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ヤだ……打ちひしがれている綺麗めなサブキャラ青年だなんて、腐女子の大好物じゃないっ!?
しおりを挟むサブタイから判る通り、視点変更。(*`艸´)
――――――――――――
ちょい面倒な、領主家十年分の帳簿の精査を終え――――
「やっぱりやってましたか」
脱税。ま、貴族領主は基本的に、領に予期せぬ災害が起こった場合を想定して、タンス預金的なお金を隠していることが多いそうだけど。災害が起こったとして、国が全部保障してくれるワケでもないから、これは多少仕方ないこと。国と地方貴族とで、税収の綱引きと言ったところかしら?
これはちょっと、そういう風にお目こぼしするには大きい金額よねー。
というワケで徴税対象決定!
「ぅえ~……マジ疲れたー……」
処理済み書類の山を前に、燃え尽きたぜ……状態の蒼がテーブルに突っ伏す。
「ふっ、シエロ兄上。燃え尽きている暇はありませんよ。さあ、脱税した分の追加徴税を計算しなくては!」
「ちょっ、待て! さすがにもうちょい休憩させろ!」
蒼が文句を言うと、
「ネロ様、そろそろホテルへ戻りませんと」
執事さんが言った。
「移動時間が勿体無いので、今日はこのままこちらに泊まりませんか?」
「いえ、屋敷内の人間がなにをするか判りませんので。安全の観点から、ホテルにお戻りになられた方が宜しいかと」
「そうですか。わかりました。では、ホテルに戻りましょう。ちなみにですが、シュアン・ウェイバーさんはどうするのですか? ホテルに連れて行きますか?」
「いえ、ウェイバー様はこちらの屋敷内で軟禁をさせて頂きます。領主一派と接触を図るかもしれませんので」
ふむ……捕虜として投降してはいるシュアンを、領主館に留め置いて泳がせるというワケね。逃げ出そうとしたり、クラウディオと連絡を取る素振り、または諜報活動、破壊工作を続投する可能性もある、と考えているのね。
故に、その炙り出しも兼ねて、領主館へ逗留&監視と言ったところかしら。
「ウェイバー様が怪しい動きをするならば、残念ながらウェイバー様の亡命は無かったことになります。宜しいですね? ネロ様」
確認、というよりはこれは決定事項だろう。
「ええ。わかりました。獅子身中の虫を懐に入れる趣味はありませんからね。その場合は非常に残念ですが、シュアン・ウェイバーさんのことは諦めようと思います」
そこまでクラウディオ……もしくは自国への忠誠心が高いなら仕方ない。すっごくよく働いてくれそうな人だけど。味方になってくれない人をこっちの陣営に置いとく余裕は無いもの。
「で、そのシュアンは今どうしてんだ?」
蒼が話に割って入る。
「ウェイバー様は現在、健康診断を終えた後、割り振った部屋で入浴を済ませ、待機しております。健康状態については、医師の初見では特定の病には罹っていない模様。ですが、少々胃腸が荒れているそうなので、胃腸を労るようにとのこと」
「あ~、シュアンはなんか神経細そうだもんなー」
うんうんと、ちょっと同情気味に頷く蒼。
「現在、消化に良い食事を用意中だそうですが……本日は、クラウディオ王太子殿下に罪を擦り付けられた上に敵陣に置いて行かれて、随分を衝撃を受けておいでのようでしたからね。少々打ちひしがれておられた模様。もしかしたらもう既にお休みになられているかもしれません」
ヤだ……打ちひしがれている綺麗めなサブキャラ青年だなんて、腐女子の大好物じゃないっ!? ……そんな、そんな美味しい場面を見逃してしまうだなんて! 至極残念だわっ!!
まあ、綺麗め青年の憂い顔は明日に取っておくことにしましょうか。
「ま、この状況でケロッとしてられる奴がいたら、めっちゃ豪胆な奴だよなー」
「そうですね。そう言えば、屋敷内の使用人達……というか、無関係な人達への説明はどのようにされていますか?」
「そちらの方は、『領主がギャンブルで莫大な借金を背負い、領の税収を横領。故に、国が差し押さえに動いている状況。なので、屋敷内の品物を持ち出し禁止。証拠隠滅の恐れがある為、人員の出入りも制限中』という説明をしております。雇用に関しての不安を口にする者が多いですね」
「そうですか。無関係な使用人達に関しては、他所へ雇用の斡旋を」
「屋敷に残りたいと言う者もおりますが」
「領主が代わるので、その辺りは個人的に次期領主と用交渉と言ったところでしょうか。まあ、屋敷には残さないのは決定事項ではありますが」
「了解しました」
「それじゃあ、ホテルに帰りますか」
と、「今日のところはこれで勘弁してやるぜ」という気分で撤退!
さあ、明日からはもっと遡って帳簿を調べなきゃ!
✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰
茜「くぅ~! 残念! 打ちひしがれるシュアン、めっちゃ見たかったっ!!」(≧口≦)ノ
蒼「相変わらず腐ってやがる。シュアンが憐れだぜ」( ̄▽ ̄;)
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