76 / 158
フハハハハハハ! クラウディオが愚かなお陰で、労せず優秀な人材ゲットだぜ!
しおりを挟む「っ!? あ、あなただったんですかっ!? 先程の少女は!」
ぎょっとした、まさに驚愕! という顔があたしを見詰める。
「ええ。変装です。というか、シエロ兄上もあの場にいましたよ。ね、シエロ兄上」
「おう。やー、目の前であんな悪口言われるとは思わなかったぜ」
「グレンさんが怒るのも道理ですよ、全く」
「目の前にいた……? で、ですがっ、王子があんな真似していいと思っているのですかっ!?」
「? さて、あんな真似とはどのようなことでしょうか?」
暴言に暴力……心当たりがあり過ぎるわねっ☆ま、基本クラウディオの自業自得だけど。名乗れるものなら、名乗ってみやがれってものよ!
「た、他国の王族の……その、王族へ、あのような暴力を振るって……」
あら、驚愕し過ぎたのか、ぽろっとクラウディオ(仮)が王族だって零しちゃってるわよ。ということは、やっぱアレは(仮)が必要無い存在だった、というワケね!
ということは、クラウディオ(マジもんの王太子)は……本当に本当にゲス野郎で間違いないのね!
王族、と明言したことには今は触れない。確りと記録は取らせているし、下手にツッコミを入れて否定されても面倒だ。後で確りとその辺りを詰めてあげましょう♪
「ああ、あの金的なー。めっちゃ痛そうだったなー」
「きっ、金っ……そのような下品な言葉……」
と、シュアンはシエロたんの清楚で麗しいお顔から放たれた言葉に絶句した。
あら、なんだか既視感のある表情ねー?
ライカも、蒼とあたしが最初にちょびっとだけ素で話したときにそんな顔してたわー。そういえば、お留守番なライカは元気にしてるかしらねー? 一応、お土産と一緒に新しい人材(違法にお買い上げした人達)とお仕事も送り付けておいたから、あんまり暇はしてないと思うけど。
あ、でもでもお仕事片付いたら暇するかしら? よ~し、ライカが寂しい思いをしないように、お姉ちゃんもっとお仕事作ってあげなきゃね! ふっふーん、やることは作れば幾らでもあるし。なにをやってもらおうかしらねー?
「えー? 金的は金的じゃん。なー? ネロ」
同意を求める蒼に、
「最近のシエロ様は少々口が悪いですよ。先程のネロ様の口調も、シエロ様の影響ですかね? 俺だけじゃなくて、あれにはみんなビックリしていましたよ。あんな真似は、もうやめてください」
やれやれと溜め息を落とすグレン。
「はっはっは」
「ふふっ」
なにせ、中身がアラサー近い蒼とあたしだもの。以前の純粋なシエロたん、ネロたんよりは確実にお口が悪くなっているのもしょうがないわね。
「お二人共笑い事ではありませんよ。全くもう……」
「そうですね。では、雑談はこれくらいにして。これからは時間との戦いです。シュアンさん。早くお手紙書いちゃってください。あちらは、あなたが情報を洩らすとは思っていない筈」
シュアンも最初はなにも話さない、って明言していたものね。ま、こうやってあたしが懐柔して話させる方向に持って行ってる上、精神状態がまともじゃないせいか、ぽろぽろと重要な情報を零しちゃってるけど。
「とは言え、あちらがあなたのことを悪いように触れ回る前に、ご家族には事情を説明しておいた方が宜しいかと。早く出せば、その分早く着きますからね。ご家族や大事な方を、なるべく早く安心させてあげましょう」
家族が出掛けたっきり、ずっと帰って来ないと……待ってる方は不安で不安で仕方ないもの。生きているなら、せめて元気であることくらいは報せてあげなきゃね!
あたしは、家族が帰って来ない状況を二度経験した。一度目はお父さんとお母さん。二度目は、蒼だ。帰って来なくて心配してたら、事故に遭ったって聞いて――――あんな風に胸が押し潰されるような気持ち、経験しなくていいならしない方がいいわ。
「……心より感謝致します」
と、なんだか言いたいことを飲み込んだような顔でシュアンは手紙に向き直った。
それにしても、クラウディオはマジで悪手を取ったわね。なにせ、シュアンは隣国の未来の宰相だ。側近としても、かなり有能だった筈。そんな風に自分を支えてくれる人を、こうも簡単に切り捨てるなんて……愚か過ぎるにも程があるわ。
ま、こうしてまんまとあたしが拾っちゃうワケだけどね♪
確実に宰相になっているのは約十年後だとしても、シュアンは将来宰相になれる上、国王夫妻の負担も担えるくらいに優秀だということだ。
ってことは……もしかしなくても、クラウディオが国王になれたのは、実はシュアン・ウェイバーの働きが大きかったんじゃないかしら?
フハハハハハハ! クラウディオが愚かなお陰で、労せず優秀な人材ゲットだぜ!
さてさて、クラウディオ陣営がシュアンを切り捨てた後、これからどんな風になって行くのか……大分見物よねー。
ふふっ、シュアンにはどう動いてもらおうかしら?
現状ではあたしの言ってることへ耳を貸してくれる人、そして理解してくれる人が少ないのよねー。蒼にネロリン信者、アストレイヤ様だけじゃ足りない。
あたしも蒼もまだ子供だし。王族じゃなかったら、まともに話聞いてくれる人がいたかも怪しい。ネロリン信者は恩人フィルター掛かってるせいか、あたしの言うこと聞いてくれるけど。言っていることをちゃんと理解しているかどうかは、若干怪しい。あの人達、基本使用人だし。書類仕事ができる人もいないことはないけど、お役所的な小難しい書類を捌ける人は少ないもの。アストレイヤ様はあたしの言ってること理解してくれて、割と好きにさせてくれるけど、国王代理業務が忙し過ぎて時間を割いてもらうのがちょっと申し訳ない。
というワケで、あたしと蒼の言ってることを理解して、別の人へ指示できる大人……シュアンは成人してるか、もしくは成人近いわよね? が欲しかったところなのよ! まだ宰相にはなっていないけど、そういう小難しい執務は得意そうだ。たっくさん働いてもらおっと♪
まだまだ色々やりたいことがたっくさんあるのよねー♪
10
お気に入りに追加
112
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

『奇跡の王女』と呼ばないで
ルーシャオ
恋愛
サンレイ伯爵嫡子セレネは、婚約の話が持ち上がっている相手のジャンが他の伯爵令嬢と一緒にいるところを目撃して鬱々していた。そこで、気持ちを晴らすべく古馴染みのいる大兵営へと向かう。実家のような安心感、知人たちとおしゃべりしてリフレッシュできる……はずだったのだが、どうにもジャンは婚約の話を断るつもりだと耳にしてしまう。すると、古馴染みたちは自分たちにとっては『奇跡の王女』であるセレネのためにと怒り狂いはじめた。
元王女セレネが伯爵家に養子に出されたのは訳があって——。

帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる