腐ったお姉ちゃん、【ヤンデレBLゲームの世界】で本気を出すことにした!

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
29 / 158

『空腹の者には魚を恵んでやるのではなく、魚の獲り方を教えよ』

しおりを挟む



「ええ。では、立て直し計画の話を始めましょうか」
「ね……レイシアは、なにか考えがあるの?」

 ネロとネレイシア、どちらで呼ぶか迷ったというところかしら?

「……ライカ様」
「なに? シエロ」
「その、少々話し難いので言葉を崩して宜しいでしょうか?」
「え?」
「ネリーも、その方が話し易いと思いまして。ああ、この間程には崩したりはしませんのでご安心ください。それに、ライカ様もネリーと呼んだら如何です? いいよな? ネリー」
「ええ。ライカ様が宜しければ」
「その、じゃあ……君達も、僕のこと……お兄様って呼んで」

 おおう! 恥ずかしそうなキラキラぷにショタのお顔頂きましたっ!!

「はい、ライカお兄様」
「えっと……兄上、もしくは兄さんと呼んでも?」
「うん♪」

 ライカの愛想笑いじゃない、にっこりと満面の笑みっ!! シャッターチャンス! だというのにっ、今ここにっ、手許にカメラが無いことが残念極まりないっ!!

「それじゃ、話を始めよう」

 と、言葉を崩した蒼が言う。

「ネリーは、なにか考えがあるんだよな?」
「まあ、考えというか……普通に、自分の食い扶持は自分で稼がせようと思いまして」
「え? 食料を支援するんじゃないの?」
「ま、最初はそれでいいかもしれない。けど、その食料支援っていつまで続けるつもりなんだ?」
「それは……彼らが必要としなくなるまで、かな?」
「ライカお兄様。孤児院や救貧院は日々人が増えて行く場所ですよ。なので、食料が不要になることなど、閉院、閉鎖でもしない限りはあり得ません」
「あ、そっか」
「ああ。それに、『空腹の者には魚を恵んでやるのではなく、魚の獲り方を教えよ』って言葉もある。食料を直接あげるだけで終わらせるんじゃなくて、自分達でどうにかできるようにした方が、その後の彼らが餓えずに済む」
「ああ、うん。前に習ったことがある」
「それで、ネリー。具体策は?」
「そうねー。郊外に、人手不足と経営難の農場や牧場があるみたいなの。まずはそこを買い取って、孤児院や救貧院の人達に運営させようと思ってるわ」

 ネロリン信者の調べだ。既に幾つか目星を付けてある。

 ちなみに、子供に労働させるなんて! というのは、ある程度以上の文化水準がある国でしか言っちゃいけないことだ。だって、餓えて死ぬより労働して食べて行ける方が断然いいでしょ。

「いきなり農場、牧場の買い取りとはまた大きく出たな……で、そのための資金はどうすんだよ? 出せるのか?」
「ああ、アストレイヤ様にお願いできないかしら? ってのと、うちにある使わない宝飾品を売ればなんとかなるでしょ」
「それ、側妃のじゃないの? いいの? ネ、リーはそれで」

 気遣わしげなライカに頷く。

「ええ。わたくしも、母の物を使用する予定はないので。死蔵しておくより、有効活用した方が断然いいと思います」

 クソアマが、クソ親父の気を引くだと言って買い漁っていた貴金属類やドレス、香水、化粧品。もてなしの為の高級酒などが山程ある。あたしの趣味じゃないし。ドレスは、ドレスとしては高くで売れないだろうけど、解いて布にしていまえばいい。それなりにいい布地だし、装飾として縫い付けられているレースやら宝石、金糸、銀糸などもそれ自体で売れる。香水や化粧品、高級酒も、まだ封を切ってない物が沢山だ。腐っても側妃の私物。捨て値で売ったとしても、それなりの値段は付くだろう。オークションに出品して、値を吊り上げてもいい。

「それじゃあ、初期費用はある程度クリア。だが、輸送については? 郊外には、護衛がいないと運べないだろ。盗賊に囲まれて、あっという間に身ぐるみ剝がされるぞ」
「ふっふっふ、その辺りについても大丈夫」
「さすがに、母上の護衛は貸し出せないと思うよ?」
「ええ。判っています。わたくしが考えているのは、退役軍人などの起用ですわ」
「ああ、成る程な。怪我や病気、年齢を理由に退役した軍人、か。場合によっちゃあ引き受けてくれる可能性は高い。そして、そこらの賊には簡単には負けない、か」
「ええ。大規模な盗賊団や余程性質の悪いお尋ね者が相手でもない限りは大丈夫でしょ。それに、王都付近で大規模な盗賊団が幅を利かせているなんて話は聞かないし。この辺りは、現役の軍人さんを信じましょう」

 アストレイヤ様が頑張ってくれているお陰か、王都近郊の治安が悪いとは聞こえて来ない。

「そう、だね。国王や母上のお膝元である王都を荒らす者は、許されない」

 ライカが深く頷いた。

「とは言え、小規模且つ、荷物だけを狙って、人の殺傷をしないという盗賊達については討伐の優先順位が低い筈。故に、そう言った取り零されたような盗賊や、突発的な破落戸対策としての護衛は必須。というところかしら? ま、単純に、運び手としても必要ではあるけど」
「成る程。まだプランだけだが、ある程度は実現できそう……ではあるな」
「あ、本当だ。ネリーは凄いね」
「凄いというか……いつから考えていたんだ?」

 素直に誉めてくれるライカに対し、胡乱げな視線を向ける蒼。

「ふふっ、そうねー? ネロお兄様が巻き込まれたことの規模が大きくなってから、かしら? ほら? 大きな事件になると、予想外の規模でどんどん巻き込まれて行く物事があるじゃない? で、一番その犠牲になるのは弱い立場の人達だから。ネロお兄様が関わったことで、それで人死にが出るような事態になったら寝覚めが悪いわ。責任を感じちゃうじゃない。で、そろそろほとぼりも冷めたかなー? ってところで、アストレイヤ様に許可を求めてみましたっ☆」
「ホンっト、よく回る頭だことで」

 だって、あたしは元々銀行員。企業の企画立ち上げ、金勘定に関してはプロと言っても過言じゃないんだから! 倒産や経営破綻した会社の業務を、別の会社が引き継ぐことなんてよくあることだし?

「ふふんっ♪もっ~と誉めてくれちゃってもいいのよ?」

しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜

真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。 しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。 これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。 数年後に彼女が語る真実とは……? 前中後編の三部構成です。 ❇︎ざまぁはありません。 ❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。

罠に嵌められたのは一体誰?

チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。   誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。 そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。 しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。

彼女は予想の斜め上を行く

ケポリ星人
ファンタジー
仕事人間な女性医師、結城 慶は自宅で患者のカルテを書いている途中、疲れて寝ってしまう。 彼女が次に目を覚ますと、そこは…… 現代医学の申し子がいきなり剣と魔法の世界に! ゲーム?ファンタジー?なにそれ美味しいの?な彼女は、果たして異世界で無事生き抜くことが出来るのか?! 「Oh……マホーデスカナルホドネ……」 〈筆者より、以下若干のネタバレ注意〉 魔法あり、ドラゴンあり、冒険あり、恋愛あり、妖精あり、頭脳戦あり、シリアスあり、コメディーあり、ほのぼのあり。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

ウワサの重来者 どうか、心振るえる一生を。(中辛)

おいなり新九郎
ファンタジー
 最新情報:幼いサヤを背負い少女は炎と化け物の中を潜り抜ける。一途にこの娘を地獄から逃がすために。 ーあらすじー  侍の家に生まれたユウジは16歳の少年。  家族がいろいろあって、家を継ぐことに。  ある日、特別な力を与えてくれるという「宝」を引ける催しに参加する。  そこで、彼が引いてしまったハズレとしか思えない「宝」とは?  宝のせいなのか、問答無用にふりかかる災難。  個性豊かな、お宝美少女達に振り回され、ユウジは冒険を続ける。  そこには思わぬこの世界の因縁と謎があった。    作者より  タイトルにある「重来者」はリターナーと読みます。  途中、主人公交代を検討しております。  お一人でも多くの方が楽しんでくだされば幸いです。  理不尽な世の中で、どうか心振るえるひと時を・・・。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

処理中です...