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if……新しい扉が開いちゃったっ!? ver1
しおりを挟む4話目『わたしは、覚悟を決めて口を開く。』からの分岐。
__________
「な、なに言ってんだよ、お前」
怯えを孕む視線に、震える声。
「は? 気安く話し掛けんなよ、このクズが。お前みたいに低能で低俗で、下品で下劣、暴力的なクソ野郎に話し掛けられて、わたしが喜ぶとでも思ってんの? 馬鹿なの? ああ、馬鹿だったっけ。大した顔してるワケでもないし、取り立てて才能があるワケでもない。全部が中途半端なクセに、自分がモテると思ってる、イタい勘違い野郎が。誰がお前みたいな奴のことを好きになるか。いい加減、自分が嫌われてんの気付け。キモいんだよ。存在自体が目障りだから、わたしの前から消えてくれない?」
そう言うと、クソガキの顔が真っ赤になり、口元を押さえてぷるぷると震え出した。目の縁には、今にも零れ落ちそうな涙が溜まっている。
「あら、どうして泣くのです? ほら、あなたがそうだったように。わたしも単に、照れ隠しでこう言ってるだけかもしれないでしょう? 笑ってくださいよ。喜びなさいよ。ほら? なに泣いてんだよ、うぜぇな。わたしは一度も泣かなかったのに。男のクセに、これくらいで泣くのかよ? 同情買ってるつもりか?」
更に言葉を連ねると、
「さっきから、黙って聞いていればっ……」
クソガキの母親が真っ赤な顔でキッ! とわたしを睨み付けて言った。
「そんなの、全部ご褒美に決まってるじゃないっ!?」
「は?」
・・・え~っと? ゴホウビって?
「もうっ、息子ばかり罵ってずるいですわっ!? 初対面の、それも息子と同い年の女の子に冷たく蔑みの視線で射られながら、切れ味鋭く罵られるだなんてっ・・・旦那様にメスブタ扱いされるのとはまた違って、新しい扉が開いたじゃありませんの♡ですので、息子ではなくて是非ともこのわたくしをっ! 気が済むまで、心行くまで、存分に、罵ってくださいっ!? お母様も、叩くのでしたらお嬢さんではなく、このわたくしを叩いてくださいませっ!? さあっ、どうぞっ!?」
真っ赤になった顔で恥じらうように、けれど嬉しそうに、うっとりと興奮したように身悶える夫人の、期待に満ちた熱い視線が、わたしと母とに向けられている。
は? いや、え?
ナニヲイッテルノ??
イミワカンナインデスケドっ!?
「なっ、なにを言ってるんですか母上っ!? やめてくださいっ!? こ、コイツが」
「は?」
コイツ呼ばわりに思わず低い声が出ると、真っ赤になった顔が嬉しげに、なにかを期待するようにとろけ、ハアハアと荒い息でわたしを見詰める。
なんかキモい。
「か、彼女が文句があるのは、罵りたいのは俺ですよっ!? さあっ、気が済むまで俺を罵倒しろっ! 蔑んだ目でっ! もっと口汚く詰れっ!」
「・・・は?」
ナニイッテンノ?
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