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美形でもない、なんだったら残念な感じの中年オッサンがめそめそする姿って、ホント見苦しいわねぇ。
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現……いや、もう元になるかな? の領主と先代領主分まで遡って裏帳簿を精査し、脱税、横領の金額を正確に計算し、更に追加徴税分を計上。
その莫大な金額(普通に領地経営で稼ごうと思ったら、孫やひ孫世代まで苦労する)を元領主夫妻に見せ、子息達やその未来の子供達に借金苦と不名誉を残すかと問答させた。
結果。夫人は離縁を選び、子息共々外国への移住を決めた。
元領主の方は奥さんと子供達に未練たらたらだったが、「犯罪者の息子と後ろ指を差されながら莫大な借金を返すという茨道を歩ませるおつもりですか?」という夫人の冷たい眼差しに、がっくりと項垂れ、ぼたぼたと鼻水を垂らして泣きながら、爵位と財産一式を手放すという書類と離縁届けにサインをした。
ちなみに、大人しく罪を償うのであれば、国家転覆罪は内密に。親類縁者には累を及ぼさないという契約書にもサイン済み。こちらはクラウディオに唆され、手を貸した者一同が泣いて喜んで契約を交わした。蒼曰く、ぷるぷる震えて怯えていた、とのことだけど……そんなの気のせいだわ。あれは、親類縁者に累を及ばさないというこちら側の至極優しい対応への感激の涙に決まってるじゃないの。
これらの書類をアストレイヤ様に提出すれば、直ぐ様受理されることだろう。
それはいいんだけど……美形でもない、なんだったら残念な感じの中年オッサンがめそめそする姿って、ホント見苦しいわねぇ。まあ、オッサンは身から出た錆だし。自業自得なので余計にかしら? 一切同情はできないわね。でも、オッサンの暴走に巻き込まれた奥さんと子供達には同情するので、ある程度の援助はしてあげよう。外国でそれなりに暮らしていけるように手配するよう言っておかなきゃ。
そんな書類仕事の合間に、打ちひしがれている様子の綺麗め青年シュアンを眺め・・・それを慰めるスパダリ王子様(比喩)登場! という浮腐腐♪な妄想をしていたら――――
「ネロ王子、これからどうなさるおつもりですか?」
なんか、シュアンに懐かれた。
どうやら、あたしと蒼の書類捌きの手腕に感激したとかで、いつの間にか文官に交じって手伝いしてたのよねー。無論、戦闘侍女の監視付き。
書類なんかも、小細工や不備は特に見当たらなかった。それに、予想通りシュアンは優秀だった。やー、優秀な人がサポートして環境を整えてくれると、仕事が捗る捗る。
「そうですね……」
アストレイヤ様からは、あたしがやりたいなぁ……とお願いしたことを許可するというお返事をもらっている。なんでも、アストレイヤ様には無い発想だったようで、えげつないという感想が書かれていたけど、同時に面白そうだとも書かれていた。
まずは、ここの元領主達でお試し期間を置いて、成功すれば専用の施設を造ってもいいとのこと。やったー♪というワケで、やろうとしていることをするにはまず、元領主を説得しなきゃいけない。
「では、元領主とお話することにしましょう」
「元領主と、ですか? 少々危険では? その、お気を悪くしないでほしいのですが、ネロ王子とシエロ王子は領主へ恨まれてはいませんか?」
おお、なんかシュアンに心配されてる!
「ふふっ、ご心配ありがとうございます。でも、大丈夫ですよ」
「まあなー。アレだし」
「あれ、とは?」
「ああ、領主共は既に脅迫済みだから」
「は?」
さらっと返された答えに、シュアンの顔が引き攣った。
「これ以上の反抗をするなら、奥さんに子供、親類縁者も道連れで平民落ちの上、過酷な拷問、公開処刑のコースだっつったら悪魔呼ばわりされたし。なー? ネロ」
けらけらと笑う蒼ににっこりと同意。
「そうですねぇ。元領主は、元奥様である夫人と子息二人を、国家転覆罪に巻き込みたくないという程には愛情を持っているようですからね。これ以上立場が悪くなるようなことは、自分からはしないと思いますよ」
「天使のように……いえ、天使そのものな程愛らしく麗しいネロ様とシエロ様に向かって悪魔など罵るとは不敬にも程があります! 是非とも鞭打ち刑を追加しましょう!」
「あなたは口を挟まない!」
割り込んだ戦闘侍女を侍女長が叱り付ける。
「も、申し訳ありません」
相変わらず、血の気の多い戦闘侍女ねー? ん? 血の気が多いから戦闘侍女をしてるのかしら?
「ネロ様。下がらせますか?」
「っ!?」
ショックを受けた顔でぷるぷると首を振る戦闘侍女。
「いえ、大人しくしているなら、ここにいてもいいですよ」
「はい! ありがとうございますネロ様!」
「かしこまりました。ですが、次に余計な口を挟むようでしたら、別の者と交代させます」
「はい」
侍女長に頷くと、ハッとした顔で自分の口を押さえる戦闘侍女。
「では、元領主と交渉と行きますか」
「ウェイバー様はどう致しますか?」
「シュアンさんが下がりたければ下がっても構いませんよ」
若干引き気味な顔であたし達の会話を見ていたシュアンが、
「いえ、その、同席をお許し頂けるのであれば……」
「わかりました。でも、そうですね……シュアンさんは領主に顔が割れているので、領主の背後に控えていた方がいいでしょう」
なんつーか、唆した側の奴と、唆されて罪を犯した奴が顔を合わせると面倒なことになるのは必至。とは言え、領主側とシュアン側の証言に食い違いがあれば、それはそれで詳しい調査が必要になるということだ。新しい罪状や証言などが出るも善し。更なる裏切りの発覚も善し。
それならそれで、幾らでもやりようがあるというもの。
「では、元領主達とお話しましょうか」
――――――――――――
ネロ(茜)「ふふっ……」。:+((*´艸`))+:。
シュアン「なぜ、ネロ王子はあんなにも優しい眼差しでわたしを見詰めるのだろうか……」(´・ω・`)?
戦闘侍女「そんなの、ネロ様が慈悲深くて大変素晴らしいお方だからに決まってます! きっとウェイバー様へ、心配しなくてもいいと態度で示しているのです!」(๑•̀ㅂ•́)و✧
シュアン「ネロ王子はそんなにもわたしのことを……」Σ(*゚Д゚*)
シエロ(蒼)『や~……ありゃ、腐女子が腐った妄想してる顔だろうなぁ』( ̄~ ̄;)
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