腐ったお姉ちゃん、【ヤンデレBLゲームの世界】で本気を出すことにした!

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
70 / 158

た、頼むっ!! 妻と子供達だけは勘弁してやってくれっ!!

しおりを挟む



「ふふっ、貴重な証言をありがとうございます。では、選んで頂けますか?」

 にっこりと笑顔で言うと、

「一族郎党。及び、屋敷の使用人諸共連座で処刑台へ上るか、それとも全て自供して、関与した者のみが罰を受けるのかを」

 シエロたんしか見ていなかった領主の目が、初めてあたしに向けられた。

 漸く、気付いたらしい。

 この場で、交渉しないといけない相手が第二王子のシエロたんではなく、おまけだと思っていたであろう、第三王子のネロたんこのあたしだということに。

 遅過ぎじゃね? ま、その分面白い発言を聞かせてもらったけど。

「とりあえず、隣国の彼……ディオとわたし達へ名乗った灰色髪にアッシュブルーの瞳をした男から言質は取ってあります。『俺はここの領主の取り引き相手だ』と。そして、その彼なのですが。どうやら正規に入国していない、隣国の王族だそうで。『密入国した隣国の王族と、内密に取り引きをしている』というこの状況証拠だけでも、あなたが隣国と通じ、我が国へ不利益を齎そうとしているという嫌疑を掛けるには十分だとは思いませんか?」
「な、なにを……」

 だらだらと流れる脂汗。

「だから、選んでください。あなた自身は無論のこと。奥様もお子さんも身分剥奪の上、平民として国家転覆罪で絞首刑に処されるか。はたまた全てを自供し、あなたと、隣国の王族と直接関与した者のみだけの処罰で済ませるかを」
「身分剥奪かー。平民になると、なんかあんのか?」

 呑気そうに蒼が聞いた。

「そうですね。まず、貴人牢ではなく一般牢へ。それも、重罪人用の牢行きが決定ですね。取り調べは、かなり過酷になるでしょう。夫人やお子さん達に、耐えられるでしょうか?」
「っ!? つ、妻と子供達まで牢へ入れる気かっ!?」

 お、顔色が変わったわね!

「当然でしょう? なにせ、国家転覆罪ですよ? 大逆じゃないですか。一族郎党の処刑が妥当の罪です。けれど、その前に知っていることは全て、些細なことでも話してもらわないといけないじゃないですか。特に、主犯が口を噤む場合には。関与を疑われた人達への取り調べが過酷になるのはよくあることだそうですよ。最悪、獄中死することもあるそうですが・・・仕方ありませんよね?」
「なんか、すっげー酷いことされんだろ?」
「そうみたいですねぇ? あまりよくわかりませんけど。鞭打ちや重石責めなどをするそうですよ? 拷問の本に載ってました」
「鞭? マジで? 子供に鞭打ちかよ? ヤバくね?」
「そうですね。大事に育てられた貴族の子供が、三回程の鞭打ちであっさり死んじゃったこともあるそうです。拷問は、責め手が下手だとすぐに死んじゃうみたいですね」
「うっわ……さっき見た息子、ひょろそうだったが。拷問に耐え切れんのか?」
「どうでしょうね? 拷問が上手い人だと、責め苦を与え続けても、殺さないようにするそうですが……長期間拷問を受けた人が、その後に通常生活を送ることは難しいみたいですね。ほら? 肉体的に傷を負って、その後遺症が残ったり。または、精神的におかしくなってしまったりするようです」
「た、頼む! 妻と息子達は無関係なんだっ、許してやってくれっ!!」

 おお、そろそろ落ちそうね!

「ああでも……」
「でも、なんだよ?」
「一族郎党、皆処刑になるのでしたら、拷問後のことなんて関係ありませんよね?」
「こっ、この、悪魔共めっ!!」

 あらヤだ、戦闘侍女が無表情で懐に手を入れている。なんだか危険な兆候ね! スッと手を挙げて制し、

「悪魔とはまた、心外ですね。こちらとしては、あなた方に国家転覆の疑いが出た時点で、屋敷の住人を撫で斬りにしてもよかったんですよ?」

 更に言い募ると、なんだかワクワクした顔をされた。や、許可してないわよ。ステイ、ステイ。

「な、な、撫で斬りってなに?」
「書籍などで聞いたことはありませんか? 端的に言うと、皆殺しのことですね」
「っ!?!?」
「え? マジ? 全員殺すの?」
「撫で斬りというのは、そういう意味ですね。ですが、そうすると新たな領主を選定するのに少々手間と時間が掛かりますからね」
「ぁ~……あれか。領主一族皆殺しの後釜に入るのは、そりゃ大変だわな」
「た、頼むっ!! 妻と子供達だけは勘弁してやってくれっ!!」
「ええ。わたしとしても、撫で斬りは気が進みませんので。屋敷が血の海になってしまいますからね」

 【戦慄、血塗られた屋敷に残る惨殺された領主一族の怨念っ!!】だとか、心霊スポットになりそうよねー? そんな場所、次に住む人が可哀想だわ。

「それに、今まで大した問題も無く土地を治めて、それなりに慕われていた領主一家を根絶やしにして、領民に要らぬ恨みを買うと面倒じゃないですか。なので、わざわざこうして、わたし達が手間暇掛けて、領主あなたにお話を聞いてあげているというワケです」
「おー、俺らってばかなり親切じゃね?」
「そうですね。ちなみにですが。ご自分の口から全てお話されるのであれば、夫人、お子さん達、無関係な使用人達の身の安全は保障しましょう。なんでしたら、夫人とお子さん達には外国に籍を用意してもいいですよ?」

 にこりと微笑むと、

「以上のことを踏まえた上で、賢明な判断をして頂けると嬉しいのですが」

 領主は絶望から希望を見出したような縋る表情で――――

「……お話を、させて頂きます。その代わり、妻と子供達には……」

 よっしゃ、陥落成功!

「ええ。無関係だと証明できれば、彼らの安全は保障します」
「ありがとう、ございます……」

 と、落ちた領主をあとはアストレイヤ様のところの文官に任せる。

 ちょい疲れたので、休憩がてらにお茶でも一服するとしますか。


――――――――――――



 戦闘侍女「ネロ様を悪魔呼ばわりするとはなんて不敬で罰当たりなっ!? よし、処しましょう」( º言º)

 ネロ(茜)「はいはい、ステイステイ」ヾ(・∀・`*)


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

『奇跡の王女』と呼ばないで

ルーシャオ
恋愛
サンレイ伯爵嫡子セレネは、婚約の話が持ち上がっている相手のジャンが他の伯爵令嬢と一緒にいるところを目撃して鬱々していた。そこで、気持ちを晴らすべく古馴染みのいる大兵営へと向かう。実家のような安心感、知人たちとおしゃべりしてリフレッシュできる……はずだったのだが、どうにもジャンは婚約の話を断るつもりだと耳にしてしまう。すると、古馴染みたちは自分たちにとっては『奇跡の王女』であるセレネのためにと怒り狂いはじめた。 元王女セレネが伯爵家に養子に出されたのは訳があって——。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

処理中です...