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『必殺、地獄の誅罰お届け人!』

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 ※R15。残酷な描写あり。

 ※この話だけ途中からめっちゃ下ネタです。でも、エロは全く無し。

 下ネタ嫌いな方は読み飛ばしてください。

  概要。アリシアさんはシスターなのに、裏で犯罪者共にえげつないお仕置きをする必殺仕○人的なことをしていた。逆らうとまずい人。そんな感じの話です。

――――――――――――


「・・・君は、もしかしなくても所謂天才なのだろうか?」
「あら、魔術学院史上初の平民出身首席だもの。天才なのは間違いないでしょうね」
「ハッ! ヴァーグさんって、とっても凄い人だったんですね!」
「おおー、俺ってば誉められてるー」
「そ、その、どこでそんなにお勉強したのでしょうか?」
「あー、勉強なー? ちっこい頃から王都の図書館で本読み漁ってたっすねー」
「王都の図書館? 本を借りられる身分なのか?」

 訝しげに聞くおっさん。

 基本的に魔術の本は専門書や稀覯本扱いになる為、廉価な本(娯楽小説とか?)とは違って、通常の貸出の際の身分証とは別に、『破損させた際には弁償をする旨の誓約書』の提出に加え、『貸し出す本の値段の半額分の保証金』を出さないと借りられない。ちなみに、保証金は本を返すと全額戻って来る。半額分でも目玉が飛び出るくらいの値段だからなー。まず、普通の平民では保証金自体の用意ができない。故に、魔術書は借りたことがない。

「はっはっは、俺がそんな金持ちに見えるっすか? 普通に、あれっすわ。図書館職員による監視下での読書。めっちゃ嫌がられったっすねー」

 図書館職員に頼み、読みたい本を取って来てもらい、破損や窃盗がないかと職員監視下の特別室で本を読むというシステムがあったりする。

 じ~っと見られながらの読書。しかも、さっさと読み終われ! という職員の圧が強くて強くて、平民にはすこぶる不評な読書だぜ。

 貴族や金持ちは、ぽーんと超高額な保証金払って本借りてく奴が多くて。平民でこれを利用する奴は少ないんだけどねー? ま、いないワケじゃないし……むしろ、そうやってでも必死扱いて勉強する奴のが、平民でも出世する奴のが多いらしい。

 俺の他にも、弁護士や医者を目指して勉強してる奴(こっちは魔術書じゃなくて医学や法律関係の専門書や稀覯本の閲覧)とかいたし。

 偶~に、貧乏な貴族がそうやって勉強することもある。なので、非常に嫌そうな顔はされるが、邪険にされたり嫌がらせをされることは少ない。昔、そうやって追い出した相手が偉くなって、図書館職員が痛い目に遭ったって噂がまことしやかに語られてるし。

「ふふっ、ヴァーグ君は努力家だったのね」
「はっはっは」
「それで、なぜここにいるのだ?」
「一部学院関係者の人には、解体の手間が省けたっつって誉められたんすよー」

 多分、面白がって俺を止めなかった部類の人だろうなぁ。イイ性格してんぜ。

「んで、その、俺を誉めてくれた人が『今度、第二王女が火竜退治に行くらしい。危険人物として監視されるよりは、志願して付いて行ってみてはどうだ?』って、言ってくれてー。『んじゃ、行って来まーす』って感じー?」

 危険人物とか監視とか、面倒そうだし。なんだったら、国出た方がいいかなー? って思ってたとこに、この話聞いて。なら行ってみるかなー? って感じで。お姫様や他のメンバーと合わなきゃ、雲隠れすればいいか、くらいの軽い気持ちで来たんだけどなー?

 姫さんが可愛過ぎて放っとけなくなった。

「アリシアさんはどうしてこのパーティーに?」
「そうねぇ。実は・・・」
「じ、実は、なんですか?」
「夜道で悪~いことしてる人達に誅罰を食らわせていたら、それがどこからか洩れちゃって……幸い、証拠は残してなかったから、謹慎処分で軟禁状態だったんだけど。丁度そのとき、お姫様が火竜退治に行くっていうのを聞いて。面白そうだから、立候補しちゃったっ☆」
「誅罰って……もしかして、平民の間で噂の『必殺、地獄の誅罰お届け人!』の正体はアリシアさんだったりー? すっげー、後でサインください」

 ちなみに、死んでないのに必殺かよ? と最初は思うが、アレだ。『誅罰』を食らわされると、いろんな意味で死ぬ。主に、社会的に抹殺される感じだ。完膚無きまでに・・・

「ふふっ、ごめんなさいね? 物的証拠は残さない主義なの」

 おおう、この反応はマジだったりする? でも残念。断られたぜ。

「必殺、地獄の誅罰お届け人?」

 ※以下、下ネタ入ります。

「そ、それは……不穏な噂のある人物達が、不審人物に顔の判別も付かぬ程フルボッコにされ、悪事の証拠品と共に素っ裸にひん剥かれて、腹部に誅罰の文字と、若干の情けなのか葉っぱ一枚で局部を隠され、城門や時計塔にはりつけにされるという恐ろしい事件の首謀者と見做されている人物の俗称です」

 きょとんと首を傾げた姫さんに答えて、青い顔でアリシアさんを見やるおっさん。

 やー、情けで葉っぱ一枚で局部を隠すっつか……実はアレだぜ? その、局部を隠してあげてる葉っぱ。漆科の植物(触ると痒くなったり肌気触かぶれを引き起こすので有名なやつ)の葉っぱで、官憲に捕まるっていうか、どっちかというと保護になるか? をされる頃には、局部が非常に大変な状態になってるらしい。肌の弱い奴は、数ヶ月間ず~っとナニや局部が腫れて酷い痛痒感(痛くて痒くてつらい)に苛まれて大変な地獄を見る羽目になったのだとか。

 更には、漆科の植物に過敏になった奴は半径数十メートル以内に生の漆科植物が近付くだけで蕁麻疹を発症したり、発熱や呼吸困難、不整脈、気絶などを発症するという割と深刻な後遺症が残るという事例もあるんだと。

 もうあれだな、一生漆科植物には近付けねーわな。漆科のマンゴーとかカシューナッツ、ピスタチオも美味しいのに、可哀想ー。

 だから、局部隠しの葉っぱアレは全っ然、最後の『情け』なんかじゃないと思うわー。むしろ、愉快犯だとか、『もっと物理的にも痛い目見てろ!』的な? ある意味、ガチで鬼畜や悪魔の所業だぜ。

 更に、公言されるにははばかられる噂によると。強姦や強姦殺人などの常習犯の尻には、漆科植物の枝……もしくは、漆科植物の汁が染み込んだ棒が無理矢理突っ込まれていたって話だからなぁ……直腸が傷付いて、漆科植物の樹液や汁が塗り込まれた状態で、官憲が保護? するまで最低数時間は放置されるらしい。

 医者が手配されて診察される頃には切れ痔に加えて直腸が爛れてしまっているそうだ。めっちゃヤバそう。治るまで生き地獄だろうなぁ。下手すりゃ、切れ痔と傷付いた直腸が治らずに壊死して死ぬわ。生きたまま尻付近……から内臓に掛けてが壊死して、死に近付く恐怖。

 近くに住む治癒魔術師はなぜか都合が悪かったり、体調が優れないとか、なぜか連絡が付かなかったり(そもそも連絡してないんじゃね?)して、あんまり凶悪犯共に治癒を施してあげられないのだとか。断り切れなかった一部の可哀想な人が、偶~に高位貴族の凶悪犯を治してあげたりするらしい。

 女性冒険者などは、「いい気味」だとか「自業自得ざまぁ」っつって、嗤ってたけど。

 これってある意味、局部や尻の爛れた凶悪犯の患者を診ることになる医者も被害者だよなぁ。いや、医者は完璧に被害者と言えるか。いろんな意味で心底恐ろしい。戦慄もんだぜ。マジご愁傷様。

 ちなみに、女性の凶悪犯は下着は剥かれずに残してもらえるらしいが、背中や腹に漆科の葉っぱを貼られるっぽい。これはちょっぴり情けって感じか? でも、女性の凶悪犯も普通にお顔フルボッコだぜ? 男同様、平等に鼻や頬骨折られたり、歯や顎が砕かれたりするらしい。「ヤだ、なんか無駄にフェミニスト! 怖!」って、ちょっぴり思ってた。でも、その辺りも納得したわ。

 女性なら、女性に容赦無いのも当然かー。

 まあ、そんな感じの無情且つ、容赦無い所業で貴族平民関係無く、殺人、強盗、暴行、誘拐、脅迫などを犯す凶悪犯罪者共を次々と血祭り(顔の判別も付かない程のフルボッコ)に上げて行くところが平民の間で人気なんだけどなー。

 実際、『必殺、地獄の誅罰お届け人』が現れるようになって、王都近郊での凶悪犯罪が減って治安も少々向上したしさ。

 漆科の植物の葉っぱをお守り代わりに身に付けたりする人もいて……肌が気触れて、断念。漆科植物の刺繍を服や荷物、ハンカチに入れて、見えるように持ち歩く人が増えたりとかしてさ。

 いっそ一思いに殺された方が、こんな風に生き恥を晒したり、とんでも生き地獄を味合わずに済みそうだよなー。『殺す方が慈悲』というのが、めちゃくちゃ体現されてる感じだぜ。

 そんな風に世間を騒がせている『必殺! 地獄の誅罰お届け人』には、高額賞金掛かってたりもする。ぶっちゃけ、狙ってた賞金稼ぎもいるけどさー。みーんな返り討ち。犯罪者じゃない奴は意識刈り取られて放置だったけど、自分が犯罪者のクセに賞金稼ぎしてるような奴は、普通に餌食になってたし。

 狙われるのは凶悪犯ばかりで、むしろ一般人を守ってんじゃね? って感じだし、かなりの手練れに違いないって。しかも、捕まえた奴は市民に恨まれそうだしさー。報酬と鑑みても割に合わないから、一部個人的な恨みや興味や好奇心旺盛な奴以外、みーんな狙うのやめたんだよなー。

「ま、まさか……」

 うんうん。まさかまさかだぜー。こーんな美人のシスターさんが、あ~んな鬼畜や悪魔の所業だと言われる『必殺、地獄の誅罰お届け人』だったとはなー?

 一瞬、神に遣える修道女とは一体……? と思わないでもないけど。

「うふふっ」

 にこりと妖艶に微笑むアリシアさん。

 まあ、うん。アレだ。

 逆らっちゃまずい人だな、アリシアさんは。心に刻んでおこう。

 そんな風にお互いの事情をぽつぽつと話しながら、火竜の棲み付いた山脈まで向かい――――


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