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わたしの舎弟怖がらせていいと思ってんのかっ? 蹴り潰すぞっ!?
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――――――――――――
さぁて、どんな不正の証拠を見付けてやろうかしら♪ と、ワクテカ気分で家探しをしていると――――なんとびっくりっ!?
廊下を歩いて来るのは、不正どころか売国奴の取引相手こと隣国王太子クラウディオ(仮)! 本丸のお出ましじゃありませんかっ!!
どうすべきかしら……? と思案していると、
「君達は……そのお仕着せからすると、この屋敷の者ではないと思うが? 第二王子の関係者というのは、君達のことだろうか?」
無駄に爽やかな好青年風の笑みを浮かべ、クラウディオ(仮)があたし達に話し掛けた。や、その胡散臭い爽やか笑顔を向ける前に、獲物見付けたぜ! 的なニヤリ顔見えてたから。
王太子……というか、まだ十代の若造(多分現在のあたしより十コは年上だろうけど)だけあって、少しわかり易いのかしら?
つか、ここの使用人のお仕着せが判るくらいここに通ってるってことね!
「あの……あなたは一体?」
と、あたし達を守るように前に出たのは警戒心剥き出しで鋭い目付きのグレン。ま、ガルガルしてはないけど、グレンも手配書見てるもんねー? そりゃ似顔絵の本人が声掛けて来たら警戒するっしょ。
「ああ、失礼。俺はディオ。隣国の者なのだが、ここの領主殿に取引を持ち掛けていてね。領主殿が用事で席を外してしまい、暇になったので少々散策をしていたんだ」
ほうほう……領主と取引、ね? はい、言質頂きましたっ!! もうこれ、状況証拠だけでほぼ黒確定じゃね?
「君達は、大人の話が退屈で抜け出して来たのかな?」
「屋敷内の探検です。王子殿下がこの屋敷に滞在するかもしれませんからね。王子殿下に危険が無いか、見回っているのです」
ふふんと胸を張って、答えておく。
「あ、ちょっ、ね……リー!」
「ほう、それは感心なことだね」
にこりと好青年風の笑みを深めるクラウディオ(仮)。や、だからにこりの前に、ニヤリが隠せてないんだってば。なに企んでるのかしら?
まさか、この野郎……第二王子ことシエロたんの誘拐でも企てていたりしないでしょうねっ?
幾らシエロたん(中身は蒼だけど)が儚げで透明感があって、天使のように可愛らしくも麗しい美貌の持ち主だからと言って! 拉致監禁は立派な犯罪よっ!!
「君達は第二王子と親しいのかな?」
うん? これは、好青年の好奇心だとか興味津々な振りをして、王宮の情報を抜き出そうとしてる、のかしら? シエロたんを利用しようと考えてる、とか?
どっちにしろ、碌なもんじゃないわね。
「あなたには関係無いことだと思いますが」
と、またまた警戒心剥き出しで答えるグレン。
「ふっ、そう警戒するな。お前達、よく見ると悪くない。存外観られる顔をしてるな? あと数年も経てば……」
ニヤリと邪な視線が舐めるように変装中のあたしとを蒼を観察する。イヤらしい視線だわ! この好色野郎め! それとも、色魔呼びの方がいいかしら?
「どうだ? 妾腹の第二王子など、なんの目も将来性も無い者に仕えるより、俺と一緒に来ないか? 家族がいるなら、家族ごとうちに引っ越して来い、みんなまとめて面倒を見てやろう」
おおう、なんて傲慢な俺様発言! ちなみに、現世(BLゲーム世界)のあたしの家族は、癇癪持ちのクソアマ実母と仕事しない実父の国王に、その尻拭いに奔走している義母のアストレイヤ様(養子縁組したからね!)に異母兄のライカとシエロたん(前世の実弟蒼)なんだけど?
普通に、隣国王太子如きに面倒見られる面子じゃないのが揃ってるわよ?
「シエロ様を侮辱するな!」
折角ガルガルを我慢していたのに、クラウディオ(仮)の言葉にキレちゃったグレンが噛み付く。
「ふっ、いい忠誠心だな。お前もなかなか悪くない。そっちは五、六年程待たねばならないだろうが。お前は二、三年後が楽しみだな?」
チラリとあたし達を一瞥したクラウディオ(仮)がグレンの顎を掴んで上を向かせる。
「どうだ? 俺のところへ来れば、思う存分可愛がってやるぞ?」
低い囁きに、グレンの顔が青ざめる。
美少年なり掛けのショタが怖がってるじゃない! つか、グレンは年より身体が大きめだけど、まだ十歳くらいだから、二、三年後もまだ十二、三歳よ!
「ギルティっ!! わたしの舎弟に手ぇ出すなっ、この犯罪者めっ!?」
と、クラウディオ(仮)の股間を思い切り蹴り上げる。
「~~~~~~っっ!?!?!?」
声にならない悲鳴を上げ、両手で股間を押さえ、蹲るクラウディオ(仮)。めっちゃぷるぷる……というか、ガクガク? 震えている。
ふっ、手加減無しなだけあって、なんだかとっても痛そうだわ!
前世女の子、現美ショタなあたしはまだ、あの痛みを経験したことないけど……
なんかこう、柔らかいモノが爪先でグシャっつった感触がした。
そして、靴がと~~っても汚れた気がする。なんかめっちゃ気持ち悪いわね……綺麗に洗って消毒しても、履きたくないかも。後でこの靴、プイしとかなきゃ!
「なにをするか貴様達っ!?」
血相を変えて怒声を上げたのは、クラウディオ(仮)の護衛のおじさま。あ、別のお付きの人がクラウディオ(仮)の背中を撫でて、腰を上からトントンしてあげてる。なんで腰トントンしてるのかしら?
「この方をどなただと思っているっ!!」
あたしを強く睨み、手を伸ばして来る護衛に向かって怒鳴り返す。
「ああん? 知るかっ!! 町に手前ぇらが犯罪者だって張り紙出てんだぞっ!」
実はどこの誰かの見当は付いてるし、その情報と手配書を回させたのはあたしだけどね!
「どこの誰ってのを、名乗れるもんなら名乗ってみやがれよ! 住所氏名年齢、なんでも喜んで訊いてやんよ!」
他国に不法侵入して、ちょっかい掛けてる王太子一行が名乗れるもんならな!
「わ、我らは……」
と、先程の怒声の勢いを無くす護衛。
「おら、グズグズしてねぇでさっさと名乗れよっ! こちとら、この国の第二王子一行だぞこらぁっ! 先にうちの第二王子を侮辱して、失礼ぶっ扱いたのはその野郎じゃねぇかよっ!! 挙げ句、わたしの舎弟怖がらせていいと思ってんのかっ? 蹴り潰すぞっ!?」
ダン! と一歩前に出ると、
ぼそりと怯えたような蒼の声がした。
「ま、まだやるというのかっ!?」
――――――――――――
蒼「ね、ねーちゃんがクラウディオのクラウディオを蹴り潰したっ!?」( º言º; )"
「滅茶苦茶痛そう……」(l|l =д=)
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