腐ったお姉ちゃん、【ヤンデレBLゲームの世界】で本気を出すことにした!

月白ヤトヒコ

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ほら? 蒼の弟分ってことは、おねーちゃんの舎弟も同然じゃない?

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「その、俺は……ネロ様の舎弟、なんですか?」

 少し困ったような顔があたしを見下ろす。

「そうですね……今回の視察団はアストレイヤ様より、わたしが全権を委ねられています。ということは、今回限りだと言え、同行している皆さんはわたしの指揮下に入ります。なので、一時的にではありますが。皆さん、わたしの部下という扱いになります。故に、わたしは同行者の身と安全を守る義務があるというワケです」

 胸を張って宣言すると、パチパチと控えめな拍手をするのはネロリン信者。

「部下、ですか……」

 なぜかグレンはしょんぼりした顔になる。部下扱いは嫌なのかしら? 全くもう、我儘なストーカー予備軍ショタねー?

「ええ。それに、グレンさんはシエロ兄上の大事な人ですからね。そのグレンさんを守るのは、シエロ兄上の兄弟として当然のことです」
『……年上として、か? ねーちゃん』
『ん~……年上って言うよりは、ほら? 蒼の弟分ってことは、おねーちゃんの舎弟も同然じゃない?』
『微妙に俺様ガキ大将の理屈! つか、マジで舎弟扱いだったのかよ』
『え? ショタとは言え、いつ裏切るか判らないストーカー予備軍を弟扱いするのはちょっと……』

 だって、粘着ストーカー近衛騎士になっちゃったら病み成分の高い無理矢理なバッドエンドルートだと、他の攻略対象に目を付けられたシエロたんを誘拐して監禁拘束した挙げ句、ヤバめなお薬を使って、意識朦朧とさせたシエロたんのいろんなお世話を喜んでする……だとか。もしくは、嫌がるシエロたんを殺して自分も一緒に死ぬから、正しく無理心中……しちゃうような奴だし。

 シエロたんが心中をお誘いするバージョンの方も、シエロたんに生きるよう説得しないで、どこか幸せそうな顔してあっさり一緒に死んじゃうしさ?

 シエロたんこと、蒼の生存最優先なおねーちゃんとしては、そんなグレンを信じ切るのは難しい。ライカみたく、健全育成計画! をしようにも、グレンは元々クソ親父ことレーゲンの派閥だし。

 現状では『シエロたん』の味方ではあるけど、蒼とあたしの味方かと聞かれると……ねぇ? 親がガッツリレーゲン派で、これからどう転ぶか判らない。

 諸々の事情を鑑みると、やっぱりグレンについては信用できないというのが先に来る。

 とは言え、現在お子様なショタを守るのは、中身はアラサーな大人として当然のことをしたまでよ! という感じ。 

『舎弟や部下扱いくらいが丁度いいんじゃないかしら?』
『裏切るかもしれない……のに、舎弟扱いはするのかよ?』
『まだ裏切ってはいないもの。無論、最大限に警戒はするし。裏切ったら切り捨てる気満々だけど、それはそれ。これはこれでしょ? 目の前で子供の危機を看過する程、おねーちゃんは腐ってないわ』
『別の意味では腐ってるけどなー?』
『ふふん、おねーちゃんは立派な腐女子だもの!』
『威張ることじゃないっての。全く……』

 やれやれと溜め息を吐く蒼。

「では、気持ちを切り替えましょう。これからやることは山積みです」
「ぁ~……そだな。で、なにからすんの?」
「そうですね。まずは領主とお話でもしましょうか」
「え? 証拠とか出て来てからのがよくね?」
「最初はそう思いましたけど、混乱している今のうちに訊問でもした方が色々喋ってくれそうかと。それに・・・」
「それに、なんだよ?」
「ふふっ、子供だと思って侮ってもらった方が、口を滑らせてくれるかもしれませんからね」
「相変わらず、腹黒い奴だな」
「お誉め頂き光栄です」

 それじゃあ、裏切り者の領主を追い詰めるとしますか♪

❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅

 結論から言うと、領主はやっぱり黒だった。

 身分を明かした蒼と二人、王子による直接訊問というていで(侍女という名の護衛付き。プラスオマケのグレン)お話を聞いてやったら――――

 いやぁ、女子供だと思って懐柔しようと喋る喋る。やー、この侍女さんアレよ? 視察団の侍女にあぶれたからって、護衛騎士達のトーナメントで勝ち抜いて付いて来ようとした猛者だかんね? おそらく、あたし達を襲おうなんて不穏な気配を見せた途端、処されるわよ?

 侍女長いるから大人しくしてるけど、領主がなんか喋る度、微かに戦闘侍女の身体が揺れんのよねー。ちょっと不穏だわ。

 なんて気にしつつ……話を聞く。

 見た目お子様だからって、侮り過ぎじゃない? ま、無論、こっそりと領主の発言の全てを記録させてるがな!

 あっはっは、この野郎……『国家転覆罪などなにかの間違いだ』と。自分はレーゲン国王陛下クソ親父に気に入られている重臣だとか抜かしやがる。意訳、『このようなことを仕出かしてただで済むと思っているのか? 子供の遊びではないのだぞ。直ちに解放して王子として謝罪すれば、このことは不問にしてやる』的なことをにこにこ気持ち悪い愛想笑いしながら蒼へ言いやがった。

 蒼はしら~っとした顔で聞き流してるけど、これ普通に脅しよね? なんならもう……理不尽断罪の代表格、お偉い人の気に入らない発言で罪を確定できる、不敬罪も加えちゃっていいかしら?

「ふふっ、貴重な証言をありがとうございます。では、選んで頂けますか?」

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