腐ったお姉ちゃん、【ヤンデレBLゲームの世界】で本気を出すことにした!

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
61 / 158

では――――次の報告書を、楽しみに待つとしよう。

しおりを挟む



 またまた視点変更。

――――――――――――


 ネロとシエロを視察に出してから、少しライカが落ち込んでいるようだ。

 ネロが言っていたのはこれか……と、そう思った。

 ライカは、ネロとシエロと仲良くすることにあまり積極的ではないと思っていたのだが・・・

 どうやら、ネロに振り回されるうちに仲良くなっていたようだ。

 それとも、毎日のように顔を合わせていた相手がいなくて寂しいだけなのだろうか? と、ライカの様子を微笑ましく伺っていられたのは、ネロ達が視察に出て二日目まで。

 三日目からは、毎日のように報告書が届くようになった。

 街道整備の申請。これはまだいい。

 というか、件の領地に着いてから視察するものとばかり思っていたぞ。なのに、向かう道のことから気に掛けるとは思わなかった。

 問題は、次に来た報告書。

 道すがらの町を視察し、孤児院、救貧院への予算が適正に使用されていないかもしれないという疑惑。次いで、施設で人身売買がなされているという疑惑。

 加えて、買った・・・という子供や女性達をライカ農園へと送り付けて来る辺りが、確信犯過ぎる。受け入れざるを得ない、事後承諾。そして、契約書という言い逃れのできない証拠付きと来た。

 早速、騎士団を向かわせる準備をしなくては。

 更には、道中で気になったという品々や食品が大量に届く。不随して、スカウトできそうな者達のリスト。

 留守番をしているライカへの土産だそうだが・・・そのお陰というか、そのせいでライカは寂しがるどころか忙しくしている。

 まあ、ライカも暫くはネロとシエロと一緒にいて、諸々鍛えられているので然程さほど問題は無さそうだが。一人で対処できないことが起これば報せろと言ってあるので大丈夫だろう。

 子供には見せられないような被害に遭った者などは回収済み。ライカ農園へは向かわせず、病院へ収容しているとのこと。回復すれば、進退を自身に決めさせよう。

 そして、人身売買に関わっている施設が複数あるというだけでも頭が痛いというのに・・・

 ある意味、それ以上の報せが飛び込んで来た。

 件の領地に、隣国の者……それも、町中に警備体制を敷く程の人物が滞在しているとのこと。領主に、隣国の息が掛かっている可能性が高まった、と。

 その報せが届いた数時間後には、滞在している隣国の者は王太子のクラウディオである可能性が高いという緊急の伝令。隣国の王族の訪問が知らされていないのであれば、正規に入国していない可能性あり。至急確認されたし。

 そういう報せは隣国から届いていない。

 不法入国か。もしくは隣国王族の影武者という可能性もあり。

 もし仮に、影武者だとしても……あの領主がクラウディオと繋がっている線が濃厚になって来たということか。

 それにしても、ことごとくネロの読み通りというのは・・・

 レーゲンのせいで揺らいだ国内基盤をどうにかしようとして、視野が狭くなっていた。こうまで隣国の介入を許してしまっていたとは、なんとも不甲斐ない。

 などと考えていたら、更なる報せが飛び込んで来た。

 クラウディオと思しき人物が見目麗しい少年を、ホテルに連れ込もうとしていたのでネロが阻止したとのこと。しかし、領へ到着する数日前に既にホテルに連れ込まれてしまった少年がいるらしい。

 隣国王太子には、確か婚約者がいた筈だが……実は男色家だったのか? 自国で噂になると困るから、我が国でこっそり羽目を外しているのか? なんとも迷惑な。

 嫌な気分で、報告書に目を落とす。

 ネロが保護した少年を、保護者と共に王都へ向かわせたので対応願う。件の少年の両親は商人であり、正妃宮に食料を卸していた商人との繋がりがあると思われる。少年の保護ついでに、情報を聞き出すといいでしょう。

 そして、ネロ様が隣国の王族追い出し作戦を開始しました。

 と、書かれていたのは・・・

 クラウディオと思しき人物とその護衛、美少年をホテルに連れ込むのに関与したと思われる人物達の似顔絵を描き、子供の誘拐、及び人身売買疑惑のある人物として周辺の警備隊にばら撒くのだとか。更に、周辺諸国の国境警備隊にも配る、と。そう記されていた。

「正気かっ?」

 隣国からクレームが来たら……と考えるも、正規に入国していない上、他所の国で悪いことする奴が悪い。偶々、顔の似た犯罪者がいただけ。むしろ、『王族と似た容姿の犯罪者は即刻引っ捕らえるべきでは? 我が国が、総力を挙げて犯罪者の捕縛に協力します』と言っておけばいい、ということまで書かれていた。

 確かに。これならば、痛い腹を探られては堪らんとこちらへ強くは言って来れなくなくだろう。

 更には、向こうの護衛なども総入れ替えでクラウディオ(仮)の方も年単位で身動きが取れなくなる筈。

 ネロは、なんとも愉快なことを考えるものだ。

 クラウディオの面子は丸潰れだな。

 もしかするとこれは――――下手をすると、クラウディオが王太子から降ろされる可能性も出て来たな?

 暫くは、継承権争いで隣国が荒れるかもしれん。

 まあ、我が国に変なちょっかいを出す暇も無くなることだろう。

 しかし、隣国の者も、まさかこうも鮮やかに自分達を撃退したのがまだたった七つの子供だとは思うまい。更には、とんでもない屈辱付きでな?

 この作戦で一番とんでもないのは・・・他国の諜報活動をしてる者と事を構えて、なんら被害を出していないというところかもしれんな。

 面子やプライドに傷を付け、屈辱を与えた上、諜報活動へ長期に渡って打撃を与えているというのに、掛かったのは少しの費用と人員のみ。

 基本的に諜報活動は血腥いものだと思っていたのだが、死傷者が一切出ていないことが至極素晴らしい!

 それにしても、わたしとライカの敵を潰すと豪語していたが……

 レーゲン派の貴族を通り越して隣国の王族を、ある意味叩き潰しているのがなんとも凄い。

 ネロはやはり、とんでもない子供だな?

 つくづく、敵に回さなくてよかったと思うぞ。

 さぁて、こちらもこちらでやることが増えた。

 ライカも忙しくしているようだし、暫くは放っておいて構わんだろう。

 では――――次の報告書を、楽しみに待つとしよう。

❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜

真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。 しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。 これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。 数年後に彼女が語る真実とは……? 前中後編の三部構成です。 ❇︎ざまぁはありません。 ❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。

罠に嵌められたのは一体誰?

チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。   誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。 そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。 しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。

彼女は予想の斜め上を行く

ケポリ星人
ファンタジー
仕事人間な女性医師、結城 慶は自宅で患者のカルテを書いている途中、疲れて寝ってしまう。 彼女が次に目を覚ますと、そこは…… 現代医学の申し子がいきなり剣と魔法の世界に! ゲーム?ファンタジー?なにそれ美味しいの?な彼女は、果たして異世界で無事生き抜くことが出来るのか?! 「Oh……マホーデスカナルホドネ……」 〈筆者より、以下若干のネタバレ注意〉 魔法あり、ドラゴンあり、冒険あり、恋愛あり、妖精あり、頭脳戦あり、シリアスあり、コメディーあり、ほのぼのあり。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

ウワサの重来者 どうか、心振るえる一生を。(中辛)

おいなり新九郎
ファンタジー
 最新情報:幼いサヤを背負い少女は炎と化け物の中を潜り抜ける。一途にこの娘を地獄から逃がすために。 ーあらすじー  侍の家に生まれたユウジは16歳の少年。  家族がいろいろあって、家を継ぐことに。  ある日、特別な力を与えてくれるという「宝」を引ける催しに参加する。  そこで、彼が引いてしまったハズレとしか思えない「宝」とは?  宝のせいなのか、問答無用にふりかかる災難。  個性豊かな、お宝美少女達に振り回され、ユウジは冒険を続ける。  そこには思わぬこの世界の因縁と謎があった。    作者より  タイトルにある「重来者」はリターナーと読みます。  途中、主人公交代を検討しております。  お一人でも多くの方が楽しんでくだされば幸いです。  理不尽な世の中で、どうか心振るえるひと時を・・・。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

処理中です...