアンに同情しているような感じ。
ま、それも仕方ないわよねー? 置いてかれた経緯が経緯だもの。しかも、シュアンはクラウディオを諫めていたという話だし。その流れで行くと、アレよねぇ……
口煩いから蜥蜴の尻尾にした、とも取れる。
それも、あの野郎。ギリギリ未成年に全責任を引っ被せて、自分はさっさか……ぷぷっ、股間押さえながら騎士にお姫様抱っこされながらの撤退だったけど……逃げ出して、だ。
もう、ホンっト、アレだ。馬鹿というか、間抜けというか……愚かにも程があるわよねー?
な~んて思いつつ、シュアンをあたしの部下にくれと猛アピールした。責任は取るし、ちゃんとごはんあげるし、適度な休日と仕事に見合ったお給料も出すし、ご家族も亡命させて、面接して実力に見合ったお仕事もさせるから、と。
「……なんだろ? 『うちで犬飼いたい、ねえいいでしょ?』って攻防してるみてぇ」
ぼそりと呟く蒼。ま、ある種間違っちゃないわね!
「子供扱いから、とうとう犬扱いに・・・」
と、蒼の呟きを拾っちゃったのか、ず~んと沈んだ顔になるシュアン。
「ククッ……そこまで言うなら、いいだろう。許可する。但し、少しでも叛意ありと周囲に判断されるようであれば、わたしの方で処分を決める。これは譲らん」
「はい、ありがとうございます。アストレイヤ様」
「シュアン・ウェイバー」
「ハッ、なんでしょうか、アストレイヤ王妃殿下」
「ネロは人使いが荒いからな。覚悟しておけ」
「・・・承知致しました」
と、有能(希望)な部下シュアン、正式にゲットだぜ!
そんな感じで報告が終わり、執務室を出ると――――
「シエロ、ネロお帰り!」
パタパタと満面の笑顔で駆け寄って来たのは、久々のぷにショタライカ!
「はい、ただいま帰りました。お久し振りですね、ライカ兄上」
「ただいまー」
「わたし達が留守の間、寂しい思いをしていませんでしたか?」
「それは、その……ちょっとだけ」
つんと赤くなった顔を逸らすライカ。うむ、久々のツンデレもまた善し!
「そうですか。では、ライカ兄上に寂しい思いをさせないよう、今度の視察のときにはもっと沢山お仕事を用意しておきますね?」
「っ!? いやいやいや、待ってっ!? 僕、大丈夫だったから! 一人お留守番してても全然寂しくなかったから! 本当に大丈夫だったし、無理してたくさんお仕事作らなくていいからね!」
ライカは必死にぷるぷると首を振る。
「おい、あんまライカ兄上に無茶振りするな」
「シエロ!」
なぜか、口を挟んだ蒼へ救いを求めるような顔。
「そ、そうだ、ネロ。今度、ネロかシエロのところに侍従見習いの男の子が付くって話があるみたいだけど、知ってる?」
おお、あからさまに話を逸らしたわね。ま、いいけど。
今度、あたしか蒼のところに……? って、もしかしてっ!?
「ライカ兄上、それってどんな男の子か知ってますかっ?」
「へ? あ、えっと、なんかすっごく綺麗な顔をしてるらしいよ?」
こ、これは……この状況ならきっとアーリーたんのことに違いないわよねっ!?
「えっと、どうしたの? ネロ?」
「ぁ~……なんつーか、ネロは……その、実は面食いだからなぁ……」
と、どこか遠い目をして言う蒼。
「? 面食いって、なに?」
きょとんと首を傾げての質問。どうやら意味がわからないらしい。
「ぁ~、えっと、美形好き?」
「え? ネロって、美形が好きなの? 今度来る見習いの子は男の子だって話だから、女の子じゃないよ?」
「ふっ、甘いですね! 美形には男女の別などどうでもいいのです! そう、美しいものは眺めているだけで目の保養、眼福、ハッピーな満足感という素晴らしい幸福を振り撒いてくれる非常に貴く、尊い存在なのです!」
「へ? え? あの、なに言ってるの? ネロ?」
「そもそも、美形と一口に言っても、男性には男性の! 女性には女性の! 子供には子供の! 更には幼さから成長過程を経て、完成されたり、老成することでも増して行く、個人個人にそれぞれの! 全然別の! 美しさや愛らしさ、かっこよさと言った魅力があるのです!」
「はいはい、ストップストップ。ちょいヒートアップし過ぎ。ライカ兄上ドン引いてるから。はい、深呼吸深呼吸。さっさとクールダウンして落ち着け」
「ハッ! すみません、ライカ兄上。つまり、要約すると多くの人間は美しいものを見るとそれだけでハッピーになれるということです♪」
あらヤだ、思わず熱くなるところだったわ。
「え~っと……うん、なんかネロが綺麗な人が好きなのはよくわかった」
「ふふっ、ありがとうございます」
「や、別に礼言うとこでもねーかんな?」
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