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もう、この子ったら照れちゃって。

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 そろそろ中等部も卒業。高等部に上がる日が近くなって来た、ある日のこと。

 いつものようにウザいクソガキに絡まれ、うんざりした気分で帰宅すると、父から大事な話があると言われ・・・

 告げられたのは、あのウザ絡みをするクソガキの家から、婚約が申し込まれているとのこと。

「お前にとってはいい縁談だから、受けようと思っている」

 なんて言われて、

「嫌です。断固拒否します」

 そう断ったのだけど――――

「あらあら、可愛らしいお嬢さんね。良かったわね、あの子がうちにお嫁に来てくれるなら、わたくしも嬉しいわ」

 にこにこと微笑む貴婦人を、完全に無の表情で見やる。

 断固拒否をしたが、週末の早朝。

 まだ寝ていたところを使用人達とお母様に強襲され、あれよあれよと風呂に突っ込まれ、ドレスを着せられて無理矢理飾り立てられ、朝食も食べさせてもらえずに、馬車に乗せられ、お見合いの席へとドナドナされてしまった。

 最悪だ。

「うちの娘ったら、愛想が悪くてすみません」

 母が言う。

 全くもって乗り気じゃないのだから、愛想が悪いのも機嫌が悪いのも当然だ。

「ハッ、ブスの割に飾り立てたじゃないか」

 ニヤニヤ笑いながら、いつものように暴言を放つクソガキ。そして、一瞬の間が空き・・・

 わたしは、ほんのちょっとだけ期待した。

「もう、この子ったら照れちゃって。ごめんなさいね? 本当は、お見合いの話を持って行った当日からずっとそわそわして、今日をとっても楽しみにしてたのよ」

 にこにこと、口先だけの謝罪で。クソガキを窘めもせずに、楽しそうに話す夫人。

 まぁ、クソガキの親がクソガキを咎めるかも……なんて、するだけ無駄な期待だったようだけど。

「なっ……母上!」

 顔を真っ赤にしたクソガキは、

「いいか、そんなんじゃないんだからな! 勘違いするなよ! 俺はただ、お前みたいに地味でブスな不細工女には嫁の貰い手が無いだろうからっ、ボランティアで見合いしてやってんだ! ボランティアでな! ありがたく思え!」

 なんぞ意味不明なことを喚いている。

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