腐ったお姉ちゃん、【ヤンデレBLゲームの世界】で本気を出すことにした!

月白ヤトヒコ

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万が一の事態が起きたら――――宜しい、それなら戦争だ! となるのは、目に見えている。

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「では、言い方を変えましょう。応援をするのは、いけないことですか?」
「フッ……贔屓ひいきではなく応援、か。詭弁ではあるが、悪くない」

 ニヤリと笑うアストレイヤ様。

「え? 母上?」
「まぁ、そもそもの話、質の悪い食べ物持って来る方が悪いんですよ。それを、角が立たないよう、わざわざライカ兄上の応援だと言い換えてあげるのですから。むしろ、優しい方じゃないですか?」

 あたしの言葉に、

「だよなぁ。王族が特定の産地の食べ物を『不味い』だとか、『質が落ちたから買うのやめる』って宣言するより、大分親切だな。その程度なら、風評被害も大してないだろうし?」

 うんうん頷く蒼。

「それに、ですよ? このまま正妃であるアストレイヤ様が、そしてライカ兄上が舐められたままでもいいんですか? そういう舐め腐った輩は、さっさと潰すに限ります」
「だよなー。使えない上、舐め腐った態度で堂々とアストレイヤ様とライカ兄上に喧嘩売って来るし。邪魔以外の何者でもない。潰さなくても、なるべく力削いどくに限る」

 そうそう。味方の振りした敵が厄介なんだから。獅子身中の虫だとか、フレネミーって言われるような輩は、残しておくとろくなことにならない。肝心なとこで足引っ張るとか、背後から刺して来るに決まってるわ。

「そもそも、質の悪い物食べて食中毒や病気になる方が怖いですし。これだけあからさまなら、王族に叛意あり、アストレイヤ様のご実家に喧嘩売ってると認定される覚悟もあるんじゃないですかねー?」

 ニヤリと笑うあたしに、ニヤリと同意する蒼。

「だよなー? アストレイヤ様とライカ兄上になにかあったら、普通に極刑ものだし。下手すると国家転覆罪でしょうに? 発酵ではない、腐った食べ物は、ある意味毒物ですからね」

 下手しなくても、現状国を支えているアストレイヤ様を狙う時点で国家転覆罪決定だ。アストレイヤ様になにかあったら、この国、確実に、そして即座に詰むっての。

 喧嘩売る相手間違い過ぎだし。

 どんだけ、情勢が読めてない大馬鹿なのよ?

 それとも・・・ガチで国家転覆を狙ってるどこぞの輩の手先か?

 確か、隣国の国王クラウディオ(現在は王太子だけど)ルートでは、この国が属国になるという話がチラッと出ていたような気がする。本当に数行だけの描写だったけど――――これは、後でキッチリ調べておいた方がよさそうね!

 国家転覆を仕掛けるだなんて、それこそ年単位での計画。もしかしたら、クラウディオの父親、現国王や祖父である前国王の代から、数十年掛けて動いているということも考えられる。

 クソ親父ことレーゲンがアレ過ぎて、かなり舐められていそうだ。「今なら、サクッと隣国手に入れられるかも☆」的な?

 ちなみに、発酵と腐敗の違いは、益のある……ざっくり言うと、大体は食べられる腐り方をしているかどうか。納豆やお酒、味噌、醤油、チーズなどは発酵の部類。食べられない腐り方をしているものを腐敗として分けてる感じ。

「ええっ? ネロっ? シエロっ?」
「……そうだった。普段は猫を被っているが、君達はなかなか過激だったな」
「でも、実際問題。子供の口に入る物に気を付けるのは当然のことでしょう? それも、正妃であるアストレイヤ様と、第一王子であるライカ兄上が口にすると判っている食べ物ですよ? それを、なにかあってから、『そんなつもりじゃなかった』というのは通らないでしょうに」

 万が一の事態が起きたら――――宜しい、それなら戦争だ! となるのは、目に見えている。ハッキリ言って、馬鹿過ぎる。愚かしい、痴れ者がっ!! というやつだ。

 しかも、仮定……隣国の手先になっていた輩がしでかしたとして、だ。王族を害した罪が発覚し、犯人が捕まったところで、隣国が犯人を庇ってくれるワケがない。斬首一択でしょうに? そして、国が荒れること確実。下手したら、クラウディオルートどころか、ゲーム開始以前に属国になるのが早まるだけだ。

「というワケで・・・ぶっ潰しましょう!」
「フッ、いいだろう。唆されてやる。それで、どうやるつもりだ?」

 ニヤリと、楽しげに笑うアストレイヤ様。

「ここはもう、正々堂々と品質勝負ですね。そもそも、遠くの領から運んで来る食糧よりも近場から運ぶ食糧が安くなるのは当然。新鮮さ、品質、輸送の手間暇、関税などなど。諸々引っ包めて、価格競争で負ける要素がありません。ついでに、王都の食料自給率を上げるという大義名分も作っちゃいましょう♪」

 戦争と言っても、武力の戦争じゃない。内乱なんて下策、あたしが取るワケがない。仕掛けるのは……所謂、経済戦争というやつだ。普通に、正攻法で勝つ……いいえ、叩き潰すだけの話。

「そうだな。もうどうせなら、自前で生産できる物はクソ親父の派閥から買うのやめてもいいんじゃないですか? な、ネロ」
「ええ。食肉用の豚、鶏、牛、羊。小麦、大豆などの穀類と主食になるじゃが芋やとうもろこしなど。ある程度の野菜。数種類の果実。乳製品などの増産は問題ありません。塩や砂糖、香辛料などの調味料。お茶やお酒などの嗜好品は、アストレイヤ様の派閥の領やお抱え商人達から入手できますか?」

 食料自給率を上げると大義名分を掲げても、塩の生産は海の近くや塩鉱山、塩湖などが無いと無理だし。砂糖や香辛料、お茶、コーヒーなどにも気候や産地の関係がある。この辺りは生産できる地域が限られて来るし、酒に至っては素人が手を出すには専門的過ぎる。将来的には、生産地域の土地やら直接工房を買うのもいいかもしれない。

 甜菜大根や砂糖楓を探そうかしら。もしあるなら、この地域でも砂糖を作れそうだし。

「ああ。問題無い」
「では、年単位の計画として。酒や毛織物の生産も視野に入れます」
「できるのか?」

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