腐ったお姉ちゃん、【ヤンデレBLゲームの世界】で本気を出すことにした!

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
14 / 158

ねーちゃん、これで大分動き難くなったんじゃね?

しおりを挟む



「チッ……レーゲンの奴め!」

 と、忌々しげな舌打ちの音。

 どうやら、アストレイヤ様もあたしと同じ考えに至ったみたい。

 半分失敗しているせこい画策とは言え、ネロたんがもうちょい大きくなって、「第三王子は全く教育されてませんでした!」なーんて発覚したら、そりゃネロたんの王位継承権は下がるわ。そのことについても、側妃が教育を受けさせなかったからだ……なんて、言い訳できるだろうしさ?

 クソ女の評判もネロたん、ネリーちゃんの評判も駄々下がることは確実。一石二鳥的な? 事実、あのクソ女はネロたんとネリーちゃんのことで全く動いていない。そうなる可能性は高かった。

「明日から、毎日ネロ王子と交代で正妃宮へ通って来い。教師を用意して待っている。お前の母親については、心配は要らん。『この要請を断る場合、ネロ王子の王位継承権に、更なる問題が生じることになる』とでも言ってやれば、なにも文句など言わんはずだ」

 据わった目で、命令されちゃった☆

 迫力美人さんって、キレるととっても怖いのねー? ああでも、ネロたんとネリーちゃんを交代でとは・・・一応、あたしの事情を慮ってくれているのね。あざーっす!

「では、テストを続ける」

 と、どんどん問題プリントが出され、蒼共々学力を測られた。

「二人共に数学、理科に付いてはほぼ問題無し……どころか、大学課程の問題まで解けるとは驚いたぞ。だが、しかし……」

 そう。数学、理科は全く問題ナッシング!

「シエロは兎も角、ネレイシアの方は歴史と地理は見事にぼろぼろだな」

 ふっ、日本史や世界史など、前世地球で習った歴史や地理なら兎も角、【愛シエ】世界の歴史や地理だなんて、全く習ってませんからね!

 クソ女の尻拭いで手一杯だったもの。

 ちなみに、シエロたん……蒼の方の歴史と地理は、現年齢(六歳児)の三学年程上の問題を解けると言ったところ。どうやら、真面目にお勉強しているようね。というかむしろ、熱心なのはクソ親父の方かしら?

「まあ、まだ六歳だからな。かなり偏りがあるとは言え、今から励めばどうにかなるだろう。シエロは……そうだな。明日から、簡単な会計処理の書類を任せる。昼食後に来い」
「はいっ」

 アストレイヤ様はおそらく、シエロたんに文官の仕事をさせるとは言っていたものの、本気ではなかったのだろう。勉強を見てやる……程度の気分だったが、実際の蒼の計算能力を見て気が変わったようだ。

「ネレイシアは、明日。ネロ王子にここへ来るよう伝えろ」
「はい。わかりました」
「ネロ王子の方とは会ったことがないからな。楽しみだ」

 おおう、ネロたんと初対面設定にしてくれるらしい。

「では、お茶を飲んだら今日はもう帰りなさい」

 と、お菓子を勧められるまま食べて、解散。

 アストレイヤ様の執務室を出て、蒼が口を開く。

『な、な、ねーちゃん』
『なぁに?』
『アストレイヤ様、ねーちゃんっつーか、ネロとネリーのこと知らんの?』
『ん~……普通に知ってると思うわよ? さっき、聞いてたでしょ? ネロたんかネリーちゃんかを選ばせてやる、って』
『え? 知っててあの態度?』
『これぞ、王侯貴族お得意の腹芸というやつよ。アンタも見習いなさい』
『おー、なるほどなー……って、ねーちゃんのことバレてんのまずくねっ!?』
『やー、今更でしょ。ほら? あのクソ女を監査に掛けるっつってたし? ネリーちゃん殺害容疑、もしくは王族の死亡を偽っていた偽証罪……で合ってるかしら? に問うつもりなんじゃない? 内々にだと思うけど。ま、実際に罪には問わなくても、弱みは握れるわよねー。シエロたんが第二王子扱いされてる最中、あの女やその実家の権力を失墜させると、第一王子の予備としての立場が危うくなるだろうから、せいぜい幽閉処置ってとこかしらね。で、数年後に病死とか?』
『・・・第一王子の予備ってなに? どういうことだよ、ねーちゃん』

 蒼が、嫌そうな顔で聞く。

『ん? ほら、言い方はあれだけどさ。第二王子以下の王子って基本、第一王子になんかあったときの予備でしょ。普通は』
『普通……ああ、成る程。通常の王家の場合か。ちっとまだ日本感が抜けてなかったわ。俺……というか、シエロの存在なー』
『そ。平時の国政的には、シエロたんはまずい存在。でも、クソ親父はシエロたんを贔屓したい。というワケで、わざとネロたんへ王子教育をさせてないんじゃないかしら? そして、まともに教育も受けていない駄目王子扱いして、シエロたんのがネロたんよりも優秀だぞ! って、主張するつもりだったんだろうなぁ……って、さっき気付いた』
『うっわ、セコ過ぎっ! つか俺、ねーちゃんよか優秀になれる気、全くしねーんだけど。なにあれ、大学相当の数学や理科の問題をパッと解いて、しかもちょちょいと全問正解とかさー?』
『お姉様は天才ですから!』
『あれ、冗談じゃなかったのか……って、めっちゃ実感したわー』

 蒼は、まあまあ解けてたけど、何問かは間違ってたし。

『さあ、お姉様を崇め讃えなさい!』
『ま、それは兎も角。ねーちゃん、これで大分動き難くなったんじゃね? 俺的には、ねーちゃんが勝手に危ないことする確率が減って、ちょっと嬉しいんだけどさ』
『はっはっは、アストレイヤ様もそれ狙い込みでしょ。実際問題として、ネロたんがシエロたんに劣ってたらかなりまずいって事情もあるけどね?』
『ぁ~……それな。ねーちゃんがネロでよかったぜ。でも、そう考えると、第一王子は大変だろうなー。既に神童扱いされている腹違いの弟がいるっつーのはさ?』
『それはもう、しょうがないわよ。あたしが動いてあのクソアマ止めなきゃ、死人が沢山出てたと思うし。陰惨で血塗られた離宮まっしぐらよ?』

 あたしもちょっとまずいとは思うけど、もうどうしようもない。

『うえ……そんな酷いのかよ? ねーちゃん、本当に大丈夫か?』

しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

『奇跡の王女』と呼ばないで

ルーシャオ
恋愛
サンレイ伯爵嫡子セレネは、婚約の話が持ち上がっている相手のジャンが他の伯爵令嬢と一緒にいるところを目撃して鬱々していた。そこで、気持ちを晴らすべく古馴染みのいる大兵営へと向かう。実家のような安心感、知人たちとおしゃべりしてリフレッシュできる……はずだったのだが、どうにもジャンは婚約の話を断るつもりだと耳にしてしまう。すると、古馴染みたちは自分たちにとっては『奇跡の王女』であるセレネのためにと怒り狂いはじめた。 元王女セレネが伯爵家に養子に出されたのは訳があって——。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

処理中です...