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ねーちゃん、これで大分動き難くなったんじゃね?
しおりを挟む「チッ……レーゲンの奴め!」
と、忌々しげな舌打ちの音。
どうやら、アストレイヤ様もあたしと同じ考えに至ったみたい。
半分失敗しているせこい画策とは言え、ネロたんがもうちょい大きくなって、「第三王子は全く教育されてませんでした!」なーんて発覚したら、そりゃネロたんの王位継承権は下がるわ。そのことについても、側妃が教育を受けさせなかったからだ……なんて、言い訳できるだろうしさ?
クソ女の評判もネロたん、ネリーちゃんの評判も駄々下がることは確実。一石二鳥的な? 事実、あのクソ女はネロたんとネリーちゃんのことで全く動いていない。そうなる可能性は高かった。
「明日から、毎日ネロ王子と交代で正妃宮へ通って来い。教師を用意して待っている。お前の母親については、心配は要らん。『この要請を断る場合、ネロ王子の王位継承権に、更なる問題が生じることになる』とでも言ってやれば、なにも文句など言わんはずだ」
据わった目で、命令されちゃった☆
迫力美人さんって、キレるととっても怖いのねー? ああでも、ネロたんとネリーちゃんを交代でとは・・・一応、あたしの事情を慮ってくれているのね。あざーっす!
「では、テストを続ける」
と、どんどん問題プリントが出され、蒼共々学力を測られた。
「二人共に数学、理科に付いてはほぼ問題無し……どころか、大学課程の問題まで解けるとは驚いたぞ。だが、しかし……」
そう。数学、理科は全く問題ナッシング!
「シエロは兎も角、ネレイシアの方は歴史と地理は見事にぼろぼろだな」
ふっ、日本史や世界史など、前世地球で習った歴史や地理なら兎も角、【愛シエ】世界の歴史や地理だなんて、全く習ってませんからね!
クソ女の尻拭いで手一杯だったもの。
ちなみに、シエロたん……蒼の方の歴史と地理は、現年齢(六歳児)の三学年程上の問題を解けると言ったところ。どうやら、真面目にお勉強しているようね。というかむしろ、熱心なのはクソ親父の方かしら?
「まあ、まだ六歳だからな。かなり偏りがあるとは言え、今から励めばどうにかなるだろう。シエロは……そうだな。明日から、簡単な会計処理の書類を任せる。昼食後に来い」
「はいっ」
アストレイヤ様はおそらく、シエロたんに文官の仕事をさせるとは言っていたものの、本気ではなかったのだろう。勉強を見てやる……程度の気分だったが、実際の蒼の計算能力を見て気が変わったようだ。
「ネレイシアは、明日。ネロ王子にここへ来るよう伝えろ」
「はい。わかりました」
「ネロ王子の方とは会ったことがないからな。楽しみだ」
おおう、ネロたんと初対面設定にしてくれるらしい。
「では、お茶を飲んだら今日はもう帰りなさい」
と、お菓子を勧められるまま食べて、解散。
アストレイヤ様の執務室を出て、蒼が口を開く。
『な、な、ねーちゃん』
『なぁに?』
『アストレイヤ様、ねーちゃんっつーか、ネロとネリーのこと知らんの?』
『ん~……普通に知ってると思うわよ? さっき、聞いてたでしょ? ネロたんかネリーちゃんかを選ばせてやる、って』
『え? 知っててあの態度?』
『これぞ、王侯貴族お得意の腹芸というやつよ。アンタも見習いなさい』
『おー、なるほどなー……って、ねーちゃんのことバレてんのまずくねっ!?』
『やー、今更でしょ。ほら? あのクソ女を監査に掛けるっつってたし? ネリーちゃん殺害容疑、もしくは王族の死亡を偽っていた偽証罪……で合ってるかしら? に問うつもりなんじゃない? 内々にだと思うけど。ま、実際に罪には問わなくても、弱みは握れるわよねー。シエロたんが第二王子扱いされてる最中、あの女やその実家の権力を失墜させると、第一王子の予備としての立場が危うくなるだろうから、せいぜい幽閉処置ってとこかしらね。で、数年後に病死とか?』
『・・・第一王子の予備ってなに? どういうことだよ、ねーちゃん』
蒼が、嫌そうな顔で聞く。
『ん? ほら、言い方はあれだけどさ。第二王子以下の王子って基本、第一王子になんかあったときの予備でしょ。普通は』
『普通……ああ、成る程。通常の王家の場合か。ちっとまだ日本感が抜けてなかったわ。俺……というか、シエロの存在なー』
『そ。平時の国政的には、シエロたんはまずい存在。でも、クソ親父はシエロたんを贔屓したい。というワケで、わざとネロたんへ王子教育をさせてないんじゃないかしら? そして、まともに教育も受けていない駄目王子扱いして、シエロたんのがネロたんよりも優秀だぞ! って、主張するつもりだったんだろうなぁ……って、さっき気付いた』
『うっわ、セコ過ぎっ! つか俺、ねーちゃんよか優秀になれる気、全くしねーんだけど。なにあれ、大学相当の数学や理科の問題をパッと解いて、しかもちょちょいと全問正解とかさー?』
『お姉様は天才ですから!』
『あれ、冗談じゃなかったのか……って、めっちゃ実感したわー』
蒼は、まあまあ解けてたけど、何問かは間違ってたし。
『さあ、お姉様を崇め讃えなさい!』
『ま、それは兎も角。ねーちゃん、これで大分動き難くなったんじゃね? 俺的には、ねーちゃんが勝手に危ないことする確率が減って、ちょっと嬉しいんだけどさ』
『はっはっは、アストレイヤ様もそれ狙い込みでしょ。実際問題として、ネロたんがシエロたんに劣ってたらかなりまずいって事情もあるけどね?』
『ぁ~……それな。ねーちゃんがネロでよかったぜ。でも、そう考えると、第一王子は大変だろうなー。既に神童扱いされている腹違いの弟がいるっつーのはさ?』
『それはもう、しょうがないわよ。あたしが動いてあのクソアマ止めなきゃ、死人が沢山出てたと思うし。陰惨で血塗られた離宮まっしぐらよ?』
あたしもちょっとまずいとは思うけど、もうどうしようもない。
『うえ……そんな酷いのかよ? ねーちゃん、本当に大丈夫か?』
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