腐ったお姉ちゃん、【ヤンデレBLゲームの世界】で本気を出すことにした!

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
20 / 158

異母兄であるライカよりも、蒼を優先する。

しおりを挟む



「ちょっと待って! なんで、そんなことっ……」
「第三王子はまともな教育を受けていない、ということにして。王子としての教育を受けているシエロへ第二王子としての正当性を持たせる……おおよそ、そのようなつもりだったのだろう」
「ええ。そうであれば、わたしの王子としての適性自体が疑われますからね。シエロ兄上の方が優秀で、第二王子に相応しい。という印象を周囲へ与えるつもりだったのでしょう」
「そ、そんなことしたら、王室規範がめちゃくちゃになりますよっ!?」

 悲鳴のようなライカの声。

 ライカがどれくらいクソ親父ことレーゲンへ尊敬だか好意、幻想を抱いていたかは知らないけど・・・ごめん。それ、多分ぶっ壊れる。

 だって、レーゲンがやってること、これまでやって来たことは、ハッキリ言ってクズの所業だ。更に言えば……ゲームでのレーゲンルートですることは、外道。

 レーゲンはかつて愛した寵姫の面影……というか、瓜二つに成長した息子シエロたんを暗殺から守るという名目で寵姫として扱い、シエロの母親と同じ格好女装をさせて監禁。実の息子を無理矢理手篭めにして耽溺するようになる。その間の政務、執務はアストレイヤ様へ丸投げ……という、どうしようもないことをする。

 お姉ちゃんは確かに立派に発酵した腐女子で、ヤンデレスキーではある。でも、さすがに前世で実の弟……今世では異母兄なシエロたん(中身蒼で、実は百合スキーだけどノーマルに女子が好き!)に、今世母の身代わりとしてクソ親父の寵姫になれとは言えないわ。

 だって、そこに愛は無いんだものっ!?

 まあ? 蒼がBLを受け入れて? 「レーゲン素敵、ぽっ♡」ってなってたら、腐女子として熱く応援することもやぶさかじゃないけどさ? 蒼はガチで嫌がって拒否してるから。

 あたしはお姉ちゃんとして、蒼を守る。

 キラキラぷにショタには、本気で悪いと思っているけど・・・異母兄であるライカよりも、蒼を優先する。そう決めている。

「国王自身が寵姫に溺れ、シエロを第二王子にすると言った時点で、既に滅茶苦茶だ。本来なら、第二王子はネロであるべきだからな」
「……そして、その規律を滅茶苦茶に乱したクソ親父の代わりに、噴出する貴族達の不満を抑えて平定し、現在この国を必死で支えてくださっているのが、アストレイヤ様です」
「え? 母上、が?」

 きょとんと自分を見上げるライカへ苦笑するアストレイヤ様。もしかしたら、息子を放ったらかしにしていることに対し、少し思うところがあるのかもしれない。

「まあな。わたしとて、仮にも正妃という立場があるのでな。国が荒れると判っていて、放ってはおけんだろう?」
「貴族達に快く思われていないであろうシエロ兄上と、わたし達の存在を許容してくださっているアストレイヤ様へ、心よりの感謝を」
「ご寛恕かんじょ、真にありがとうございます」

 蒼と一緒にアストレイヤ様へ礼をした後。

「というワケで、ライカ様」

 にっこりと、ライカへ微笑む。

「な、なに?」

 不安そうな表情と返事。

「シエロ兄上は、王位継承権など要らない。けれど、このままだとあのクソ親父がシエロ兄上……というより。自身の、亡き寵姫への未練のため、わたしを第三王子としたように。いずれライカ様の王太子としての地位を脅かすこともあり得ると思うのです。なので、その前にクソ親父を蹴落としませんか?」
「ライカ様は、俺らと違って正当な跡取りだからな。それが順当だろ?」
「っ!?」

 あっれ~? おかしいにゃ~? ネロたんの妖艶美ショタキラースマイル♡をお見舞いしたというのに、なぜにそんな、おばけでも見たように引き攣った顔で青ざめるのかしら? ここは、ちょっと驚きながらも頬を染め、決意の眼差しでネロたんとシエロたんに頷く場面では?

 解せぬ。

「クッ……ハハハハハハハハハハハハハっ!! まさかっ、お前らのような幼児共に簒奪さんだつそそのかされるとはなっ!?」

 おおう、いきなりアストレイヤ様が悪役のように笑い出した! なんかすっごく楽しそうねー。

「わたしは、簒奪などという物騒なことはお勧めしてはいませんよ? ただ、国を乱す愚王は必要無いと思いませんか? と、そう聞いているだけです」
「まぁ、誰が見ても邪魔だろ。要らんことしかしないアレは」

 と、吐き捨てる蒼。

「ハッ、幼児共が簒奪の意を知り、レーゲンを愚王と言い切るかっ!?」
「無論。賢王とて色恋に現を抜かして道理を欠き、私欲を優先すれば愚王に成り果てる。よく聞かれる話です。そのときに、都度諫める。もしくは、国を荒らす前に王自体を取り除いてしまうのも、臣下の務めではありませんか? アストレイヤ様」
「全く、お前達と話していると、子供と話していることを忘れる。惜しむらくは、ネロ。お前の王位継承権が低いことよな? ライカより、レーゲンより、余程お前の方が王らしい!」
「いえいえ、そのようなことはありません。わたしより、余程ライカ様の方が……いえ。むしろ、女王陛下の戴冠も視野に入れては如何でしょうか? アストレイヤ様ならば、数多くの方が支持すると思います」
「あまり……本格的に簒奪を勧めんでくれ。つい、頷いてしまいそうになる」
「俺も、アストレイヤ様が戴冠した方が平和な気がするが?」
「アストレイヤ様がトップに立つのなら、全力でお支えしますよ?」
「この幼児共は、人を煽るのが上手い! が、残念ながら、わたしは国王という器でないよ。わたしが立てば、無用な争いが起こるだろう。女に従って堪るか、という輩もまだまだ多いからな。これ以上、諸侯にそっぽを向かれては困る」
「どう見ても沈み行くだけの泥船より、断然益があると思いますが?」
「くだらねープライドとやらなんじゃねーの? 損得より、自分の見栄や意地のが大事っつー馬鹿野郎って、なにげに多いからな」
「君もなかなか辛辣だな」

 そして蒼が、ぼそりと言った。

『ねーちゃんだって、覚えあんじゃねーの? 前に生きてるときとかさ。なにするにしたって、突っ掛かって来るオッサンとかいなかった?』
『ぁ~……確かに。いたわねー。なにするにしろ、女が上に立つのが気に食わないらしく、女はお茶酌みだけしてろ勢』
『前だって、男女平等を謳いながら、普通に男尊女卑なことを当たり前の顔で言う人とかよくいたじゃん』
『男女平等は、言うは易し。然れど行うは難し……ってことかー。仕方ないわね』

 やれやれという気分で、口を開く。

「やはり、クソ親父を引き摺り下ろして、その後継にライカ様。そして、ライカ様の後見にアストレイヤ様が付いた方が無難というワケですか」
「無難、というなら。それが一番無難ではあるな」
「わかりました。では、わたしとネレイシア。そしてシエロ兄上は、派閥など一切関係無くライカ様を支持し、アストレイヤ様のことを全力でお支えすると誓いましょう。宜しいですね? シエロ兄上」
「はい。俺も、ライカ様が王位を継ぐこと。そして、アストレイヤ様をお支えすることに、なんら異存はありません」

 すかさず同意する蒼。

「ということで、ライカ様はクソ親父……レーゲン国王が次になにかやらかそうとしたときには、是非とも国王になって頂きます。どうぞ、お覚悟を」
「……は、母上っ!?」

__________



 蒼「な、な、ねーちゃん。前から思ってたけど、ねーちゃんなんでそんなにアストレイヤ様に肩入れすんの?」(´・ω・`)?

 茜「え? だって、アストレイヤ様めっちゃ頑張ってるじゃない。前世のあたしと大して変わらない歳で必死に働いてるの見たら、すっごく応援したくなるじゃない。がんばれ、働く女子♪」(p`・ω・´q)

 蒼「えっ?」(゜д゜)?

 茜「うん? アストレイヤ様、アラサーで、多分二十……六、七くらいじゃない?」(*^▽^*)

 蒼「マジかっ!?」Σ(O_O;)

しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

『奇跡の王女』と呼ばないで

ルーシャオ
恋愛
サンレイ伯爵嫡子セレネは、婚約の話が持ち上がっている相手のジャンが他の伯爵令嬢と一緒にいるところを目撃して鬱々していた。そこで、気持ちを晴らすべく古馴染みのいる大兵営へと向かう。実家のような安心感、知人たちとおしゃべりしてリフレッシュできる……はずだったのだが、どうにもジャンは婚約の話を断るつもりだと耳にしてしまう。すると、古馴染みたちは自分たちにとっては『奇跡の王女』であるセレネのためにと怒り狂いはじめた。 元王女セレネが伯爵家に養子に出されたのは訳があって——。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

処理中です...