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勿論……シエロを、心から愛してるからですよ。
しおりを挟むアストレイヤ様ってば、なにげにお茶目さん♪
「ちなみに、シエロの方は知っているのか?」
「ええ。シエロ兄上は知っていますよ」
「ほう……シエロは、自分で気付いたのか?」
「いえ、わたしが自分で教えました」
「ふむ……なぜだ?」
「そうですね……シエロ兄上と初めて会った日。母が、シエロ兄上の毒殺を企んでいまして」
「あの女はっ……本当に碌な事しないな!」
心から同意するわ!
「わたしは、シエロ兄上と仲良くしたかったので。信頼して頂くために、わたし……というより、バラされると困る母の弱みを教えました」
「数ヶ月前も相変わらず、君は子供らしくない。だが、それでシエロは君を信頼した」
「ええ。シエロ兄上とは、仲良くさせて頂いています」
ま、実際に会ったシエロたんの中身が蒼だって判明して、半泣きで『助けろくださいっ!!』って縋られちゃったからなぁ。可愛い弟(前世の)の、命や貞操、尊厳を守る為、お姉ちゃんとしては手を貸さないワケには行かないでしょう!
「成る程。君は、シエロの為にどこまでならする?」
何気なさと軽さを装った、アストレイヤ様の質問。
これはきっと――――あたしが、どれくらいシエロたん……蒼のことを大切に思っているかという探りね。
いいでしょう。ガッツリと答えてあげましょう。
「そうですね。なんでも、しますよ? シエロを守る為であれば。わたしは、どのようなことも厭わない。あらゆる手段を使って、他のなにを犠牲にしても。必ず、シエロを守り切ります。シエロが生きていてくれるなら・・・わたし自身の身すら、考慮に値しない」
「わかった。留意しておこう」
「ありがとうございます」
「……なぜ、お前がそうまでシエロに思い入れる? それは、贖罪のつもりか?」
「理由の一つではありますね」
クソアマ……ネロたんの母親が、シエロたんの命を狙ったことへの贖罪か? と。アストレイヤ様は、多分そう聞いているのだろう。ネロたんは、慈悲深いと有名だから。
ネロとしては、シエロたんへのそういう気持ちも多少はある。
でも、あたしは――――あのとき、ゲームの発売日。あたしが、自分で【愛シエ】を買いに行っていれば・・・蒼があんな風に死ななくて済んだんじゃないか? なんて、酷く苦い贖罪の気持ちもある。
いずれにしろ、ネロたんもあたしも・・・シエロたんと蒼、両方への罪悪感があることは変わらない。
「理由の一つ、か。他にも?」
「そんなの、勿論……シエロを、心から愛してるからですよ」
そう・・・あの、儚く清く麗しく、愛くるしい天使のような美麗なショタっ!! この存在が消えることが、世界の損失と言わずなんと言うっ!? ま、蒼のことも、前世から手の掛かる可愛い弟なのは変わらないし?
シエロたんを……蒼を生かす為なら、お姉ちゃんは笑って死ねる。これぞ腐女子の本望! 無論、お姉ちゃんとて、簡単に死んでやるつもりはサラサラ無いけどね!
「国王であるクソ親父には生まれたときから存在を一切無視され、ネレイシア共々誕生を祝われたことがありません。母へは、出産に対する労いの言葉、代筆のメッセージカードすらも無かったそうですよ?」
初産で双子だなんて、大変だっただろうに。レーゲンの態度は、確かに酷過ぎる。あの女に、一定の同情の余地はある。でも、だ。
「そんな母には……なぜもっと早く生まれなかった、と。生まれた時期が遅い、と。ネレイシアが亡くなったことを。父に見向きもされないことを。シエロの母の寵姫に負けたのは、全てわたしのせいだと責められ、ずっと疎まれながら育ちましたからね」
だからと言って、ネロたんに当たるのは間違っている。茜としての記憶がある今だからこそ、そう言える。
「こんなわたしのことを、初めて家族として認めてくれたのが、シエロ兄上です」
蒼は、あたしに言った。『ネロはシエロの弟だろう』と。本気で心配してくれた。あのときはふざけて返したけど、わたしはとっても嬉しかった。
思えば――――ネロたんもまだこんな小さいというのに、なかなかハードな人生を送ってるのよねー? シエロたんには、ストーカー予備軍ショタや乳母がいるけど、ネロたんには本当に家族と呼べる人が一人もいない。あのクソアマに暴言を吐かれても、それでもあの女の尻拭いをしながら使用人達に神童だと称えられ、歯を食い縛って生きて来た。
「わたしがシエロを愛する理由として、なにか不足が?」
シエロたんとしても、蒼としても、愛おしい家族であることに違いはない。
「いいや、十分だ。悪かった。嫌なことを言わせた」
「いえ。そういう意味では、わたしのことを気に掛けてくださるアストレイヤ様のことも好きですよ? 戴冠なさるのでしたら、それこそ全力でお支えしようと思うくらいには」
「……君の愛は、なかなか重そうだな」
「ふふっ、そうかもしれませんね」
間違ってはないわねー。だって、ネロたんは激重ヤンデレ男の娘だもの!
「不甲斐ない大人ばかりで、苦労を掛けた。すまない」
「いえいえ。アストレイヤ様ががんばって国を支えてくれているお陰で、シエロもわたしもこうして生きていられるのです。感謝しておりますとも。毎日、本当にお疲れ様です」
「・・・全く、君は本当に可愛くない子だな? だが、君にそう言われるのも悪くない」
アストレイヤ様は照れたような顔で苦笑し、ぽんとまた頭が撫でられた。
男前軍服美女の貴重な照れ顔、頂きましたっ!!
「ところで、アストレイヤ様」
「なんだ?」
「どうやって、わたし達を養子にすることをクソ親父に了承させたんですか?」
あの碌でも無いクソ親父に、どうやって書類にサインさせたのかしら?
一応、正妃の養子になるということは、王位継承権に関係して来ることでもあるし。国王のサインが要るんじゃないの? それとも、正妃独自の采配で可能なのかしら?
「ああ……別に、了承は取っていないぞ」
「へ?」
「数年前。レーゲンに、『気が向いたら、養子を取ってやってもいい』と恩着せがましく言って、養子関連の書類に五枚程にサインをさせた。その書類に、お前達の名前を書いて提出しただけだ」
「それはまた・・・」
おそらく、クソ親父としてはシエロたんをアストレイヤ様の養子にさせて、シエロたんの第二王子という立場を盤石なものにしたかったのだろう。
「フッ……わたしは、『養子を取ってやってもいい』とは言ったが、誰を養子にするかとは言ってないからな」
ニヤリと悪そうな笑みを浮かべるアストレイヤ様。
ということは、ライカにまだ義兄弟だか義姉妹だかが増える余地があるということね! な~んて言うのは冗談だけど。
クソ親父、詰めが甘いわね。
まあ、だからこそ、アストレイヤ様が正妃になっているんだろうけど。
本当にお疲れ様です!
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