腐ったお姉ちゃん、【ヤンデレBLゲームの世界】で本気を出すことにした!

月白ヤトヒコ

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粗方の仕事は終えたということで。そろそろお城に戻るとしますか。

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「あ~あ、み~んな見事にネロに騙されてやんの」

 涙を流して感謝し、ネロたんの指揮下に入ることを誓ったオッサン共のいた部屋から出ると、蒼が呆れたように口を開いた。

「え? どういうことですか、シエロ様?」

 グレンがきょとんと蒼を見やる。

「どういうことだろうなー? ネロ」
「ふふっ、どういうもなにも。騙しただなんて心外ですね。わたしは人道的な観点と、人材確保の為に最善を尽くしたと思っていますが?」
「人道的観点と人材確保、なー? 人道的な奴は普通、人体実験施設行きを提案したりしないと思うんだが?」
「その辺りは見解の相違ですね」
「その、ネロ王子」
「はい、なんでしょうか? シュアンさん」
「あれは……その、療養施設・・・・行きというのは、方便ですよね?」

 面を上げたシュアンが、どこか緊張したようにあたしを見下ろす。

「いえ、あれは本当のことですよ」
「……療養施設・・・・行きというのは、アストレイヤ王妃殿下の発案でしょうか?」
「いいえ? わたしの発案です。実はあれは、『世の中には、ただ薬を飲むだけで高額報酬を貰える仕事がある』と聞き付けまして。それなら、囚人で試してみては如何でしょうか? と、アストレイヤ様に提案してみました」
「・・・誰ですか、ネロ王子にそのような話をしたのは」

 顰めた顔の低い声。どうやら、お子様の教育には宜しくないと判断したようだ。

「さあ? 誰でしょうね。わたし、割と放置気味で育ったもので。時間を潰す為に散歩しているときに、どこからか聞こえて来た話だったと思います」

 ということにしておこう。

「っ! すみません。不躾なことをお聞きしました」

 顰めた表情から顔色を変えて謝るシュアン。あら、ネロたんの境遇に同情したようね。さっすが、【愛シエ】の中でも良識のある人だわ。

「お気になさらず。わたしが、シエロ兄上よりも放置されていたのは有名なので」
「ぁ~……あのやべぇ側妃なぁ」
「シエロ王子っ!?」
「ふふっ、わたしの母が……やべぇ女なのは事実ですからね。気にしていませんよ」

 身近で見てたら、普通に頭おかしい類の女だもんねー。暴れて手を付けられないときには、鎮静剤打って静かにさせとくべき女だと思う。

 同情すべきところは多少……いや、かなり? あるにせよ、やっちゃいけないことはやっちゃいけない。どんなに激しく嫉妬していたとして、だ。その八つ当たりで、当事者じゃない他人……それも身分的に逆らえない弱者を酷く傷付けるなどもってのほかよ。

 仮令たとえ同情や憐れみに値する事情があったとしても、それであの女がしたことが赦されていいワケじゃない。誰かを荒ぶる感情のまま傷付けたのなら、その償いはすべきだ。ついでにどこぞのクソ親父も、その責任を負うべきだ。

 つか、仮にも側妃として娶っておいて? ヤることヤって妊娠までさせて? 我が子まで出産させておいて? 全部知っていてあんな仕打ちをするとか……男としてどころか、人間としてもクソ最低野郎のどこがいいのかしら? マジで謎よねー?

 顔か? 顔と地位以外、レーゲンには全くいいことろが無いんだけど? それとも、あの女はドMだった……というワケじゃないのよね? ドMなら、あの待遇を受けてもあんなに荒れて他人に八つ当たりするワケないだろうし。

「ま、そんなことより。お前の指揮下に入らない奴、全員人体実験に回すつもりかよ? それはそれで問題じゃね? もし冤罪とかだったらどうすんの?」
「そうですねぇ……冤罪は絶対に避けるべきですよね。ですが、今回の彼らはほぼ現行犯のようなものですからね。証拠も十分に揃っています」
「それはそうなんだけどさ?」
「無いモノを無いと証明することは難しい。れど、有るモノを在ると証明するのはそう難しいことではない。というワケで、もし冤罪だという人が出て来るのであれば、冤罪だという、誰かに陥れられたという証拠を探してみればいいのでは? と、思いまして。それに、『国の中枢にいれば、犯人探しができますよ?』って、スカウトするのもありじゃないですか」
「ぁ~、そう来るか」
「それと、刑務所って一応国営じゃないですか。税金で賄われている。つまり、囚人達は税金で生かされているワケです。なので、死刑囚が自前でお金を稼げる手段があってもいいのでは? と。誰かを傷付け、誰かから奪い、誰かを蹂躙し、誰かを殺す……殺し続ける。そんなどうしようもない人が、最期に誰かの役に立ってもいいとは思いませんか?」
「ま、一定の理解は示す。ただ、さすがに全面的な賛同はできねぇな」
「ええ。シエロ兄上はそれでいいと思いますよ」

 そう、お姉ちゃんは、蒼を守る為なら悪鬼羅刹にでもなる覚悟だもの。あたしは蒼を守り通す為ならなんでもする。仮令、なにを犠牲にしたって構わない。そう決めている。けれど、蒼にまでその覚悟を持てとは言わない。

「・・・それはそれでムカつく」

 なにかを感じ取ったのかムッとした顔で睨み付ける蒼に、

「ふふっ」

 クスリと笑顔を返す。

「いいか、ネロ。忘れるなよ。お前は、俺の弟なんだからな!」
「ええ、シエロ兄上とわたしは姉弟きょうだいですからね。では、粗方の仕事は終えたということで。そろそろお城おうちに戻るとしますか」

 なんて、そんなやり取りをして――――

 屋敷内の、今回の件に無関係だった使用人達の再雇用先や給料などの処理。そして、元領主夫人と子息達の旅券発行の審査、移住先などなどの手配を文官達に任せ、あたし達はシュアンと領主一行を護送して一旦王都へ戻ることにした。

 にゅふふ、今回はクラウディオがクソ余計なことして、たったの数時間しかお話できなかったけど・・・王都で待っててね! アーリーたん♪

✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰

 茜「ああ……早くアーリーたんと会いたいなぁ♪」。:+((*´艸`))+:。

 蒼「やたら急かして早く仕事終わらせたと思ったら、狙いはアーリーだったのかっ!?」(*`Д´)ノ

 茜「えへっ♪」(/∀≦\)てへっ♪♪


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