腐ったお姉ちゃん、【ヤンデレBLゲームの世界】で本気を出すことにした!

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
86 / 158

・・・なぜ、貴方方はそんなにもネロ王子を慕うのですか?

しおりを挟む



 またまた視点変更。

――――――――――――

 ネロ様のお傍から引き離されてしまいました……

 でも、あのにこりと微笑むネロ様の笑顔……ああもうっ、すっごく尊いです!

 あの笑顔を脳裏に思い浮かべるだけで、おかず無しでパンが何個でもイケそうです!

 そして、侍女長にネロ様の警護の為と、あのばっちい男の付き人だったシュアン・ウェイバー様の動向を監視するようにと命じられてしまいました。

 ネロ様は、本当に慈悲深いお方ですからね。あのようにばっちくて穢らわしい男に仕えていた者にでも、お優しくして差し上げるだなんて……なんて天使なんでしょうっ!!

 ということで、ネロ様の安全を守る為、わたくしはシュアン・ウェイバー様のお世話をすることにしたのですが……

 この人、ちょいちょい面倒くさい人ですね。

 ネロ様とシエロ様のお優しさで生かされているクセに、そのことをまだ理解……いえ、実感できていないようです。

 ウェイバー様のプライバシーや尊厳など、ネロ様とネロ様が大事になさっているシエロ様の御身の前では塵芥よりも軽いというのに。往生際悪く、駄々を捏ねて手間を掛けさせてくれます。

 まあ、説得だけでさっさと検診に応じたので善しとしておきましょうか。

 そもそも、あんなばっちくて穢らわしい男の恋人だという疑惑が掛けられるのは、あんな男に仕えて、一緒に過ごして、我が国に来たご自身が悪いというのに。そういう目・・・・・をむけられたくなければ、さっさとあんな男の側を辞するべきでしたね。

 自身の引き際を見極められないから、こんな事態に陥っているのでしょうに。

 アレですかね? 頭は良さそうなのに……なんでしょう? 賢い馬鹿という言葉がありましたよね? ウェイバー様はそれに該当する方なのでしょうか?

 と、思ったのですが……なんと、ウェイバー様はわたくしよりも年下の十七歳でした。

 この辺りの周辺諸国は基本的に十八歳で成人扱いされるので、ウェイバー様は成人手前の子供扱いされるべき方でしたか。

 まあ、中途半端に賢い子供が周囲の大人に都合の良いように使われているというパターンでしょうね。ちょびっとだけ同情したので、ウェイバー様にはほんのり優しさを向けてあげましょう。丁度、わたくしの弟と同じ年頃ですし。

 そう言えば、ここ十年程全く接触しておりませんが、わたくしの兄弟姉妹は元気にしているでしょうか……? わたくしがこの役職に就くに当たり、結構な金額が支払われたので大丈夫だと思いますが――――

「……あの……」

 胃腸に優しい食事を持って来て、食事のお世話をしているときでした。

「はい、なんでしょうか? ウェイバー様」
「なぜ、わたしに女性の世話係が?」

 不審感に溢れる目がわたしを疑わしそうに見ています。

 これは……ご自身の世話をするのは殿方の方が良かった、ということなのでしょうか?

「わたしは捕虜扱いの筈です。そんなわたしに女性を付けるなど、あなたの上司はなにを考えているのですか?」

 顔をしかめるウェイバー様。

「それは……わたくしの身を案じていらっしゃる、ということでしょうか?」
「端的に言えば、そうなりますでしょうか」

 顰めたお顔のまま、警戒するようなお返事。

「それなら、心配ご無用です。わたくし、警護用の侍女ですので。さして鍛えてもいなさそうなウェイバー様を鎮圧することなど、赤子の手を捻るようなものです。ちなみにですが、わたくし。並みの騎士でしたら、帯剣していても三名程は余裕で沈められますわ」

 そう返すと、ウェイバー様のお顔が引き攣りました。うふふ、油断を誘う為に侍女の振り……というか役職の一部として業務をこなしますが、わたくしの専門は護衛。あまり甘く見ないでほしいですわ。

「なので、下手なことは実行なさらないでくださいね? ウェイバー様は、ネロ様にお気に入られた模様。わざわざ命を粗末にして、ネロ様を悲しませるようなことはしないで頂けると嬉しく思います」

 ええ。ウェイバー様が処分・・されて、ネロ様の悲しがるお顔は見たくありませんもの。

「・・・善処します」

 と、青い顔で食事を食べ進めました。

 食事が終わり、同じ部屋に控えておりますと・・・

「・・・なぜ、貴方方はそんなにもネロ王子を慕うのですか?」

 そう質問されました。

 これは、あれですね! ネロ様がどれ程素晴らしく、慈悲深く、機智に富み、思い遣り深く、麗しく、お優しく、お可愛らしく、まるで天使そのものであらせられるかをわたくしに語れと言っていらっしゃるのですね!

 いいでしょう。このわたくしがどれ程ネロ様のことを信奉しているかを熱く、熱く語って聞かせて差し上げますわ!

♘⚔♞⚔♘⚔♞⚔♘⚔♞⚔♘

 わたくしが……いえ、わたしは、騎士爵の家の六人姉弟の三番目の子供として生まれました。

 父は騎士であまり家に居付くことはありませんでしたが、貧乏人の子沢山。

 一番低い爵位で、ほぼ平民の我が家には使用人を雇う余裕もなく、家事や騎士夫人達のお付き合いにと忙しい母。弟妹の面倒を見るのは姉やわたし達の仕事でした。

 姉は、弟妹の面倒を見るのに疲れると中間のわたし達に下の面倒を押し付け――――

 いつの間にか、やんちゃな弟達の面倒はわたしが。姉が妹達の面倒を見るという暗黙の了解が出来上がっていたような気がします。

 父は、あまり家にはいないのに、偶に帰って来ると騎士の息子だからと弟達に剣の手ほどきをしていました。そして、弟達の怪我の手当てはわたしに丸投げ。

 正直、父と母にはあまり育ててもらった感覚は薄いですね。

 うちでは姉の方が、よっぽど弟妹達の『母親役』をこなしていましたから。

 わたしにはちょっとイジワルでしたが、それでも姉とは戦友のような関係だったと思います。二番目である長男の兄は跡取りとして教育され、一番大事にされていましたからね。あまりわたし達とは関わりませんでしたし。

 そうやって弟達の面倒を見て、けれどわたし自身が誰かに……姉以外に面倒を見てもらうことは少なかった。そんな幼少期を過ごしました。

 そんなある日のこと。

 当時、十歳程だったでしょうか。

 とある貴族の狩猟大会に手伝いとして参加することになったのです。

 あれ、参加するだけの貴族は猟犬や猟銃、馬や侍従などなど……まあ、入用な物や出費はそれなりにあるでしょうが。大会の主催や準備をする側はかなり大変なんですよね。

 狩猟大会の為に危険な獣は駆除しつつ、ある程度の獣は獲物として残さないといけない。獣が少なければ、他所から調達して来なくてはいけない。家畜やペットを獲物として放つのは駄目。生態系を考慮して、開催地区に不自然じゃない獣の調達。

 森や林の整備。馬が歩けるようにある程度切り開いたり。かと言って、あまり整備し過ぎても参加する貴族達が興醒めしてしまう。

 程良く獣道が残り、さりとて悪路はできるだけ減らす。もしくは、悪路を抜いたコースを考えなければいけない。

 万が一、高位貴族の誰かが落馬や猛獣に襲われて死亡してしまったら……主催や、森林の管理者の責任になる。下手をしたら主催側は物理的に首が飛ぶのです。

 暗殺やら、不自然に見えない事故・・を起こすのに格好のタイミング。また、その罪を擦り付けるのにも持って来い。

 貴族の狩猟大会とは、そういう場所だったのです。

 なので、猫の手も借りたいとばかりに手伝い要員として駆り出されることになりました。無論、断ることなどできません。これも、ほぼほぼ平民同然の下位貴族の宿命というやつですね。

 そして、わたしが手伝いで参加した狩猟大会で事件が起きました。

 どこぞの馬鹿貴族が、猟犬へ盛る興奮剤の量を間違えたらしくて……大人しい犬に興奮剤を与えて、獲物を狩り立たせようとしたらしいのですが、見事に失敗。

 興奮剤で興奮して猛り狂った猟犬が、狩猟大会で夫や兄弟、恋人達の帰りを待つ為に交流を兼ねたお茶会に乱入したのです。

 興奮した犬は調教師を振り切って、女性達へと駆け出し――――

 お茶会の場は、恐怖の悲鳴に埋め尽くされました。


――――――――――――


 視点がコロコロ変わるのが嫌いという方はすみません。(;´∀`)ゞ

 なんか、戦闘侍女が自分語りを始めちゃいました。(*ノω・*)テヘ

しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

『奇跡の王女』と呼ばないで

ルーシャオ
恋愛
サンレイ伯爵嫡子セレネは、婚約の話が持ち上がっている相手のジャンが他の伯爵令嬢と一緒にいるところを目撃して鬱々していた。そこで、気持ちを晴らすべく古馴染みのいる大兵営へと向かう。実家のような安心感、知人たちとおしゃべりしてリフレッシュできる……はずだったのだが、どうにもジャンは婚約の話を断るつもりだと耳にしてしまう。すると、古馴染みたちは自分たちにとっては『奇跡の王女』であるセレネのためにと怒り狂いはじめた。 元王女セレネが伯爵家に養子に出されたのは訳があって——。

老舗カフェ「R」〜モノクロの料理が色づくまで〜

yolu
ファンタジー
café Rの『if』ストーリー─── 現代は、エルフが治める『フィールヴ』という異世界と繋がって40年になる。 今はエルフと人が、少なからず行き来をし、お互いの世界で会社を立ち上げ、共存共栄している。 莉子が一人で切り盛りする、老舗カフェ「R」にも、エルフの来店が増えてきたこの頃。 なんと、 エルフの製薬会社・ラハ製薬によって立退き勧告! 4週間後には店を畳んで出ていかなくてはならない状況に……! そこで立ち上がったのは、常連になると決めたイリオ製薬に勤めるエルフ4人。 イリオ製薬社長のトゥーマ、通訳である人間とエルフのハーフ・アキラ、彼の上司に当たるトップ営業マンのケレヴ、そしてケレヴの同僚の調剤師・イウォールだ。 カフェの料理によって、古典的エルフと言われるほどのイウォールが、莉子に一目惚れ! イウォールの猛烈アタックに振り回されながらも、『異文化コミュニケーション』を重ねながら、美味しい料理はもちろん、恋愛も挟みつつ、この危機を乗り越えていきます!

処理中です...