腐ったお姉ちゃん、【ヤンデレBLゲームの世界】で本気を出すことにした!

月白ヤトヒコ

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わたしは、このようなことを子供にさせるのは気が進まん。

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「・・・君の使用人達が、続々と休みを取っているのはその為か」

 ふむ。アストレイヤ様が付けてくれたの手先である執事さん経由か、うちの使用人達のシフト状況を把握されているようだ。とは言え、休日の過ごし方までは把握されていなかったようだけど。

「そのようですね。わたし達の携わっている事業が攻撃されたことに対して怒っているようでして。騎士のおじさま達とはまた違った風に動いています」
「君の指示か?」
「いいえ。わたしがお願いしたのは、ライカ農場の食べ物を広めてほしい、とだけです」

 あたしが最初に仕掛けたのは、ライカ農場産の食べ物を広めてほしいということだけだった。どこぞの領地に対するネガティブキャンペーンは、ネロリン信者発案だ。

 彼らは彼らでかなり怒っていたらしく、ネロリン信者の使用人達は自身の貴重な休日と有給を駆使して実家へ帰省がてら、友人、知人、親族達、そして道中の会う人合う人に自主的にネガキャンをし捲っているという。実家が遠方の人は往復大変そうよねー。

 しかも、旅費は自腹だそうです。なんか、『誉めて誉めて!』と尻尾ふりふりするわんこのような期待に満ちた顔で休暇申請と行う予定のネガキャンの報告をされたので、「ありがとうございます。ですが、お休みの日にはちゃんと身体を休めてくださいね?」と心配そうな顔で言っておいた。ネロリン信者は、恍惚とした表情を浮かべていた。

 ネロたんの幼くとも妖艶且つ神秘的な容姿の効果は絶大だ! まあでも、襲われそうとかなやべぇ感じはしないから多分大丈夫でしょ!

「・・・さすがは、側妃の元使用人達と言ったところか。噂が届く頃には、レーゲン寄りの連中の面子は丸つぶれになっている、か」

 ぁ~……そう言や、ネロリン信者の大半は元々あのクソアマの使用人だったわねー。一応、ネロリンに心酔してめろめろ状態で、クソアマの実家方とはもう切れてるみたいだけど。

「色々と噂が広まって破れかぶれになる前に、痛いとこ突っつきに行って当主交代を促したりしたかったんですけどねー? 権勢を削りつつ、『王族に対する毒殺未遂。もしくは、叛意ありと見做しますよ?』という脅しを掛けながら当主交代をチラつかせて。更に、『今ならまだ問題にしないで穏便に済ませてあげられますよ?』と恩を着せる……なんてどうです?」
「・・・なかなかえげつないことを考えていたのか」
「まあ、追い詰められた人って、なにするかわからないですし。まだ余裕のあるうちに致命的な先制攻撃かまして、こちら側の有利なように話進めたいなぁ、と。ついでに、こちら側に友好的……とまでは行かずとも、なるべく公平な人や中立な立場な人が当主になってくれればありがたいと思いまして」
「君は、本当は幾つなんだ?」

 訝しむ視線に微笑む。

「見ての通り、七歳ですよ?」

 見た目とネロたんの実年齢はね!

「七つの子供の考えることじゃない」
「権力争いは、ある程度歴史書に載ってますからねー。なんなら、も~っとえげつない話を読んだこともありますよ?」
「君はどんな教育を受けて来たんだ」
「あっはっは、教育を受けてないからこうなったんです。わたしの知識は大体独学ですので大分偏りがあると思います」

 ふっ、なにしろ王子なのに周囲に注意できる大人が誰もいないという放任放置な環境……別名育児放棄ネグレクトとも言う! のせいか、普通にR指定や閲覧制限入りそう(残念ながらエロ的な意味じゃなくて、拷問的なグロだとか、闇に葬られたどろどろな暗殺合戦や政治的な意味で禁止)な本や資料も割と読み放題だったぜ☆

 えっへんと胸を張ると、

「すまない。失言だった」

 苦い顔が見下ろす。

「いえいえ。それで、お忍び視察旅行の許可を頂けますか?」
「・・・恨まれるぞ?」
「構いません。元より承知の上です。それに、王族を害することを、通常は臣下である筈の貴族が安易に実行するでしょうか? まあ、度し難い愚か者は別として、ですが」
「なにが言いたい」
「彼らへ入れ知恵をした人物。唆した誰か・・がいるのでは? と思いまして。アストレイヤ様がクソ親父の尻拭いをし続けて、国内情勢で手一杯だとは理解していますが。背後関係を気にしてみるべきではありませんか?」

 クラウディオのいる隣国とかね? 将来のゲームシナリオ的な可能性としては低いけど、他の国の介入ということもなくはない。なにせ、ゲームとしてのシナリオは、既にあたしと蒼が崩しに掛かっているんだから。シナリオ外の出来事が起こることも、確りと想定しておくべきだ。

「国内基盤が揺らいでいるときこそ、他所よそから横槍を入れる絶好の好機ですからね。早急に手を打つべきです」
「君は・・・本当に可愛くないことだ。しかし、そうだな。現国王が腑抜けな今、他国が手を出す好機と見るのも然り。目の前のことで手一杯になり、視野が狭まっていたか。礼を言う」
「いえいえ」
「ネロ」
「はい。なんでしょうか?」
「一度しか言わんから、よく聞け」

 アストレイヤ様が、あたしの両肩を掴んで目を合わせる。

「はい」
「わたしは、このようなことを子供にさせるのは気が進まん。本音を言えば、至極腹立たしい」

 据わった目が不機嫌を伝えている。

「だが、そのような余裕は無さそうだ」

 覚悟の決まったような眼差しに頷く。

「はい」
「なので、手を貸してくれ」
「はい。最初から言ってるじゃないですか。『アストレイヤ様とライカ兄上をお支えする為に、尽力致します』と、存分にお使いください」
「……覚悟が決まり過ぎだ」

 なにせ、最推しのシエロたんこと蒼の命と貞操と尊厳が懸かってますからね! お姉ちゃんとして、そして腐女子としても、全力を尽くしますともっ!!

「では、視察旅行は許可する」
「ありがとうございます♪」
「但し、シエロも同行させろ」
「え? シエロた……も?」

 おおう、危ねぇ。シエロたん言いそうになったわ。

「君のストッパー役。そして、仮にもレーゲン寄りの貴族だ。シエロに手は出さんだろう。シエロが向こうに行き、なにかあってレーゲンの怒りを買うのはまずいだろうからな」

 ニヤリと、悪そうな笑みがあたしを見下ろす。

「ライカ兄上はお留守番ですよね?」
「ああ。お前達には悪いと思っているが……ライカは行かせられん」

 ニヤリ顔が一変、アストレイヤ様の表情が曇る。

「いえいえ。むしろ、安心しました」

 ま、アストレイヤ様とライカを回りくどく害そうとしているような輩のとこに、本人をのこのこ行かせられるワケがない。

 それに、あたしが離れている間、アストレイヤ様ならシエロたんこと蒼を確りと守ってくれそうではあるけど、不安っちゃあ不安でもあるし。

 離れて気を揉むよりもいっそ、一緒に行動した方がいい。あたしの前で、蒼に害は成させない。

 多少の危険は承知の上。向かうはクソ親父シンパの貴族領。アストレイヤ様の言った通り、シエロたんの安全はある程度の保証がある。むしろ、危険というならネロたんあたしの方だろう。

「それじゃあ、準備して行って来ます」
「ああ。頼んだ」
「はい。あ、ライカ兄上のフォローお願いしますね?」
「は? ライカのフォロー? なぜだ?」
「視察旅行、わたしとシエロ兄上の二人で行くので。自分だけ仲間外れだ、と拗ねちゃうかと思いまして」
「……拗ねる、か? ライカが?」

 ぱちぱちと瞬く瞳に微笑んで、

「ふふっ、それはご自分の目で確かめてくださいね? では、失礼します」

 アストレイヤ様の部屋を出た。

 さて、荷造りしなきゃ♪

♩*。♫.°♪*。♬꙳♩*。♫

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