腐ったお姉ちゃん、【ヤンデレBLゲームの世界】で本気を出すことにした!

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
48 / 158

散々人の警戒心煽っといて遊ぶのかよっ!!

しおりを挟む



「ふむ……」
「どうかしたん?」

 町に繰り出し、ケーキ屋さんへ行ったり屋台を冷やかして、買い食いやら雑貨屋さんを巡ってお土産を購入し、あちこち楽しみながら見ていて――――

『ねぇ、気付いた?』

 小さく蒼に問い掛けると、

『あん? なににだよ?』

 胡乱げな返し。

『多分、誰か・・いる』
『は? 誰かってなんだよ?』
『誰かは知らないけど、多分どこぞのお偉いさんがこの町に来てると思う』
『……それ、まさに俺らじゃねーの?』
『ううん。違う。というか、こっちは視察目的だし。ぶっちゃけ、護衛は少数精鋭で少ないのよ。でも、町中に、あたし達の護衛とは違う……訓練を受けたような人達が点在している気がする』

 そう。服装は町人風だけど、お城に駐在している衛兵のような……人達が、ちらほら歩いている。

『マジで?』

 クソアマがいつ癇癪起こすかって、ピリピリしていた使用人達をずっと見て来たからかしら? 平静を装いながらも、どこか警戒している人を見分けるの、割と鼻が利くのよねー。

『うん。ちょっと聞いてみる』

 と、アストレイヤ様の付けてくれた手先である執事のおじさまにちょいちょいと手招きして屈んでもらう。

誰か・・、いますよね? この町」

 そう聞くと、微妙そうな顔で頷かれた。

「はい。おそらくは、護衛の必要などこかの組織の重鎮がお忍びで来ている可能性が高いと思われます」
「それが誰だか、知っていたりします?」
「いいえ。申し訳ありませんが、わたくし共も把握しておりません」

 という、返答。若干の警戒が含まれることから、多分本当に知らないのかもしれない。こちらが把握できていない人物の、予定に無いお忍び。

 ま、こっちも某要人のことは言えないけどね?

『なんだって?』
『どこの誰かは不明。でも、多分どこぞのお偉いさんがいることは確実みたい』
『マジかよ……』
『うん。そして、おそらくはあたし達の味方じゃない可能性の方が高い』
『ぁ~……だよなぁ。つか、元々味方のが少ないからしゃーねぇわな』
『まさにそれね。というワケで、警戒が必要よ』
『わかった。グレンには言うん?』
『ん~……どうしようかしら? 一応、あたし達側に付くという話ではあるけど。まだ子供だし。特になにかができるワケでもないもの。あたし的に、ストーカー予備軍ショタは利敵行為をしなければ、こっち側にいてもいいっていうスタンスなのよねー?』

 このストーカー予備軍ショタが、完全にあたし達側に身を置くという断言はできないし。家族のしがらみやらなにやらで、やっぱりクソ親父ことレーゲンの方を裏切れない……ということだってある。その場合、グレンを積極的に排除や始末! ということはしないとしても。段々とフェードアウトさせて、重要なことはなに一つ教えないつもりだ。

 なるべくなら子供に非道なことはしたくないので、せいぜいニセ情報をリークさせる為の要員として使うくらいしか、思い浮かばない。

『ねーちゃん、なにげに辛辣なのな』
『だって、子供ってすぐに意見がころころ変わるものでしょ? 親や周囲の環境だって、自分で決められるワケじゃないもの』

 それに、むしろBLを拒否っている蒼には、攻略対象であり、レーゲンの手先でもあるストーカー予備軍ショタは、仮想敵なことを判っているのかしら?

『そりゃそうだけど。でもさ、ねーちゃん』
『つか、アンタ判ってんの?』
『なにがだよ?』
『あたし達の情報をクソ親父側へ流す行為は無論アウト。スパイ行為禁止。シエロたんとクソ親父との仲を取り持とうとするのもアウト。ま、アンタがBL的な意味で仲良くしたいってなら、別だけどね?』
『誰が仲良くするかっ!』

 心底厭そうに吐き捨てる蒼。

『アンタを連れ去るのもアウト。無論。騙されてやった、子供だから、という言い訳は通らないわ』
『俺が、怪しい輩にほいほい付いてくワケねーだろ』

 ギロリと不機嫌に見返す水色の瞳。

『子供同士の体格差だって、甘く見ちゃいけないのよ? 小さいうちは、一つ二つの差でも大きいものよ。それに、顔見知りの場合は? アンタの乳母だってクソ親父サイドじゃない。寝てる間にどこぞに運ばれていた、っていう誘拐だってあるのよ? 気を許している相手に誘拐されるって、結構多いパターンなのよ? 子供の連れ去りで一番多いのは、事情があって離れて暮らしている側の親や、その親族だったってオチなんだから』
『うっ……そ、それは』
『ま、その辺りの外的要因は幾ら自分が気を付けていてもどうしようもないことだってあるから、追々対策を考えるとして。とりあえずのところは……』
『とりあえず、なんだよ?』
『ちょっと警戒しつつ、普通に満喫しましょう♪』
『は? や、散々人の警戒心煽っといて遊ぶのかよっ!!』
『あら、警戒心を忘れたまま遊んで、気付いたらヤバい状況に陥っててどうしよう大ピーンチっ!? ってのがよかったかしら?』
『そうじゃなくてさ!』
『いずれにしても、視察することは決定だし。下手にこっちが警戒心剥き出し状態で行動しようものなら、お忍びの意味が無いじゃない。適度な緊張感を持ちつつ、この領地の人や、ここに来ているであろうどこぞのお偉いさんに怪しまれないよう、あちこちを探るって感じかしら?』
『……わかった』
『わかれば宜しい』

 と、そんなことをひそひそ話していると、

「ご相談は終わりましたか?」

 おじさま執事の質問。

 どうやら、あたし達の方針が決まるのを待っていてくれたらしい。

「ええ。このまま予定通りにあちこち見て回りましょう。下手に警戒して、向こうの方に悟られるのも悪手だと思うので。では、まずは高級レストランにでも向かいましょうか」
「了解致しました」
「え? まだ食う気なん? しかも、高級なとこ?」

しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

『奇跡の王女』と呼ばないで

ルーシャオ
恋愛
サンレイ伯爵嫡子セレネは、婚約の話が持ち上がっている相手のジャンが他の伯爵令嬢と一緒にいるところを目撃して鬱々していた。そこで、気持ちを晴らすべく古馴染みのいる大兵営へと向かう。実家のような安心感、知人たちとおしゃべりしてリフレッシュできる……はずだったのだが、どうにもジャンは婚約の話を断るつもりだと耳にしてしまう。すると、古馴染みたちは自分たちにとっては『奇跡の王女』であるセレネのためにと怒り狂いはじめた。 元王女セレネが伯爵家に養子に出されたのは訳があって——。

老舗カフェ「R」〜モノクロの料理が色づくまで〜

yolu
ファンタジー
café Rの『if』ストーリー─── 現代は、エルフが治める『フィールヴ』という異世界と繋がって40年になる。 今はエルフと人が、少なからず行き来をし、お互いの世界で会社を立ち上げ、共存共栄している。 莉子が一人で切り盛りする、老舗カフェ「R」にも、エルフの来店が増えてきたこの頃。 なんと、 エルフの製薬会社・ラハ製薬によって立退き勧告! 4週間後には店を畳んで出ていかなくてはならない状況に……! そこで立ち上がったのは、常連になると決めたイリオ製薬に勤めるエルフ4人。 イリオ製薬社長のトゥーマ、通訳である人間とエルフのハーフ・アキラ、彼の上司に当たるトップ営業マンのケレヴ、そしてケレヴの同僚の調剤師・イウォールだ。 カフェの料理によって、古典的エルフと言われるほどのイウォールが、莉子に一目惚れ! イウォールの猛烈アタックに振り回されながらも、『異文化コミュニケーション』を重ねながら、美味しい料理はもちろん、恋愛も挟みつつ、この危機を乗り越えていきます!

処理中です...