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絶対厭だっ!! とんだクソ職場だなっ!
しおりを挟む翌日。
爽やかに目覚め、高級ホテルの美味しい朝食を食べて――――
昨日のように変装完了!
茶髪のカツラに、そばかすを描いても可愛い末っ子レイシーちゃん&もっさり次男のシェンたん参上♪ついでに、心配性な長男グレイン君もね!
「さあ、行きましょう!」
「あ? 今日はどこ行くん?」
「そうねー。今日は、この領地の牧場なんかを見学かしら。ちょ~っと、護衛のおじさま方の人数が減ってるから、人の多い場所は避けようかと思って」
「成る程……昨日の、似顔絵手配書作戦か……」
と、どこか浮かない顔をする蒼。
「どしたの?」
「や……ふと思ったんだが……」
「なにを?」
『隣国の連中が、もしなにもしてなかったら? ってさ。もし、本当に、偶々ここにお忍び旅行で来てたら? ちょっと、あの似顔絵で指名手配すんのはやり過ぎじゃね? 巻き込まれた護衛連中とか可哀想くね?』
真剣な水色の瞳があたしを見据える。
『ふっ、甘いわね。いい? 蒼。もし仮に、隣国王太子が完璧にプライベートのお忍び旅行だったとして、よ』
『おう』
『奴が、うちの国の幼気な美少年をホテルに連れ込んで毒牙に掛けたことは間違いないのよ! この時点で既にギルティ!』
『そ、そうだったっ!?』
『それにね、護衛や側近が奴の行動を把握していないなんてことあり得る?』
『それは……どうなんだ?』
蒼はう~んと首を捻る。
『知らないなら知らないで普通に問題だし。もし知っていたんなら、奴の行動を諫めなかった大人達もどうかしてんでしょ。むしろ、奴の為に美少年を調達でもしてたら、言い逃れできないくらいの同罪よ』
『ああ、うん。そうだな……』
『まあ、奴がとんだパワハラ野郎で、周囲の大人達も逆らうことができなくて泣く泣く従ったんだとして、よ? そんな奴から離れられるなら、それはそれでいいことなんじゃないの?』
『あ、そういう考え方もあるか……』
『そういうこと。だから、アンタが心痛める必要なんてないの』
『わかった』
ほっとしたような表情に、あたしの方もほっとする。
悪いのは、性欲を抑えられないクラウディオだ。巻き込まれた人は少し可哀想だけど。でも、クラウディオの側近や護衛をしているんだから、クラウディオを諫められない周囲だって悪い。
『クラウディオやその父親の国王がよっぽど酷い暴君じゃない限りは、なにもしていない人の首ちょんぱなんて普通はしないでしょ。せいぜいが左遷くらいなものじゃないかしら?』
『左遷……どっかに飛ばされるってことか?』
『ま、王太子の側近や近衛からはね。そして出世コースから外れるって程度でしょ』
おそらくは、数十名単位で、ではあるけど。多分優秀であろう人材を数十名単位で飛ばすとなると、やっぱり色々と大変なことになるだろう。
ま、年単位で大人しくなる……というか、大人しくせざるを得なくなるって感じかしら? 権力者って、下で支えてくれる人がいないと満足に身動きができないし。気心の知れた人を左遷するとなると人間関係も一から構築しなきゃだし。
ツーカーだった人達がまるっといなくなると、かなり大変かもしれないわねー。
『それはそれで、ちょっと申し訳ないような気もするが……』
『じゃあ、聞くけど。ノーマルな男として、両刀な上司を護衛したい? しかも、その上司は美少年をホテルに連れ込むような奴。なんなら、その片棒担がされるような職場。下手したら、自分も手を出されるかもしれない可能性あり』
『絶対厭だっ!! とんだクソ職場だなっ!』
『でしょ? お金さえ貰えればなんでもするって人や、権威の前なら靴でも舐めますって人、もしくは……そっち系の気がある人でもない限りは、普通に良心が痛んだりするんじゃない?』
『わかった、ねーちゃん。普通のおっさん達を、あのクソ野郎から解放してやろうぜ!』
と、美少年を魔の手から守りたいあたしとは少し違うベクトルで、蒼もうちの国からクラウディオを撤退させる作戦に乗り気になった。
ふっ、あたしの前で――――異端審問官になる前の清らかでマジ天使かっ!? なアーリーたんに手を出したことが運の尽きというものよっ!
覚悟しておくことねっ、クラウディオっ!!
な~んて、決意したものの・・・ぶっちゃけ、お子様にできることなんてないのよねー。方針決めて、後はアストレイヤ様の部下やネロリン信者に丸投げだ。
というワケで、午前中は牧場で遊び回ったぜっ☆
牛を追う牧羊犬を、更にあたしと蒼で追い回した。その後ろを、困ったような顔でグレンが追い掛けていた。わんこ賢い。
そして、乳搾りは案外大変。ついでに、搾りたて牛乳は衛生的な問題で飲めなかった。ちょっと残念。でも、美味しい牛乳を使って作ったチーズは美味しかった。
無論、買いね! お土産にしよっと♪
と、走り回って腹ごなしをして、あれこれ美味しそうなものを食べてちょっと休憩していたら――――
「お嬢様。手配書が上がりました。ひとまずは、昨日の王族の顔を含めて十五名分程」
おじさま執事にひそひそと告げられた。
「仕事が早いですね。もっと時間が掛かるかと思っていました」
――――――――――――
茜「クラウディオの下で働きたいと思う?」(´・ω・`)?
蒼「絶対厭だっ!! とんだクソ職場だなっ!」(ノ`Д´)ノ彡┻━┻
茜「でしょ?」(*´・д`)-д-)))
蒼「ねーちゃん。普通のおっさん達を、あのクソ野郎から解放してやろうぜ!」( ・`д・´)
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