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どういうことだっ!! なぜ、俺の手配書が回っているっ!!
しおりを挟む視点変更。
――――――――――――
少し時は遡って――――
似顔絵手配書作戦! が開始された翌日。
一体、なにがどうなっているんだ?
昨日までは、普通だった。
普通に町を歩くと、皆愛想良く接してくれていた。
この国の者達には、俺を裕福な外国人だと思わせていた。そして、それに疑いを抱く者はいなかった筈だ。
だというのに、今日は町を出歩くと少し遠巻きにされている気がする……というか、俺が視線を向けると町の者達が視線を逸らす。ひそひそとなにかを話す民草。
なんだというんだ?
もしかして、俺が隣国の……王太子だということがバレたのか?
故に遠巻きにされている? ……と、過ぎったのは一瞬。
隣国とは言え、王太子……王族に向けるにしては、民草共の視線に険しさが多分に含まれている気がする。
少しホテルから出ただけだが、今日は無性に居心地が悪い。
このあいだ逃がした、飛び切りの美貌の少年をまた部屋に呼ぶべく探していたというのに。
突き刺さるような視線が居た堪れない。
「仕方ない。部屋へ戻るか」
と、自分で例の美少年を探すのをやめ、部下に探すよう言い付けた。
あのときは、失敗だった。病を偽ると、親切な連中が医者を呼んでしまう。
ホテルの中だからと油断していた。邪魔をしたのがホテル従業員ならどうにか言い包められたものを。さすがに、子供……それも女児に「これからお楽しみだ。邪魔をするな、察しろ」というのは難しい。
あれ程強硬に医者を呼ぶと言う、やたら親切な子供でなければ小遣いをやって追い払うこともできたのだが……いや、このホテルに客として来るような家の子供は小遣いを欲しがらないか? いずれにしろ、迷惑なガキ共だった。
王太子である立場として。婚約者には、結婚するまで手は出せん。かと言って、他の女と遊ぶにはリスクが高い。男であれば、子ができる可能性は皆無だからな。
国許では、口の堅い部下や城の使用人達を相手にしていたが、そればかりでは少々飽きる。
折角、俺のことを誰も知らない……身分を明かさなければ、だが。土地へと来ているのだ。少しくらい羽目を外したくもなるだろう。
他の、男娼を生業としている者を呼ぶという手もありはするのだが……
どちらにせよ、邪魔をされたことにより、あの少年を……という欲求が高まった。そこらの女などより余程美しい顔を見た後では、他の者で間に合わせる気にはなれん。
少々苛々しながら部下の報告を待っていると――――
件の少年の情報どころか、信じられないことを聞かされた。
「どういうことだっ!! なぜ、俺の手配書が回っているっ!!」
なんでも、町の主要な場所……役所や警邏、人通りの多い場所の掲示板、大きな店などに、俺やこの国に付いて来た部下十数名程の手配書が貼り付けられていたとのこと。
一瞬、頭を過ぎったのは・・・国王が代替わりをし、国力が落ちたこの国の貴族を唆していることがバレたのか? ということだ。
戦争をせず、楽に領土を手に入れられる手段があるなら、やるだろ普通は!
無論、現状では貴族達を唆しているだけで、具体的なことは指示せず、迂遠にこの国の王族の権勢を削っている最中だ。
おそらく、俺の国がなにもしなくも、遠くないうちにこの国は内部からガタガタになって行く。それを少し早めて、我が国に利益があるように操作しているだけ。
バレる心配は無い……筈。それとも、腑抜けな国王に代わりこの国を支えようとしているあの王妃に知られてしまったか?
あの女は、馬鹿ではない。ただ、国王ではない。その分、腑抜けのやらかしで立腹している貴族共を相手に手一杯だった筈だが……?
いや、待てよ。確か子供がもう大きくなって来たからか? それで、あまり手が掛からなくなって多少は余裕が出たと言ったところか? それはそれで厄介なことだ。
この国は、腑抜け国王よりも女狐のような王妃を警戒しなくてはいけなかった。少々、羽目を外して遊んでいるうちに失念してしまっていたようだ。
どうすべきか・・・と、これからのことを考えていたら、
「た、大変ですクラウディオ様っ!?」
慌てた様子で部下が飛び込んで来た。
「なん、だと……?」
頭が真っ赤に染まる。
「で、ですから……我々は、子供を狙った人身売買組織の者だと疑われております!」
「なにがどうしてそうなっているというのだっ!? 誰が犯罪者かっ!!」
「はあ……殿下。なにも心当たりが無い、と。そう仰るのですか?」
横で聞いていた側近の一人が、険しい顔で俺を見据えて口を開く。
「わたしは何度もご忠告した筈ですが? 羽目を外すのも程々になさった方が宜しいですよ、と。報告には続きがある筈です。最後まで話しなさい」
この男は俺に厳しいことばかりを言う、少々煩わしい奴だ。しかし、かなり仕事のできる奴で頭も切れる。自分に都合の良いことしか周囲に置かぬのは、愚物だと教わって来たが・・・
「ハッ! 申し訳ございません。その……見目の良い美少年ばかりをホテルに連れ込んでいる外国人の男がいる、と。きっと性犯罪者に違いない。故に、近隣の警邏の者達も目を光らせているようです」
っ!!
「それで、クラウディオ王太子殿下。なにか心当たることはございませんか?」
「そ、それは……」
ホテルに少年達を連れ込んでいたここ数日の行動が、ここの住民共の間で悪いように広がっている、ということなのかっ!?
「仮にも、我が国の王太子が性犯罪者の疑惑を掛けられて似顔絵で指名手配犯の様相を呈しているとは。なんとも嘆かわしい」
「だ、誰がそんなことを広めたんだっ!?」
「そ、それが……ホテルに美少年が連れ込まれる様を見た、とある高位貴族夫人だとのことです。なんでも、その貴族夫人は子持ちだそうで。心配が高じて、町で見目の良い子供に声を掛けている怪しい人物達の似顔絵を描かせて警邏に持ち込んだとのことです」
「どこの貴族夫人だっ!? 今直ぐ探し出してやめさせろっ!!」
「匿名の貴族夫人だそうです」
「~~~っ!?」
「クラウディオ様。これ以上騒ぎが大きくなる前に、撤退なさるべきでは?」
「領主の屋敷へ行くっ!?」
――――――――――――
一部の方しか待っていないでしょうが、クラウディオ視点。(((*≧艸≦)ププッ
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