腐ったお姉ちゃん、【ヤンデレBLゲームの世界】で本気を出すことにした!

月白ヤトヒコ

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確かに、情操教育には非常に悪いのだが……先程から、ちょいちょい殺意の高い伝令が混じっているな?

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 またまた視点変更。

――――――――――――


 ネロ、シエロ達の動き、そして隣国王太子クラウディオらしき人物の報告書、伝令が続々と届き――――

「ぷはっ!? ククククっ……ハハ、アハハハハハハハハハハっ!?」

 思わず吹き出してしまい、そして笑いが止まらない。堪えられない。

 なんだ、この報告はっ!?

 『ネロ様の命令により、クラウディオ王太子と思われる人物及び、その従者や護衛と見られる者達の似顔絵を手配し、人身売買の疑いあり、もしくは性犯罪者と思われる人物だと噂を流し、町中に似顔絵が散見されるようになった翌日、クラウディオと思しき人物が領主へ接触。我々も領主館へと赴いた』

 『ネロ王子、シエロ王子共に変装し、王子という身分を隠し、シエロ第二王子の従者として潜入開始』

 『クラウディオと思しき人物とネロ王子、シエロ王子が接触』

 ここまではいい。いや、王子自身が潜入などあまりよくはないのだが……

 しかし、それは一先ずおいておくことにして、だ。問題はここから。

 『クラウディオと思しき人物は、我々が第二王子一行と知りつつ、接触して来た模様。まずグレンに粉を掛けた。おそらくは、美少年をホテルへ連れ込んだのと同様の目的だと思われる』

 あの色ガキ、本当に節操が無いな? 年端も行かぬ少年にそのようなことをするなど、気色悪い。とても許せたことではないな。

 『ネロ様、シエロ様にも数年後が楽しみだなどと邪悪で悍ましい、色魔のような視線を向けていました。死ねばいいのに。暗殺の許可を頂けるのであれば、直ぐにでもあの穢らわしい男を抹殺してご覧になります。許可をください。殺したいです』

 なんだ、この殺意の高い伝令は……確かに、子を持つ親として至極腹立たしくはあるが。許可など出せるワケがない。これは避けておこう。

 『そして、「妾腹の第二王子などなんの目も将来性も無い者に仕えるより、俺と一緒に来ないか? 家族がいるならば家族ごとうちに引っ越して来い、まとめて面倒見てやろう」と、グレン及び、変装中のネロ様とシエロ様を勧誘していた』

 呆れて物も言えんな。

 『そこでグレンが「シエロ様を侮辱するな」と声を上げると、クラウディオが「どうだ? 俺のことろへ来れば存分に可愛がってやるぞ?」と、グレンの顎を掴んで上を向かせてその顔を覗き込んだ』

 『シエロ様の護衛見習いはどうでもいいのですが、穢らわしい男が調子に乗っていることが赦せません。ネロ様、シエロ様の情操教育に非常に宜しくないので排除したいと思います。キッチリ息の根を止めますので、暗殺の許可を求めます』

 確かに、情操教育には非常に悪いのだが……先程から、ちょいちょい殺意の高い伝令が混じっているな? これも避けておこう。

 『その瞬間、ネロ王子が動いて、「ギルティ、わたしの舎弟に手を出すな。この犯罪者め」と言ってクラウディオ王太子と思しき男の股間を思い切り蹴り上げた。男は蹲り悶絶』

「ぷはっ!? ククククっ……ハハ、アハハハハハハハハハハっ!?」

 緊迫した雰囲気と剣呑さが漂っていたというのにっ!?

 ここでこう来るかっ!?

「ど、どうされましたかアストレイヤ様っ!?」

 いきなり笑い出したわたしにぎょっとする部下。ポイと件の報告書を投げると、

「ブフぅっっ!?!?」

 部下も思い切り吹き出した。

「ハハハハハハハハハハハハ……っ!?」

 暫く笑いが止まらず、バシバシと机を叩いて涙が出るまで爆笑してしまった。

 こんなに笑ったのは、子供の頃以来だぞっ!!

 荒くなった呼吸を整え、浮かんだ涙を拭う。

「はぁ……ああもう全く、危険なことはするなと、もっと言い聞かせねばならんな」

 爆笑の後の気怠さと、未だに出て来る笑いを堪えて報告書と伝令に目を落とす。

 『ネロ様の啖呵と、素晴らしい金的に感動致しました。全部潰れて不能になって、腐り落ちて捥げればいいのに。無論この後、ネロ様の履いていた靴は焼却処分し、ネロ様のおみ足を丁寧に洗って確りと消毒を致しました。二度とネロ様と接触しないよう、あの男をこの世から抹殺したいと思います。暗殺の許可を、平にお願い奉ります』

 ……この殺意の高い伝令は、ネロの侍女のうちの誰かが書いているのか? 少々不穏だな。ネロの使用人の交代を考えた方がいいかもしれん。

 帰って来たらネロに言っておくか。

 『護衛と思しき男が前に出て、「この方を誰だと思っている」とネロ様を威嚇。しかし、ネロ様は強気な姿勢を崩さず、クラウディオ(仮)一行に名を名乗れ、と。「おら、グズグズしてないでさっさと名乗れ。こっちは第二王子一行だぞこら。先にうちの第二王子を侮辱して、失礼なことを言ったのはその野郎じゃないか。挙げ句、わたしの舎弟怖がらせていいと思っているのか? 蹴り潰すぞ」と』

「クハッ! ははっ……これ、本当にネロが言ったのか? セリフだけなら、シエロの方が言いそうではあるが……ああ、でも、そうだな。ネロも存外口が悪かったか」

 普段は結構猫を被っていたな? それに、シエロが侮辱され、実はネロも本気で怒っていたのかもしれん。

 『護衛が怯むと、「うちの第二王子を侮辱したと、そっちの国に正式に苦情を言ってもいいんだぞ。諫めなかったお前達も同罪の連帯責任だからな。キッチリ責任追及してやるから、さっさと名乗りやがれ」と告げると、クラウディオと思しき男は息も絶え絶えに「性犯罪者はその男だ」と。付き人の一人を指差し、護衛に横抱きで抱えられて脱兎の如く逃走』

「クハ……っ!?」

 そ、想像してしまったではないかっ!? クラウディオ王太子が息も絶え絶えに護衛に横抱きにされて脱兎の如く逃走っ!

 ああもうっ、本人の顔を見知っているから余計に笑えるじゃないかっ!!

 ネロはわたしを笑い死にさせるつもりかっ? まあ、ネロにその意図は無さそうだが……

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