11 / 158
茜お姉様は天才だったのです! 崇め讃えよ!
しおりを挟む『ねーちゃんの行動力っ!?』
『ま、アストレイヤ様に気に入られたから結果オーライねー。ちなみに、アンタの緊急突撃ミッション! はアストレイヤ様に気に入られること、よ。がんばりなさい』
『マジかっ!?』
『当然。あのクソ親父の庇護下に居続けるより、執務、政務を現在進行でこなして、臣下の信頼と人望厚いアストレイヤ様に気に入られる方が、生存率がグンと上がるでしょ』
むしろ、アストレイヤ様を味方に付けないで誰を味方にするってのよ?
『あ~、それは確かに。納得したわ。ねーちゃん、実はちゃんと考えてたのか』
『更に言うと、ここならあのクソ女の邪魔が入ることはない……というのは言い過ぎだとしても、限りなく邪魔が入る可能性は低い。アストレイヤ様のお膝元ですもの。おそらく、この正妃宮程に、あたしとアンタが安全に会える場所は無いわ』
『成る程。わかった・・・それで、どうやってアストレイヤ様に気に入られればいいんだ?』
『ん~……なんだったらもう、言っちゃえば? 第二王子辞めたいって。理由を正直に言えば、きっと面白がってくれると思うわよ』
『できるのかっ!?』
『やー、その辺りはあたしに聞かれてもねー? ほら、あたしまだ六歳だし? 残念ながらお姉ちゃん、なんでもできるワケじゃないのよ』
『そう、だよなぁ・・・』
はぁ、と落ちる深い溜め息。
『あ、一応言っとくけど、貢ぎ物や手土産は毒物や危険物に気を付けなさい。下手な人に用意させると、あっという間にアストレイヤ様に敵対の意志ありの危険人物! って風にさせられるから。むしろ、なにも持って行かない方がマシね。さすがに、一発で殺されちゃうことはないと思うけど。きっと正妃宮、出禁にされちゃうわ』
安全地帯が減るのは、できれば避けたい。
『うえっ、なんだそれっ!?』
『だから、それがあたしがアストレイヤ様にしょぼい……もとい、めっちゃシンプルなお花数輪をせっせと貢いでいた理由。明確に危険物でないもの。食べ物やなにやらを色々と排除して行ったら、自然とそうなっちゃったのよ』
『むしろ、六歳児でそこまで思い至るねーちゃんがコワい……』
『ふっ、お姉様の深謀遠慮に畏れ戦きなさい! というのは冗談として。お姉ちゃん、自重するのやめたの』
『? 自重? なにを?』
『まぁ、別に隠してたワケじゃないんだけど。実はあたし・・・茜だった頃はIQ百五十くらいあって。所謂、天才児ってやつだったのよねー』
『え? マジ?』
『うん。ほら? 天才しか会員になれない世界的なクラブがあったでしょ? あれからお誘い来てた』
『マジかっ!?』
『イエース。というワケで、お姉ちゃん本気を出すことにしたの』
『ねーちゃんの実力……前世でバリキャリの銀行員だったってだけじゃなかったんだな』
『ま、伊達に両親を亡くしてから、中学生のアンタを一人で育てて来たワケじゃないわ。実はね、高三の夏休みに毎日徹夜して・・・』
『なんだ? 十八禁のBLゲーム三昧してヒャッハーしてた話か?』
『もう、やーね? 伊達に株で億くらいの儲けを出してないわよ。合間にゲームはしてたけど♪』
『ねーちゃんっ!?!? じ、実はねーちゃん、マジ凄い人?』
『ふふんっ、茜お姉様は天才だったのです! 崇め讃えよ!』
胸を張ると、
『はは~!』
蒼が頭を下げた。
もう何年も前。
あたしがネロたんになる前のこと。
茜として生きていた頃の――――高三になる前の春休み。あたし達の両親が、事故で死んだ。
お葬式や諸々の煩雑なことがあって、疲れた。そんなあたしと、当時中学入学を控えた蒼を見て、「面倒を見切れないなら児童養護施設に入れた方がいい。手続きはしてあげるから。困ったことがあるなら頼りなさい」と親切な人に言われ――――あたしは、自分が蒼の保護者になることを決めた。
お父さんもお母さんもいなくなったのに、蒼とまで離れたくなかったから。
両親の保険金が下りて、当面の生活費には困らなかった。でも、これから蒼の進路、進学など色々要り用で。蒼に不自由な思いはさせたくなかったから・・・こう、保険金を元手に夏休み中に株でちょちょいと儲けを出した☆
そのお金で、自分の大学の費用と蒼の学費を賄った。それから、銀行に就職して――――
蒼には両親の保険金があるから心配要らないと言って、高校も大学も好きなところへ行かせた。
まぁ、【愛シエ】の数量限定愛蔵版を買いに行かせた帰りに、あんなことになるなんて思ってもみなかったけど・・・
あたし、蒼の形見になっちゃった【愛シエ】を泣きながらやって、何週も何週もして、部屋に閉じ籠ったまま――――多分、衰弱して死んじゃったのよねー。
蒼がいなくて、毎日毎日寂しくて寂しくて堪らなかった。
蒼のいない日々を、独りで生きる意味を見出だせなかったのかもしれない。
そして――――この世界でまた逢えた、たった一人の大切な弟だもの。
二度と喪って堪るかっ!! 運命上等っ、掛かって来いやっ!!
というワケで、茜だった頃には人間関係などや諸々のことでちょっとばかり自重していた部分を、全開にして麗しきシエロたんこと、蒼の生命と尊厳と貞操を全力で守ろうと思います!
❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅
20
お気に入りに追加
112
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

『奇跡の王女』と呼ばないで
ルーシャオ
恋愛
サンレイ伯爵嫡子セレネは、婚約の話が持ち上がっている相手のジャンが他の伯爵令嬢と一緒にいるところを目撃して鬱々していた。そこで、気持ちを晴らすべく古馴染みのいる大兵営へと向かう。実家のような安心感、知人たちとおしゃべりしてリフレッシュできる……はずだったのだが、どうにもジャンは婚約の話を断るつもりだと耳にしてしまう。すると、古馴染みたちは自分たちにとっては『奇跡の王女』であるセレネのためにと怒り狂いはじめた。
元王女セレネが伯爵家に養子に出されたのは訳があって——。

帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる