47 / 158
で、女装と男装どっちにします?
しおりを挟む「さて、まずは観光と行きますか♪でも、その前に……」
「その前に? なんだ、ネロ」
「変装してあちこち回りましょう!」
「え? ネロ様?」
「ぁ~……ま、変装は妥当かもな。登城できる奴がいたら、俺らの特徴からすぐに身バレしそうだし」
「で、女装と男装どっちにします?」
納得したように頷く蒼に質問をすると、
「は? 俺が女装するワケねぇだろっ!」
即行拒否された。
「ネロ様? なにか言いましたか?」
「いいえ? なんでもありませんよ? では、グレンさんが女装します?」
「な、なんでそうなるんですかっ!? 第一、俺は見習いとはいえ護衛ですよ! 動き難い格好なんてできません!」
「そうですか? スカートって、意外に小物を隠せる場所が多いと思いますよ?」
スカートの中なんて、確認しようとする奴は普通に通報案件だし。女スパイだとか、どこぞのセクシー女泥棒だとかが、服の下に色々隠し捲ってるし。
「え? ね、ネロ様? その言い方だと、まるで……」
「ああ、実はわたし。偶にネリーと入れ替わって遊んでいるので」
「な、それ、言っていいやつ?」
「え? シエロ様? もしかして、シエロ様も知っていたんですかっ!?」
「んあ? まあな」
知っていたもなにも、元々ネロたんとネリーちゃんは同一人物ですからねっ☆
「ふふっ、内緒ですよ? グレンお兄様♪」
しーと人差し指を立ててあざとく上目使いで見上げると、
「ね、ネレイシア様っ!?」
顔を真っ赤にして慌てるグレン。
「いえ、ネロです」
「おい、あんまからかってやるなって。で、女装すんの?」
「まぁ、同性同士で回るより、男女でなら色々なところへ行っても不自然ではないですからね。男の子のワガママ、そして女の子のワガママをフルに活用しましょう」
「わかった」
「では、わたしは女装して来ます。シエロ兄上とグレンさんも変装をお願いしますね」
「へ? 俺もですか?」
「ええ。商家の子供という設定で、グレンさんが長男。シエロ兄上が次男。わたしが末っ子の妹ということにしておきましょうか。シエロ兄上の髪色は目立ちますからね」
「確かになー。若白髪って言い張るには若過ぎるしなぁ」
思案げに前髪を摘む蒼に、
「シエロ様は綺麗な銀髪ですよっ! それに、若いもなにもまだ子供でしょうに!」
ツッコミを入れるグレン。
「というワケで、よくいる茶髪辺りのカツラを被ってください。お揃いの髪色にすれば、それなりに兄妹に見える筈です」
「やー、顔の系統違い過ぎて兄妹には見えなくね?」
「その辺りをつっこまれたら、素直に『全員母親が違うので』……と、悲しげな顔で言いましょう。普通の人なら、それ以上のことは遠慮して聞くのをやめる筈です」
「ま、間違ってはねぇな」
「では、また後程」
と、蒼とグレンと分かれ、別の……ネリーちゃんの荷物を積んである馬車に侍女と一緒に乗り込み――――商家のお嬢さん風のワンピースに着替えた。
「おー、バッチリ女装だな」
「ネレイシア様……とも、また違う感じですね」
先に着替え終わって、茶髪のカツラを被っていた二人があたしを見やる。
「ふふっ、お待たせしました」
「髪どうしたん?」
「ああ、付け毛の付いた帽子の中に突っ込んであります」
ネロたんの潤艶ロングなサラサラ黒髪(ネロたんのときは首の後ろで一つ括り)は、まとめて帽子の中に入れて、茶髪の付け毛を帽子から垂らしている。パッと見、茶髪ロングで帽子を被った美幼女にしか見えないことだろう。
「あれ? そばかすが……」
と、不思議そうにあたしを見下ろすグレン。
「ああ、変装ですからね。お化粧です」
ふっ、こんなものでネリーちゃんの美貌は全く翳らないけどね!
「お、いいなそれ。俺も描いてみるか」
「いいよ。それじゃあ……」
「ネロ様、どうぞ」
と、侍女の差し出した眉墨用のペンシルでちょんちょんとシエロたんの柔らかツヤツヤ卵肌にそばかすを散らす。
「ついでに、眉も染めようか?」
「おう、頼む」
銀色の眉毛に茶色を乗せる。ああ、勿体無い。でも……
「更に、野暮ったい黒縁眼鏡でも掛ければ……」
「どうぞ、お使いくださいシエロ様」
「ああ、ありがとな」
侍女の差し出した変装用黒縁伊達眼鏡を掛けるシエロたん。
「どうだ?」
「うん。良い感じにもっさりしたわねー」
これぞ、リアル『眼鏡を取ると美形キャラ』ね! ここまでしないと、シエロたんの愛らしさは隠せないということだ。無論、どんなに隠して変装していたって、あたしくらいになると、絶対にシエロたんを見破る自信があるけどね! 推し愛の力とかで!
「も、もっさり……って、ネロ様?」
「なぁに? グレンお兄様」
「や、やっぱりネレイシア様ですかっ!?」
「いえ、ネロですけど。念の為呼び名を変えましょう。わたしのことは……レイシーにでもしておきましょうか」
「真ん中取った感じか」
「別にリーとか、シアでもいいけどね? シエロ兄上は?」
「んじゃ、適当にシェンで。グレンは?」
「え? 俺、ですか?」
「まあ、決め難いならそのままか、いっそ名前を呼ばないでお兄様呼びで通すという手もありますけどね」
「し、シエロ様が決めてください!」
「別にいいけどよ。んじゃ、グレインな」
「おお、一文字入れるだけでなんか違う雰囲気になったわねー」
「適当な感じでいいだろ。な、グレイン」
「え? あ、はい。なんでしょう? シエロ様」
「お前、その呼び方と喋り方なんとかしろ」
「あ……す、すみません。シェン様?」
「だから、そこは呼び捨てにすべきだろうが? 兄貴よ」
「あ、兄貴……ですか」
「これは……わたしもシエロ兄上に倣って、グレイン兄貴っ! に、しとくべき?」
舎弟が兄貴を呼ぶ感じのノリとイントネーションで。
「それはやめてくださいっ!」
なぜか嫌がるグレン。
「え~、それじゃあ、グレイン兄さん、シェン兄さん辺り?」
「ネロの兄貴呼びか、それはそれで面白そうなんだけどなぁ」
「ねー?」
「ネロ様には似合いませんから!」
「そこは、ネロじゃなくてレイシーだろ」
「あ……そ、そうでしたね。シェン……と、レイシー……シェンとレイシー」
と、ぎこちないグレンを長男役。そして伸び伸びとしたシエロたんこと蒼を次男。末っ子妹をあたしとして、領地視察を開始!
♩*。♫.°♪*。♬꙳♩*。♫
ネロ(茜)「グレイン兄貴ィ!」(Ψ°∀°)Ψグヘヘ
グレン「や、やめてください! ネロ様には似合いませんからっ!?」( ̄□ ̄;)!!
シエロ(蒼)「面白いのに。なー?」(*`艸´)
ネロ(茜)「ねー?」ꉂ(ˊᗜˋ*)
11
お気に入りに追加
112
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
『奇跡の王女』と呼ばないで
ルーシャオ
恋愛
サンレイ伯爵嫡子セレネは、婚約の話が持ち上がっている相手のジャンが他の伯爵令嬢と一緒にいるところを目撃して鬱々していた。そこで、気持ちを晴らすべく古馴染みのいる大兵営へと向かう。実家のような安心感、知人たちとおしゃべりしてリフレッシュできる……はずだったのだが、どうにもジャンは婚約の話を断るつもりだと耳にしてしまう。すると、古馴染みたちは自分たちにとっては『奇跡の王女』であるセレネのためにと怒り狂いはじめた。
元王女セレネが伯爵家に養子に出されたのは訳があって——。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる