80 / 158
確かに、情操教育には非常に悪いのだが……先程から、ちょいちょい殺意の高い伝令が混じっているな?
しおりを挟むまたまた視点変更。
――――――――――――
ネロ、シエロ達の動き、そして隣国王太子クラウディオらしき人物の報告書、伝令が続々と届き――――
「ぷはっ!? ククククっ……ハハ、アハハハハハハハハハハっ!?」
思わず吹き出してしまい、そして笑いが止まらない。堪えられない。
なんだ、この報告はっ!?
『ネロ様の命令により、クラウディオ王太子と思われる人物及び、その従者や護衛と見られる者達の似顔絵を手配し、人身売買の疑いあり、もしくは性犯罪者と思われる人物だと噂を流し、町中に似顔絵が散見されるようになった翌日、クラウディオと思しき人物が領主へ接触。我々も領主館へと赴いた』
『ネロ王子、シエロ王子共に変装し、王子という身分を隠し、シエロ第二王子の従者として潜入開始』
『クラウディオと思しき人物とネロ王子、シエロ王子が接触』
ここまではいい。いや、王子自身が潜入などあまりよくはないのだが……
しかし、それは一先ずおいておくことにして、だ。問題はここから。
『クラウディオと思しき人物は、我々が第二王子一行と知りつつ、接触して来た模様。まずグレンに粉を掛けた。おそらくは、美少年をホテルへ連れ込んだのと同様の目的だと思われる』
あの色ガキ、本当に節操が無いな? 年端も行かぬ少年にそのようなことをするなど、気色悪い。とても許せたことではないな。
『ネロ様、シエロ様にも数年後が楽しみだなどと邪悪で悍ましい、色魔のような視線を向けていました。死ねばいいのに。暗殺の許可を頂けるのであれば、直ぐにでもあの穢らわしい男を抹殺してご覧になります。許可をください。殺したいです』
なんだ、この殺意の高い伝令は……確かに、子を持つ親として至極腹立たしくはあるが。許可など出せるワケがない。これは避けておこう。
『そして、「妾腹の第二王子などなんの目も将来性も無い者に仕えるより、俺と一緒に来ないか? 家族がいるならば家族ごとうちに引っ越して来い、まとめて面倒見てやろう」と、グレン及び、変装中のネロ様とシエロ様を勧誘していた』
呆れて物も言えんな。
『そこでグレンが「シエロ様を侮辱するな」と声を上げると、クラウディオが「どうだ? 俺のことろへ来れば存分に可愛がってやるぞ?」と、グレンの顎を掴んで上を向かせてその顔を覗き込んだ』
『シエロ様の護衛見習いはどうでもいいのですが、穢らわしい男が調子に乗っていることが赦せません。ネロ様、シエロ様の情操教育に非常に宜しくないので排除したいと思います。キッチリ息の根を止めますので、暗殺の許可を求めます』
確かに、情操教育には非常に悪いのだが……先程から、ちょいちょい殺意の高い伝令が混じっているな? これも避けておこう。
『その瞬間、ネロ王子が動いて、「ギルティ、わたしの舎弟に手を出すな。この犯罪者め」と言ってクラウディオ王太子と思しき男の股間を思い切り蹴り上げた。男は蹲り悶絶』
「ぷはっ!? ククククっ……ハハ、アハハハハハハハハハハっ!?」
緊迫した雰囲気と剣呑さが漂っていたというのにっ!?
ここでこう来るかっ!?
「ど、どうされましたかアストレイヤ様っ!?」
いきなり笑い出したわたしにぎょっとする部下。ポイと件の報告書を投げると、
「ブフぅっっ!?!?」
部下も思い切り吹き出した。
「ハハハハハハハハハハハハ……っ!?」
暫く笑いが止まらず、バシバシと机を叩いて涙が出るまで爆笑してしまった。
こんなに笑ったのは、子供の頃以来だぞっ!!
荒くなった呼吸を整え、浮かんだ涙を拭う。
「はぁ……ああもう全く、危険なことはするなと、もっと言い聞かせねばならんな」
爆笑の後の気怠さと、未だに出て来る笑いを堪えて報告書と伝令に目を落とす。
『ネロ様の啖呵と、素晴らしい金的に感動致しました。全部潰れて不能になって、腐り落ちて捥げればいいのに。無論この後、ネロ様の履いていた靴は焼却処分し、ネロ様のおみ足を丁寧に洗って確りと消毒を致しました。二度とネロ様と接触しないよう、あの男をこの世から抹殺したいと思います。暗殺の許可を、平にお願い奉ります』
……この殺意の高い伝令は、ネロの侍女のうちの誰かが書いているのか? 少々不穏だな。ネロの使用人の交代を考えた方がいいかもしれん。
帰って来たらネロに言っておくか。
『護衛と思しき男が前に出て、「この方を誰だと思っている」とネロ様を威嚇。しかし、ネロ様は強気な姿勢を崩さず、クラウディオ(仮)一行に名を名乗れ、と。「おら、グズグズしてないでさっさと名乗れ。こっちは第二王子一行だぞこら。先にうちの第二王子を侮辱して、失礼なことを言ったのはその野郎じゃないか。挙げ句、わたしの舎弟怖がらせていいと思っているのか? 蹴り潰すぞ」と』
「クハッ! ははっ……これ、本当にネロが言ったのか? セリフだけなら、シエロの方が言いそうではあるが……ああ、でも、そうだな。ネロも存外口が悪かったか」
普段は結構猫を被っていたな? それに、シエロが侮辱され、実はネロも本気で怒っていたのかもしれん。
『護衛が怯むと、「うちの第二王子を侮辱したと、そっちの国に正式に苦情を言ってもいいんだぞ。諫めなかったお前達も同罪の連帯責任だからな。キッチリ責任追及してやるから、さっさと名乗りやがれ」と告げると、クラウディオと思しき男は息も絶え絶えに「性犯罪者はその男だ」と。付き人の一人を指差し、護衛に横抱きで抱えられて脱兎の如く逃走』
「クハ……っ!?」
そ、想像してしまったではないかっ!? クラウディオ王太子が息も絶え絶えに護衛に横抱きにされて脱兎の如く逃走っ!
ああもうっ、本人の顔を見知っているから余計に笑えるじゃないかっ!!
ネロはわたしを笑い死にさせるつもりかっ? まあ、ネロにその意図は無さそうだが……
10
お気に入りに追加
112
あなたにおすすめの小説

【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜
真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。
しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。
これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。
数年後に彼女が語る真実とは……?
前中後編の三部構成です。
❇︎ざまぁはありません。
❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。

罠に嵌められたのは一体誰?
チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。
誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。
そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。
しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

ウワサの重来者 どうか、心振るえる一生を。(中辛)
おいなり新九郎
ファンタジー
最新情報:幼いサヤを背負い少女は炎と化け物の中を潜り抜ける。一途にこの娘を地獄から逃がすために。
ーあらすじー
侍の家に生まれたユウジは16歳の少年。
家族がいろいろあって、家を継ぐことに。
ある日、特別な力を与えてくれるという「宝」を引ける催しに参加する。
そこで、彼が引いてしまったハズレとしか思えない「宝」とは?
宝のせいなのか、問答無用にふりかかる災難。
個性豊かな、お宝美少女達に振り回され、ユウジは冒険を続ける。
そこには思わぬこの世界の因縁と謎があった。
作者より
タイトルにある「重来者」はリターナーと読みます。
途中、主人公交代を検討しております。
お一人でも多くの方が楽しんでくだされば幸いです。
理不尽な世の中で、どうか心振るえるひと時を・・・。

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。

断罪現場に遭遇したので悪役令嬢を擁護してみました
ララ
恋愛
3話完結です。
大好きなゲーム世界のモブですらない人に転生した主人公。
それでも直接この目でゲームの世界を見たくてゲームの舞台に留学する。
そこで見たのはまさにゲームの世界。
主人公も攻略対象も悪役令嬢も揃っている。
そしてゲームは終盤へ。
最後のイベントといえば断罪。
悪役令嬢が断罪されてハッピーエンド。
でもおかしいじゃない?
このゲームは悪役令嬢が大したこともしていないのに断罪されてしまう。
ゲームとしてなら多少無理のある設定でも楽しめたけど現実でもこうなるとねぇ。
納得いかない。
それなら私が悪役令嬢を擁護してもいいかしら?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる