腐ったお姉ちゃん、【ヤンデレBLゲームの世界】で本気を出すことにした!

月白ヤトヒコ

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おそらくは攻略対象のうちの一人。隣国の、両刀鬼畜俺様国王。

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「あの、ネロ様?」
「はい、なんですか? グレンさん」
「なぜ、彼を王都へ?」
「ああ……グレンさんには知らせていませんでしたが、実は先程アーリーさんが部屋へ連れて行こうとしていた男性なのですが。隣国の王族かもしれないことが判明しました」
「へ? 隣国の、王族……ですか?」
「ええ。隣国へ行ったことのある騎士が、彼の顔に見覚えがあるそうです。なので、彼がアーリーさんに接触していた理由諸々を調査しようかと。隣国の王族が絡むとなると厄介ですからね。彼ら一家を保護する目的もあり、王都へ向かってもらうことにしました」
「そういうことでしたか」
「ええ」

 と、グレンは納得したようだけど・・・

『おい、アレが隣国の王族ってどういうことだよ?』

 蒼が低い声であたしに詰め寄る。

『ああ、アレね』

 『さっきのが クラウディオよ』

 潜めた声で告げると、

『は? ……マジかっ!?』

 ぽかんとした顔に、一気に嫌悪が広がった。

『マジかも。ま、影武者の疑いもあるけど。おそらくは攻略対象のうちの一人。隣国の、両刀鬼畜俺様国王。今はまだ王太子だけどね』
『な、な、なんだって男なんかを部屋にっ!?』
『両刀だからじゃない?』
『ひっ……』

 と、怯えた顔をする蒼。

『ま、BLゲームの世界だってこともあるけど。女の子と致したら、子供ができちゃう可能性があるじゃない。その点、同性同士なら子供はできないでしょ?』

 BLや百合作品には色々あって、愛があれば同性同士でも自然に子供が授かれちゃうファンタジーな世界があったりもする。でも、【愛シエ】の世界にはそんな設定は無かった。

『両刀なら、性欲解消には同性の方が色々と便利なんじゃないの? ほら、一応仮にも奴は王太子だし? 婚約者も決まってるのに、婚前に別の人との子供ができちゃうのはかなりヤバいでしょ』
『はあっ!? あの野郎、婚約者いるクセになにしてんだよっ!!』
『ホント、それな? マジでクソよねー』
『……って、あれ? ねーちゃん』

 ふっ、と蒼が怪訝そうな顔をした。

『ん? なぁに?』
『もしかして、奴のこと嫌いだったりする?』
『ああ、うん……ほら? お姉ちゃん、愛の激重いヤンデレは大好物! なんだけどね……所詮両刀の野郎は、女の子と浮気した挙げ句、やっぱり男より女の子の方がいいだとかクソ最低なこと言い出して、結局最後には同性の恋人を捨てるのよっ!! 許すまじっ!! 浮気野郎は爆散しやがれっ!!』
『え? なんかそれ、色々とねーちゃんの偏見入ってね?』
『ま、若干の異論は認める。でも、割とリアルな事実だったりするのよねー?』

 両刀……所謂バイな人は、男女どっちもイケるからこそ、LGBTQAの人達にはちょいウケが悪かったりするらしい。都合が悪くなったら、自分に都合のいい性別の恋人を選ぶというような人もいるそうで。普通に一途な人もいるだろうけど……

『ほら? 同性同士だと子供ができないだとか言っちゃってさ? そのこと込みの承知の上で付き合ったり事実婚状態で一緒に暮らしたり、同性婚の証明書発行したんじゃないんかいっ!? 的な?』
『うっわ……なんかこう、世知辛いな……』
『まあ、やっぱり……色々と、愛情だけじゃ越えられなくて、どうにもならない壁みたいなのがあるのよ。だからこそ、遊びや浮気なんて最低じゃない。お姉ちゃんは、一途なヤンデレを愛しているのです! ちなみに、両刀は両刀でも異性の恋人とキッチリスッパリ綺麗にお別れして、最後にはちゃんと同性の恋人を選んで溺愛するスパダリならOKよ♪』
『や、別にねーちゃんのヤンデレスキーはどうでもいい。けど、どうすんの?』
『どうもこうもないわよ。奴がここにいるってことは、隣国がうちの国にちょっかい掛けてるって可能性が高くなったってことよ』
『マジかっ!?』
『残念なことに、マジねー。とは言え、やることは変わらないわ。あたしはここに、アストレイヤ様とライカの敵を潰しに来たんだもの』
『隣国の王太子潰す気満々っ!?』
『ふっ……さすがに隣国の王族を潰すとまでは行かずとも、必ず大ダメージは食らわせてやるわ』
『ねーちゃんが頼もし過ぎてなんかコワっ!?』

 ぼそぼそやり取りをしていると・・・

「あの、シエロ様とネロ様は一体なんのお話をされているのですか?」
「ああ、今後の方針などを少々」
「どうされるおつもりでしょうか? ネロ様」

 と、真剣な表情で質問するおじさま執事。

「そうですね……では、網を張りましょうか。似顔絵が得意な人はいますか? 数名程いると一人当たりの負担が減ると思うのですが」

 『ぅっわ、邪悪なニヤリ顔……』

「あの、ネロ様?」
「はい、なんでしょうか?」
「なぜ、似顔絵を?」
「ふふっ……言ったでしょう? 網を張るのですよ。人員が少なくても、できることはあります」
「なにをする気なんですか?」


――――――――――――


 茜「あたしはここに、アストレイヤ様とライカの敵を潰しに来たんだもの」(ΦωΦ)

 蒼「隣国の王太子潰す気満々っ!?」Σ(O_O;)

 茜「ふっ……さすがに隣国の王族を潰すとまでは行かずとも、必ず大ダメージは食らわせてやるわ」( -`ω-)✧

 蒼「ねーちゃんが頼もし過ぎてなんかコワっ!?」Σ(`д´/;)/

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