腐ったお姉ちゃん、【ヤンデレBLゲームの世界】で本気を出すことにした!

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
66 / 158

わたしの舎弟怖がらせていいと思ってんのかっ? 蹴り潰すぞっ!?

しおりを挟む



 視点変更。

――――――――――――


 さぁて、どんな不正の証拠を見付けてやろうかしら♪ と、ワクテカ気分で家探しをしていると――――なんとびっくりっ!?

 廊下を歩いて来るのは、不正どころか売国奴の取引相手こと隣国王太子クラウディオ(仮)! 本丸のお出ましじゃありませんかっ!!

 どうすべきかしら……? と思案していると、

「君達は……そのお仕着せからすると、この屋敷の者ではないと思うが? 第二王子の関係者というのは、君達のことだろうか?」

 無駄に爽やかな好青年風の笑みを浮かべ、クラウディオ(仮)があたし達に話し掛けた。や、その胡散臭い爽やか笑顔を向ける前に、獲物見付けたぜ! 的なニヤリ顔見えてたから。

 王太子……というか、まだ十代の若造(多分現在のあたしより十コは年上だろうけど)だけあって、少しわかり易いのかしら?

 つか、ここの使用人のお仕着せが判るくらいここに通ってるってことね!

「あの……あなたは一体?」

 と、あたし達を守るように前に出たのは警戒心剥き出しで鋭い目付きのグレン。ま、ガルガルしてはないけど、グレンも手配書見てるもんねー? そりゃ似顔絵の本人が声掛けて来たら警戒するっしょ。

「ああ、失礼。俺はディオ。隣国の者なのだが、ここの領主殿に取引を持ち掛けていてね。領主殿が用事で席を外してしまい、暇になったので少々散策をしていたんだ」

 ほうほう……領主と取引、ね? はい、言質頂きましたっ!! もうこれ、状況証拠だけでほぼ黒確定じゃね?

「君達は、大人の話が退屈で抜け出して来たのかな?」
「屋敷内の探検です。王子殿下がこの屋敷に滞在するかもしれませんからね。王子殿下に危険が無いか、見回っているのです」

 ふふんと胸を張って、答えておく。

「あ、ちょっ、ね……リー!」
「ほう、それは感心なことだね」

 にこりと好青年風の笑みを深めるクラウディオ(仮)。や、だからにこりの前に、ニヤリが隠せてないんだってば。なに企んでるのかしら?

 まさか、この野郎……第二王子ことシエロたんの誘拐でも企てていたりしないでしょうねっ?

 幾らシエロたん(中身は蒼だけど)が儚げで透明感があって、天使のように可愛らしくも麗しい美貌の持ち主だからと言って! 拉致監禁は立派な犯罪よっ!!

「君達は第二王子と親しいのかな?」

 うん? これは、好青年の好奇心だとか興味津々な振りをして、王宮の情報を抜き出そうとしてる、のかしら? シエロたんを利用しようと考えてる、とか?

 どっちにしろ、ろくなもんじゃないわね。

「あなたには関係無いことだと思いますが」

 と、またまた警戒心剥き出しで答えるグレン。

「ふっ、そう警戒するな。お前達、よく見ると悪くない。存外観られる顔をしてるな? あと数年も経てば……」

 ニヤリと邪な視線が舐めるように変装中のあたしとを蒼を観察する。イヤらしい視線だわ! この好色野郎め! それとも、色魔呼びの方がいいかしら?

「どうだ? 妾腹の第二王子など、なんの目も将来性も無い者に仕えるより、俺と一緒に来ないか? 家族がいるなら、家族ごとうちに引っ越して来い、みんなまとめて面倒を見てやろう」

 おおう、なんて傲慢な俺様発言! ちなみに、現世(BLゲーム世界)のあたしの家族は、癇癪持ちのクソアマ実母と仕事しない実父の国王に、その尻拭いに奔走している義母のアストレイヤ様(養子縁組したからね!)に異母兄のライカとシエロたん(前世の実弟蒼)なんだけど?

 普通に、隣国王太子如きに面倒見られる面子じゃないのが揃ってるわよ?

「シエロ様を侮辱するな!」

 折角ガルガルを我慢していたのに、クラウディオ(仮)の言葉にキレちゃったグレンが噛み付く。

「ふっ、いい忠誠心だな。お前もなかなか悪くない。そっちは五、六年程待たねばならないだろうが。お前は二、三年後が楽しみだな?」

 チラリとあたし達を一瞥したクラウディオ(仮)がグレンの顎を掴んで上を向かせる。

「どうだ? 俺のところへ来れば、思う存分可愛がってやるぞ?」

 低い囁きに、グレンの顔が青ざめる。

 美少年なり掛けのショタが怖がってるじゃない! つか、グレンは年より身体が大きめだけど、まだ十歳くらいだから、二、三年後もまだ十二、三歳よ!

「ギルティっ!! わたしの舎弟に手ぇ出すなっ、この犯罪者めっ!?」

 と、クラウディオ(仮)の股間を思い切り蹴り上げる。

「~~~~~~っっ!?!?!?」

 声にならない悲鳴を上げ、両手で股間を押さえ、蹲るクラウディオ(仮)。めっちゃぷるぷる……というか、ガクガク? 震えている。

 ふっ、手加減無しなだけあって、なんだかとっても痛そうだわ!

 前世女の子、現美ショタなあたしはまだ、あの痛みを経験したことないけど……

 なんかこう、柔らかいモノが爪先でグシャっつった感触がした。

 そして、靴がと~~っても汚れた気がする。なんかめっちゃ気持ち悪いわね……綺麗に洗って消毒しても、履きたくないかも。後でこの靴、プイしとかなきゃ!

「なにをするか貴様達っ!?」

 血相を変えて怒声を上げたのは、クラウディオ(仮)の護衛のおじさま。あ、別のお付きの人がクラウディオ(仮)の背中を撫でて、腰を上からトントンしてあげてる。なんで腰トントンしてるのかしら?

「この方をどなただと思っているっ!!」

 あたしを強く睨み、手を伸ばして来る護衛に向かって怒鳴り返す。

「ああん? 知るかっ!! 町に手前ぇらが犯罪者だって張り紙出てんだぞっ!」

 実はどこの誰かの見当は付いてるし、その情報と手配書を回させたのはあたしだけどね!

「どこの誰ってのを、名乗れるもんなら名乗ってみやがれよ! 住所氏名年齢、なんでも喜んで訊いてやんよ!」

 他国に不法侵入して、ちょっかい掛けてる王太子一行が名乗れるもんならな!

「わ、我らは……」

 と、先程の怒声の勢いを無くす護衛。

「おら、グズグズしてねぇでさっさと名乗れよっ! こちとら、この国の第二王子一行だぞこらぁっ! 先にうちの第二王子を侮辱して、失礼ぶっ扱いたのはその野郎じゃねぇかよっ!! 挙げ句、わたしの舎弟怖がらせていいと思ってんのかっ? 蹴り潰すぞっ!?」

 ダン! と一歩前に出ると、

 『や、もう 蹴った後だって、 ねーちゃん。 これ以上に 蹴り潰すのかよ?  死ぬぞ、 ソイツ……』

 ぼそりと怯えたような蒼の声がした。

「ま、まだやるというのかっ!?」




――――――――――――


 蒼「ね、ねーちゃんがクラウディオのクラウディオを蹴り潰したっ!?」( º言º; )"

 「滅茶苦茶痛そう……」(l|l =д=)

しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜

真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。 しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。 これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。 数年後に彼女が語る真実とは……? 前中後編の三部構成です。 ❇︎ざまぁはありません。 ❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。

罠に嵌められたのは一体誰?

チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。   誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。 そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。 しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

ウワサの重来者 どうか、心振るえる一生を。(中辛)

おいなり新九郎
ファンタジー
 最新情報:幼いサヤを背負い少女は炎と化け物の中を潜り抜ける。一途にこの娘を地獄から逃がすために。 ーあらすじー  侍の家に生まれたユウジは16歳の少年。  家族がいろいろあって、家を継ぐことに。  ある日、特別な力を与えてくれるという「宝」を引ける催しに参加する。  そこで、彼が引いてしまったハズレとしか思えない「宝」とは?  宝のせいなのか、問答無用にふりかかる災難。  個性豊かな、お宝美少女達に振り回され、ユウジは冒険を続ける。  そこには思わぬこの世界の因縁と謎があった。    作者より  タイトルにある「重来者」はリターナーと読みます。  途中、主人公交代を検討しております。  お一人でも多くの方が楽しんでくだされば幸いです。  理不尽な世の中で、どうか心振るえるひと時を・・・。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

処理中です...