腐ったお姉ちゃん、【ヤンデレBLゲームの世界】で本気を出すことにした!

月白ヤトヒコ

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茜お姉様は天才だったのです! 崇め讃えよ!

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『ねーちゃんの行動力っ!?』
『ま、アストレイヤ様に気に入られたから結果オーライねー。ちなみに、アンタの緊急突撃ミッション! はアストレイヤ様に気に入られること、よ。がんばりなさい』
『マジかっ!?』
『当然。あのクソ親父の庇護下に居続けるより、執務、政務を現在進行でこなして、臣下の信頼と人望厚いアストレイヤ様に気に入られる方が、生存率がグンと上がるでしょ』

 むしろ、アストレイヤ様を味方に付けないで誰を味方にするってのよ?

『あ~、それは確かに。納得したわ。ねーちゃん、実はちゃんと考えてたのか』
『更に言うと、ここならあのクソ女の邪魔が入ることはない……というのは言い過ぎだとしても、限りなく邪魔が入る可能性は低い。アストレイヤ様のお膝元ですもの。おそらく、この正妃宮程に、あたしとアンタが安全に会える場所は無いわ』
『成る程。わかった・・・それで、どうやってアストレイヤ様に気に入られればいいんだ?』
『ん~……なんだったらもう、言っちゃえば? 第二王子辞めたいって。理由を正直に言えば、きっと面白がってくれると思うわよ』
『できるのかっ!?』
『やー、その辺りはあたしに聞かれてもねー? ほら、あたしまだ六歳だし? 残念ながらお姉ちゃん、なんでもできるワケじゃないのよ』
『そう、だよなぁ・・・』

 はぁ、と落ちる深い溜め息。

『あ、一応言っとくけど、貢ぎ物や手土産は毒物や危険物に気を付けなさい。下手な人に用意させると、あっという間にアストレイヤ様に敵対の意志ありの危険人物! って風にさせられるから。むしろ、なにも持って行かない方がマシね。さすがに、一発で殺されちゃうことはないと思うけど。きっと正妃宮、出禁にされちゃうわ』

 安全地帯が減るのは、できれば避けたい。

『うえっ、なんだそれっ!?』
『だから、それがあたしがアストレイヤ様にしょぼい……もとい、めっちゃシンプルなお花数輪をせっせと貢いでいた理由。明確に危険物でないもの。食べ物やなにやらを色々と排除して行ったら、自然とそうなっちゃったのよ』
『むしろ、六歳児でそこまで思い至るねーちゃんがコワい……』
『ふっ、お姉様の深謀遠慮に畏れ戦きなさい! というのは冗談として。お姉ちゃん、自重するのやめたの』
『? 自重? なにを?』
『まぁ、別に隠してたワケじゃないんだけど。実はあたし・・・茜だった頃はIQ百五十くらいあって。所謂、天才児ってやつだったのよねー』
『え? マジ?』
『うん。ほら? 天才しか会員になれない世界的なクラブがあったでしょ? あれからお誘い来てた』
『マジかっ!?』
『イエース。というワケで、お姉ちゃん本気を出すことにしたの』
『ねーちゃんの実力……前世でバリキャリの銀行員だったってだけじゃなかったんだな』
『ま、伊達に両親を亡くしてから、中学生のアンタを一人で育てて来たワケじゃないわ。実はね、高三の夏休みに毎日徹夜して・・・』
『なんだ? 十八禁のBLゲーム三昧してヒャッハーしてた話か?』
『もう、やーね? 伊達に株で億くらいの儲けを出してないわよ。合間にゲームはしてたけど♪』
『ねーちゃんっ!?!? じ、実はねーちゃん、マジ凄い人?』
『ふふんっ、茜お姉様は天才だったのです! 崇め讃えよ!』

 胸を張ると、

『はは~!』

 蒼が頭を下げた。

 もう何年も前。

 あたしがネロたんになる前のこと。

 茜として生きていた頃の――――高三になる前の春休み。あたし達の両親が、事故で死んだ。

 お葬式や諸々の煩雑なことがあって、疲れた。そんなあたしと、当時中学入学を控えた蒼を見て、「面倒を見切れないなら児童養護施設に入れた方がいい。手続きはしてあげるから。困ったことがあるなら頼りなさい」と親切な人に言われ――――あたしは、自分が蒼の保護者になることを決めた。

 お父さんもお母さんもいなくなったのに、蒼とまで離れたくなかったから。

 両親の保険金が下りて、当面の生活費には困らなかった。でも、これから蒼の進路、進学など色々要り用で。蒼に不自由な思いはさせたくなかったから・・・こう、保険金を元手に夏休み中に株でちょちょいと儲けを出した☆

 そのお金で、自分の大学の費用と蒼の学費を賄った。それから、銀行に就職して――――

 蒼には両親の保険金があるから心配要らないと言って、高校も大学も好きなところへ行かせた。

 まぁ、【愛シエ】の数量限定愛蔵版を買いに行かせた帰りに、あんなことになるなんて思ってもみなかったけど・・・

 あたし、蒼の形見になっちゃった【愛シエ】を泣きながらやって、何週も何週もして、部屋に閉じ籠ったまま――――多分、衰弱して死んじゃったのよねー。

 蒼がいなくて、毎日毎日寂しくて寂しくて堪らなかった。

 蒼のいない日々を、独りで生きる意味を見出だせなかったのかもしれない。

 そして――――この世界でまた逢えた、たった一人の大切な弟だもの。

 二度と喪って堪るかっ!! 運命上等っ、掛かって来いやっ!!

 というワケで、茜だった頃には人間関係などや諸々のことでちょっとばかり自重していた部分を、全開にして麗しきシエロたんこと、蒼の生命と尊厳と貞操を全力で守ろうと思います!

❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅

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