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壮絶な、次期教皇選出のための擦り付けの話し合いが取り行われた。
しおりを挟むうむ・・・うちの教会ヤバくね?
と、わしは二人の本性に気付いてからは常々思うておった。
なので、ちっとばかり細工をしたのじゃが・・・
それがまさか、あんなことになるとは思わなんだ。
彼らが演説をするときに、ちぃとばかり祝福をしたら――――
自分が教皇になった暁には信者からどんどん金を毟り取り、酒池肉林の贅沢を極め、美女を侍らせ、そのうち自分の娘(教皇は妻帯禁止なんじゃがの?)を、王子の婚約者に就け、行く行くは自分の孫を国王にするのだっ!! と。
すわ乱心かっ!? というくらいのやべぇことを俗物がぶっちゃけよった。
そして、それに顔をどす黒くしてブチ切れたのが狂信者の方の候補者。
そのようなことは赦さん! 神はそのようなことは望んでいない! と、叫んだまではよかったんじゃがのぅ。こっちもこっちで・・・
神は異教徒を駆逐せよと仰っている! だとか宣いおってからに。
自分が教皇になった暁には異教徒共を駆逐し、改宗した者のみを去勢して奴隷に落とし、我が神に懺悔し続けることでのみ、その生存を赦す・・・などと、余所の宗教関係者に聞かれたら戦争待った無し! な頭おかしい宣言をしおった。
マジやべえっ!!
と、顔色を変えたのは、普通の良識のある者達。
双方のやべぇ宣言を聞いてたわしらがドン引きしている間に、ブチ切れ狂信者が俗物に掴み掛かり、殴り合いが始まりおった。
そして、講堂で揉み合った二人は――――二人仲良く? ぽっくり逝ってしまいおった。
まぁ、二人共、見るからに不健康そうじゃったからのぅ。俗物は俗物らしく、でっぷりと脂ぎった体格。狂信者の方は、行き過ぎた厳しい節制でガリガリじゃったしの。
そんな不健康そうな二人が殴り合いをして、二人同時に身体の中の切れちゃいけない類の血管やら脳のどこぞがプッツンしたようじゃった。
いきなり二人共倒れて、回復魔術などの手当ての甲斐も虚しくほぼ即死で天に召され――――たのかの? 若干、コイツら地獄堕ちてね? と思いつつ、そのまま講堂は葬儀会場に早変わりじゃ。
と、そんなことがあり・・・埋葬までが済んだ後で、「あの二人には天罰が下ったのだ!」と、誰ぞが言い出して大騒ぎになりおった。
そのせいで、次期教皇に立候補していた候補者達がパニックに陥り次々と辞退。
そして――――壮絶な、次期教皇選出のための擦り付けの話し合いが取り行われた。
まず、高位の司教から候補に挙げられて行った。が、各々なんだかんだ理由を付け、次期教皇就任を全力で拒否。そして、段々と位が下がって行き、中堅どころの司祭にまで話が下りて行ったとき。
わしより若い(中年)司祭が泣きそうな顔で余計なことを言いよった。「ね、年功序列で考えてみては如何でしょうかっ!?」と、ぷるぷる震えながら。
すると、皆が一斉に頷き合い、現役最高齢の司祭だとしてわしの名をあげつらいよったのじゃ! わし、驚愕っ!? したのも束の間、一生懸命、それはそれは必死に辞退しようとした。
健康面に不安が。ボケへの不安。わし如きに務まるはずがない……などなど、泣き言、泣き落とし、老人の全力駄々捏ねも駆使してみたのじゃが――――
「昨日、子供達と一緒に走り回っているお姿を拝見致しました」
「保護している孤児達、数百名のお名前を一人一人覚えていらっしゃるとお伺い致しました」
「毎日、祈りを捧げているお姿を拝見しております」
「この前、山に登っていられるお姿を拝見しました。ご健脚のようでなにより」
普段はわしのことを視界にも入れんクセにこんなときだけ一致団結しおって! わしの逃げ道がどんどん封じられ・・・
気が付けば、わしが教皇へ就任することが全会一致で可決されおったっ!?
わし、めっちゃ嫌がったのに・・・
なればと、せめてもの抵抗として、わしは同士達も道連れにすることに決めた。
目立たず、ひっそりと暮らして行きたいという気持ちは、痛い程にわかる! しかーし、そんなわしの気持ちを無視して、わしを教皇へと押し上げたおまいらの所業は絶対忘れんわい!
というワケで、閑職だったり、ほぼ引退間際だったり、やる気の一切無い連中を教皇権限で要職に任命してやったわ!
文句も非難も轟々じゃったが・・・
「わしと代わるか?」
圧を籠めた笑顔でそう訊けば、皆一発で黙りおったからの。
まぁ、若干の友情や信頼関係を失ったような気がせんでもないが・・・あれじゃな。旅は道連れ世は情け。死なば諸共、一蓮托生じゃーっ!? と、道連れにしてやったわっ!! という経緯じゃ。
と、ほのぼのした話は、同士らの任命まで。
それからは・・・日々是戦いの連続じゃった。
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