46 / 179
ヴァンパイア編。
43.あ? 誰が、誘惑者だ。クソ野郎。
しおりを挟む
何故か謝りながらオレの頬へと触れた男。そして、去って行ったのは、紫がかった漆黒の毛並の馬。
どう、しよう・・・どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう・・・
見られたのに、逃げられた・・・
父上の所有印、を…見られた。
どうしよう・・・
駄目だ。
見た奴、は…殺さ、なきゃ・・・
そう、だ。
殺さなきゃ。
殺そう。奴を。
追い掛けない、と。
「・・・は、ぁ…?」
動こうとした。ら、ガクンと力が抜けた。
怠・・・
まずは、動けるようにならなきゃ。
血、を・・・
兄さんの…は、駄目だ。他の、アダマスの血を知るヴァンパイアがいないとも限らない。
リリやシーフの血じゃ、足りない。
ドーピングが必要。
養父さんの血晶を飲み込み、液体へ。爪でピッと指先を切り、養母さんの血晶にオレの血をまぜ、狼の使い魔を創る。
灰色の毛並の狼。
養母さんを模した狼を、ぎゅっと抱き締める。
「…養母さん…」
これは養母さんではないが、養母さんの匂いに、少し…落ち着いた。
そして、奴の流した血を狼へと嗅がせる。
さあ、追跡開始だ。
今度こそ、殺す。
※※※※※※※※※※※※※※※
蒼い夜空の下を、走る。
罪悪感で胸を一杯にして。
俺らを滅ぼした連中は憎い。が、彼女はあの連中の血を引いた…全く別の種族。
本人も、そう言っていた。
だから、彼女は俺が憎い連中の一員ではない。
彼女は、俺の復讐の相手足り得ない。
むしろ彼女は、俺の復讐の・・・ある意味では、理想を体現しているとも言える。
俺の目的は、俺らを滅ぼした純血至上主義を掲げるあの連中に、俺の血を交ぜることなのだから。
彼女を酷く傷付けた俺が言うのもなんだが、俺は彼女を祝福する。彼女の存在は尊い。
連中が忌み嫌い、呪った存在だとしても、俺は彼女の存在を慶び、言祝ごう。
彼女の存在を、全面的に肯定する。
彼女は、間違い無く愛されるべき存在だ。
美人だったしっ!!! ここ、重要っ!
美人だったからなっ!!! 絶対に外せないぜっ!
美しい女は愛されるべきだぜっ!!!
淡い白金色のプラチナブロンド。冷ややかな翡翠に浮かぶ銀色の瞳孔。顔自体はあの聖女と生き写しだが、印象が全く違う。
おそらく、初見であの二人が瓜二つだと気付く奴は相当少ない筈だ。それ程に、雰囲気が違う。
ふんわりと柔らかな、深窓の令嬢然とした雰囲気を纏うのが聖女で、怜悧で凛とした、女騎士のような雰囲気を纏うのが彼女。
聖女が綻び始めた咲き初めの花なら、彼女は固く閉じた蕾と言ったところだろうか?それも、棘や毒を纏うタイプの花。
おそらく、棘や毒を得たのは後天的にだろう。そうでなければ、生きて来られなかったであろう花。
無論、蕾の状態でも美しい花だ。
そう。彼女は美しい。
女は、女であること自体が美しい。
その中でも、とびきりの美少女だ。
美女、ではない。
まだ、成長の余地を残しつつ、既にその美しさを世界へと知らしめているが、本人にはその自覚が薄く、危うさを伴う凛とした美少女、だ。
・・・クソっ! 俺の馬鹿野郎っ!
あんな綺麗な女の子を、泣かせるなんて・・・
泣かせるなら、ベッドの上だろうがっ!?
女をベッドの上以外で泣かせるなんて、最低のクズ野郎じゃねぇかっ!?
それにしても、彼女は……綺麗だったなぁ・・・
男物の服の下に隠された、白くて滑らかな柔肌。曲線を描く腰から、ほんのり冷たくて触り心地が良く、引き締まった腹筋の上に極薄い脂肪が乗った細いウエスト。そして、シンプルな下着を押し上げるふっくらとした形の良い胸。それ程大きくはないが、仰向けでも張りがあって、左胸の真ん中辺りの赤い痣が白い肌に映えていて・・・実に、実にエロかったぜ。
・・・そう言や、吸血鬼の所有印が有ったが…
あれって、なんだ?
・・・おそらく、聖女を拐った悪魔ってのが吸血鬼。で、彼女はヴァンパイアだと言っていた。
彼女の身内の吸血鬼が付けた・・・とか?
吸血鬼の所有印ってな、獲物や所有物である証。
吸血鬼が、独占したい相手に刻む愛の証だとかなんとか・・・だった筈だ。
彼女が愛されているようでなによりだ。が・・・
・・・もしかして俺、マズったか?
まあ、逃げるのは得意だから大丈夫として。多分。
足を止め、人型へ。
白金の髪と翡翠の瞳の彼女を想う。
謝ったら許して・・・くれるワケねぇよなぁ。
俺は、酷いことをした。
彼女を酷く、そして深く傷付けた。
彼女の存在を否定したワケではないが、それに近しい言葉を彼女へと浴びせた。
あの連中の、言いそうな言葉を。
彼女が激昂したのはおそらく、その言葉を、あの連中に言われたことがあるからだろう。
憎悪に染まった貌と、頬を伝った雫。
その雫を掬った指を強く握り締める。
胸が、痛い。
あんな貌をさせたかったワケじゃない。
女を、ああいう風に泣かせていい筈が無い。
彼女が、どういう生を送って来たかは知らない。
しかし、存在を否定される痛みを、辛さを、悔しさを、俺はよく知っている。「オレの存在を、誰かが勝手に否定するな」という、血を吐くような彼女の叫びが、酷く痛々しい。それを、言わせてしまったことが慙愧の念に堪えない。
俺もまた、存在を否定されたモノだから。
そんな俺が、彼女を傷付けていい筈が無いのに。
俺は、復讐を・・・この滾る憎悪をぶつける相手を、間違えた。本当に。彼女には、心の底から申し訳無いと思う。
ふと、なにか嫌な予感がして、振り向いた。ら、狼が俺の喉笛へ向かって跳躍していた。
「ぬをっ!」
理解が追い付かないが、身体が勝手に反応。狼を避けた。瞬間、視界に入ったモノを見て、ゾクリと背筋が粟立った。
美しい、少女が・・・蒼い夜空に、浮かんでいた。蝙蝠のような翼を、背に生やして。
見下ろすのは、赤い光を帯びる翡翠。
その瞳に宿るのは、冷たい憎悪。
靡く白金のプラチナブロンド。
ゾクゾクする程に、怜悧さを研ぎ澄ませた蒼白な美貌。その、薄く色付く唇が開いた。
「死ね」
女の子にしては低めな、硬質なアルト。
そして、彼女が俺目掛けて急降下。
その手には・・・
「っ!」
ショーテルが握られている。
根元から伸びた刀身が、ほぼ直角に鉤状に曲がり、そこからまた刀身が大きく湾曲して円を描くような形状。三日月のような刃が鋭く煌めく中東地方によく見られる短剣だ。
ショーテルは、その独特な形状から、切れ味に特化した剣で、扱うのが難しい剣だと言われている。
そして、扱いが難しい割に、有名な剣だ。
その、用途は・・・
「くっ!」
彼女の、俺の首を薙ぐ一撃を躱す。さっきよりも、明確な、殺すという強い意志を感じさせる攻撃。ヤっベ、見惚れている場合じゃねぇ!
「・・・逃げるなよ」
冷たい殺意を湛え、赤い光を帯びる翡翠。
それは、さっき俺が彼女へと言ったセリフ。
足元から狼が喉笛を狙う。彼女の使い魔か? そして狼と連携を組み、執拗に俺の首へとショーテルを振るう彼女。避けてるけどっ!
「待って待って、待ってくれっ! それガチなやつ! ショーテルって、斬首刑で使うので有名な剣だからっ!」
「ああ、死ねよ」
「いやいやいやいやっ? さすがの俺も、首落とされると死ぬからなっ!? アルゥラ!」
「だから、死ねよ」
「待ってくれっ! 死なない程度になら甚振ってくれてもいいからっ! アルゥラ!」
それくらいのことは、した。
「あ? 誰が、誘惑者だ。クソ野郎」
「あ、そっちで取った? 俺的には、魅惑的なんだけど? でも、誘惑してくれても構わないぜ? 大歓迎だ、アルゥラ! むしろ、俺と一発ヤらないか?」
「死ね」
即行断られたっ!! しかも、武力行使付きでっ!
「そうか・・・それは残念だ。だがっ、気が変わったらいつでも言ってくれっ! 大歓迎するぜっ、アルゥラ! そのときは、愛し合おう!!」
ヒクリと、彼女の顔が引きつる。
「あ゛? だ…からっ、死ねっつってンだろクソ野郎がっ!!!」
冷たかった殺意が、温度を上げる。怒りと苛立ちの感情が混じり、ショーテルを振るう速度が上昇した。
※※※※※※※※※※※※※※※
なん、なんだ…コイツはっ!?
攻撃が、全く当たらない。
いや、厳密には、細かい攻撃は当たっている。
ショーテルや狼の爪が掠ることはある。
しかし、致命的な攻撃を、絶対に躱すのだ。
そして、なにより苛立つのは・・・
「っ、…は、ハァハァ…」
「なあ、アルゥラ。大丈夫か? 息上がって来てるぞ? 少し休憩した方がいい。・・・ハッ、なんなら俺が介抱するぜ? 勿論、変なことはしない。…多分。あ、アルゥラの気が向いたら、別な? 手取り足取り・・・愛し合おうぜ?」
攻撃は、して来ない。物理的な、攻撃は、だ。
オレと狼の攻撃を躱し続け、相当な運動量な筈なのに、馬鹿みたいに馬鹿なことを喋り続け、揚げ句にオレの心配? 馬鹿にされているとしか思えない。
クソムカつくっ!!!
そして結局、養父さんの血のドーピングが切れて退散した。
「なんだ、アルゥラ。もう帰るのか? 送って行ってやるよ…と、言いたいが、それは嫌だろ? じゃあ、またな? 気を付けて帰れよ、アルゥラ」
そう言って、見逃されたことが、悔しい。
絶対に殺してやる。
エレイスの抹殺リストの上位に捩じ込んでやる。
どう、しよう・・・どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう・・・
見られたのに、逃げられた・・・
父上の所有印、を…見られた。
どうしよう・・・
駄目だ。
見た奴、は…殺さ、なきゃ・・・
そう、だ。
殺さなきゃ。
殺そう。奴を。
追い掛けない、と。
「・・・は、ぁ…?」
動こうとした。ら、ガクンと力が抜けた。
怠・・・
まずは、動けるようにならなきゃ。
血、を・・・
兄さんの…は、駄目だ。他の、アダマスの血を知るヴァンパイアがいないとも限らない。
リリやシーフの血じゃ、足りない。
ドーピングが必要。
養父さんの血晶を飲み込み、液体へ。爪でピッと指先を切り、養母さんの血晶にオレの血をまぜ、狼の使い魔を創る。
灰色の毛並の狼。
養母さんを模した狼を、ぎゅっと抱き締める。
「…養母さん…」
これは養母さんではないが、養母さんの匂いに、少し…落ち着いた。
そして、奴の流した血を狼へと嗅がせる。
さあ、追跡開始だ。
今度こそ、殺す。
※※※※※※※※※※※※※※※
蒼い夜空の下を、走る。
罪悪感で胸を一杯にして。
俺らを滅ぼした連中は憎い。が、彼女はあの連中の血を引いた…全く別の種族。
本人も、そう言っていた。
だから、彼女は俺が憎い連中の一員ではない。
彼女は、俺の復讐の相手足り得ない。
むしろ彼女は、俺の復讐の・・・ある意味では、理想を体現しているとも言える。
俺の目的は、俺らを滅ぼした純血至上主義を掲げるあの連中に、俺の血を交ぜることなのだから。
彼女を酷く傷付けた俺が言うのもなんだが、俺は彼女を祝福する。彼女の存在は尊い。
連中が忌み嫌い、呪った存在だとしても、俺は彼女の存在を慶び、言祝ごう。
彼女の存在を、全面的に肯定する。
彼女は、間違い無く愛されるべき存在だ。
美人だったしっ!!! ここ、重要っ!
美人だったからなっ!!! 絶対に外せないぜっ!
美しい女は愛されるべきだぜっ!!!
淡い白金色のプラチナブロンド。冷ややかな翡翠に浮かぶ銀色の瞳孔。顔自体はあの聖女と生き写しだが、印象が全く違う。
おそらく、初見であの二人が瓜二つだと気付く奴は相当少ない筈だ。それ程に、雰囲気が違う。
ふんわりと柔らかな、深窓の令嬢然とした雰囲気を纏うのが聖女で、怜悧で凛とした、女騎士のような雰囲気を纏うのが彼女。
聖女が綻び始めた咲き初めの花なら、彼女は固く閉じた蕾と言ったところだろうか?それも、棘や毒を纏うタイプの花。
おそらく、棘や毒を得たのは後天的にだろう。そうでなければ、生きて来られなかったであろう花。
無論、蕾の状態でも美しい花だ。
そう。彼女は美しい。
女は、女であること自体が美しい。
その中でも、とびきりの美少女だ。
美女、ではない。
まだ、成長の余地を残しつつ、既にその美しさを世界へと知らしめているが、本人にはその自覚が薄く、危うさを伴う凛とした美少女、だ。
・・・クソっ! 俺の馬鹿野郎っ!
あんな綺麗な女の子を、泣かせるなんて・・・
泣かせるなら、ベッドの上だろうがっ!?
女をベッドの上以外で泣かせるなんて、最低のクズ野郎じゃねぇかっ!?
それにしても、彼女は……綺麗だったなぁ・・・
男物の服の下に隠された、白くて滑らかな柔肌。曲線を描く腰から、ほんのり冷たくて触り心地が良く、引き締まった腹筋の上に極薄い脂肪が乗った細いウエスト。そして、シンプルな下着を押し上げるふっくらとした形の良い胸。それ程大きくはないが、仰向けでも張りがあって、左胸の真ん中辺りの赤い痣が白い肌に映えていて・・・実に、実にエロかったぜ。
・・・そう言や、吸血鬼の所有印が有ったが…
あれって、なんだ?
・・・おそらく、聖女を拐った悪魔ってのが吸血鬼。で、彼女はヴァンパイアだと言っていた。
彼女の身内の吸血鬼が付けた・・・とか?
吸血鬼の所有印ってな、獲物や所有物である証。
吸血鬼が、独占したい相手に刻む愛の証だとかなんとか・・・だった筈だ。
彼女が愛されているようでなによりだ。が・・・
・・・もしかして俺、マズったか?
まあ、逃げるのは得意だから大丈夫として。多分。
足を止め、人型へ。
白金の髪と翡翠の瞳の彼女を想う。
謝ったら許して・・・くれるワケねぇよなぁ。
俺は、酷いことをした。
彼女を酷く、そして深く傷付けた。
彼女の存在を否定したワケではないが、それに近しい言葉を彼女へと浴びせた。
あの連中の、言いそうな言葉を。
彼女が激昂したのはおそらく、その言葉を、あの連中に言われたことがあるからだろう。
憎悪に染まった貌と、頬を伝った雫。
その雫を掬った指を強く握り締める。
胸が、痛い。
あんな貌をさせたかったワケじゃない。
女を、ああいう風に泣かせていい筈が無い。
彼女が、どういう生を送って来たかは知らない。
しかし、存在を否定される痛みを、辛さを、悔しさを、俺はよく知っている。「オレの存在を、誰かが勝手に否定するな」という、血を吐くような彼女の叫びが、酷く痛々しい。それを、言わせてしまったことが慙愧の念に堪えない。
俺もまた、存在を否定されたモノだから。
そんな俺が、彼女を傷付けていい筈が無いのに。
俺は、復讐を・・・この滾る憎悪をぶつける相手を、間違えた。本当に。彼女には、心の底から申し訳無いと思う。
ふと、なにか嫌な予感がして、振り向いた。ら、狼が俺の喉笛へ向かって跳躍していた。
「ぬをっ!」
理解が追い付かないが、身体が勝手に反応。狼を避けた。瞬間、視界に入ったモノを見て、ゾクリと背筋が粟立った。
美しい、少女が・・・蒼い夜空に、浮かんでいた。蝙蝠のような翼を、背に生やして。
見下ろすのは、赤い光を帯びる翡翠。
その瞳に宿るのは、冷たい憎悪。
靡く白金のプラチナブロンド。
ゾクゾクする程に、怜悧さを研ぎ澄ませた蒼白な美貌。その、薄く色付く唇が開いた。
「死ね」
女の子にしては低めな、硬質なアルト。
そして、彼女が俺目掛けて急降下。
その手には・・・
「っ!」
ショーテルが握られている。
根元から伸びた刀身が、ほぼ直角に鉤状に曲がり、そこからまた刀身が大きく湾曲して円を描くような形状。三日月のような刃が鋭く煌めく中東地方によく見られる短剣だ。
ショーテルは、その独特な形状から、切れ味に特化した剣で、扱うのが難しい剣だと言われている。
そして、扱いが難しい割に、有名な剣だ。
その、用途は・・・
「くっ!」
彼女の、俺の首を薙ぐ一撃を躱す。さっきよりも、明確な、殺すという強い意志を感じさせる攻撃。ヤっベ、見惚れている場合じゃねぇ!
「・・・逃げるなよ」
冷たい殺意を湛え、赤い光を帯びる翡翠。
それは、さっき俺が彼女へと言ったセリフ。
足元から狼が喉笛を狙う。彼女の使い魔か? そして狼と連携を組み、執拗に俺の首へとショーテルを振るう彼女。避けてるけどっ!
「待って待って、待ってくれっ! それガチなやつ! ショーテルって、斬首刑で使うので有名な剣だからっ!」
「ああ、死ねよ」
「いやいやいやいやっ? さすがの俺も、首落とされると死ぬからなっ!? アルゥラ!」
「だから、死ねよ」
「待ってくれっ! 死なない程度になら甚振ってくれてもいいからっ! アルゥラ!」
それくらいのことは、した。
「あ? 誰が、誘惑者だ。クソ野郎」
「あ、そっちで取った? 俺的には、魅惑的なんだけど? でも、誘惑してくれても構わないぜ? 大歓迎だ、アルゥラ! むしろ、俺と一発ヤらないか?」
「死ね」
即行断られたっ!! しかも、武力行使付きでっ!
「そうか・・・それは残念だ。だがっ、気が変わったらいつでも言ってくれっ! 大歓迎するぜっ、アルゥラ! そのときは、愛し合おう!!」
ヒクリと、彼女の顔が引きつる。
「あ゛? だ…からっ、死ねっつってンだろクソ野郎がっ!!!」
冷たかった殺意が、温度を上げる。怒りと苛立ちの感情が混じり、ショーテルを振るう速度が上昇した。
※※※※※※※※※※※※※※※
なん、なんだ…コイツはっ!?
攻撃が、全く当たらない。
いや、厳密には、細かい攻撃は当たっている。
ショーテルや狼の爪が掠ることはある。
しかし、致命的な攻撃を、絶対に躱すのだ。
そして、なにより苛立つのは・・・
「っ、…は、ハァハァ…」
「なあ、アルゥラ。大丈夫か? 息上がって来てるぞ? 少し休憩した方がいい。・・・ハッ、なんなら俺が介抱するぜ? 勿論、変なことはしない。…多分。あ、アルゥラの気が向いたら、別な? 手取り足取り・・・愛し合おうぜ?」
攻撃は、して来ない。物理的な、攻撃は、だ。
オレと狼の攻撃を躱し続け、相当な運動量な筈なのに、馬鹿みたいに馬鹿なことを喋り続け、揚げ句にオレの心配? 馬鹿にされているとしか思えない。
クソムカつくっ!!!
そして結局、養父さんの血のドーピングが切れて退散した。
「なんだ、アルゥラ。もう帰るのか? 送って行ってやるよ…と、言いたいが、それは嫌だろ? じゃあ、またな? 気を付けて帰れよ、アルゥラ」
そう言って、見逃されたことが、悔しい。
絶対に殺してやる。
エレイスの抹殺リストの上位に捩じ込んでやる。
0
お気に入りに追加
212
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
初めて本気で恋をしたのは、同性だった。
芝みつばち
恋愛
定食屋のバイトを辞めた大学生の白石真春は、近所にできた新しいファミレスのオープニングスタッフとして働き始める。
そこで出会ったひとつ年下の永山香枝に、真春は特別な感情を抱いてしまい、思い悩む。
相手は同性なのに。
自分には彼氏がいるのに。
葛藤の中で揺れ動く真春の心。
素直になりたくて、でもなれなくて。
なってはいけない気がして……。
※ガールズラブです。
※一部過激な表現がございます。苦手な方はご遠慮ください。
※未成年者の飲酒、喫煙シーンがございます。

もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。

2回目チート人生、まじですか
ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆
ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで!
わっは!!!テンプレ!!!!
じゃない!!!!なんで〝また!?〟
実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。
その時はしっかり魔王退治?
しましたよ!!
でもね
辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!!
ということで2回目のチート人生。
勇者じゃなく自由に生きます?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる