上 下
160 / 161
☪Halloween✜Night★~ジャッジ・ザ・パンプキン~

しおりを挟む
 ※ハロウィン特別編なので、細かいことは気にしないでください。

__________

 カラフルに彩られた街に、キャッキャと楽しげな子供達の声が鳴り渡る。

Trickトリック orオア Treatトリート?」

 カボチャ頭やカブ頭、シーツオバケに魔女、ミイラ、妖精、姫、王子、騎士、海賊、踊り子、狼男、小悪魔、天使、ヴァンパイア。それぞれ思い思いに可愛らしい仮装をした子供達が、お菓子を求めて楽しげに街を練り歩く。

「Happy Halloween♪」
「Happy Halloween!!」
「お菓子をくれなきゃイタズラするぞっ!」

 手にしたかごに、訪ねた家から貰ったお菓子を入れ、キャッキャと笑い合う。

 お菓子をたくさん貰えた子は満足そうに、お菓子をあまり貰えなかった子は残念そうに。

「さあ、遅くならないうちにお家へお帰り」

 ハロウィンの夜は、みんなが浮かれて陽気に騒ぐ。あまり遅くなると、変な人も出るからね。

 けれど、満足できなくて。

「お菓子が足りない。もっと欲しい」

 と、欲張りな子供は・・・

「おやおや、あまりお菓子を貰えなかったようだねえ? 可哀想に。特別にお菓子をあげよう。みんなには内緒だよ? さあ、付いておいで」

 親切めかした悪い奴らに――――

✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰

 薄暗い裏路地に、

「ねえ、どこまで行くの?」

 子供の不安げな声が響く。

「もうすぐ着くよ」
「あんまり遅くなると、母さんが心配するから。もういいよ、帰る」
「大丈夫だよ。すぐそこだから。クッキーもキャンディーも、ケーキだってあるんだよ」
「そうだぜ。姐さんのお菓子はとっても美味いんだ。折角せっかくここまで来たってのに、帰っちまうたぁ勿体無もったいねぇことするぜ」
「そうそう。あのとき食っときゃ良かったって、絶対ぇ後悔するに決まってらぁ」

 子供を宥める男女の声。しかし子供は、粗野な男二人に益々不安げな顔をして俯く。

 ――――とそこへ、

「Trick or Treat☆いやぁ、実にいい言葉だねっ☆年に一度だけじゃなく、年中行事にしちゃえばいいと思わないかい?」

 可愛らしい声が降って来た。

「まぁ、でもほら、アレだよねぇ? お菓子をくれなきゃイタズラするぞっ☆って、ボク的にはどっちでも楽しいんだよねぇ。仮装して練り歩くちみっ子達とか、すっごく可愛らしいしさっ☆だからさぁ・・・わかるでしょ? とうっ!」

 と、屋根から飛び降りて軽やかに着地し、シュタ! とポーズを決めようとして、

「ぅおっとっ! バランスがっ……う~ん、ちょ~っと頭が重いかにゃー? やっぱ生のカボチャは重いにゃー。と、気を取り直してっ☆」

 軽くよろけながら裏路地に立ったのは、ジャック・オー・ランタンのオレンジカボチャをすっぽり被ったバランスの悪い大きな頭に、ひらりとなびく黒いマント姿、手にはほうきを掴んだ小柄な影。三角の形にくり抜かれた穴の奥で、ピカリと鬼火のように光る金色。

「一応、万が一、億が一って可能性が無きにしもあらず! ってことで確認しようと思うんだ・け・ど、いかにもガラの悪い、ダっサいチンピラ一味的な仮装した、更にはかおと頭まで悪そうな大人達が、親切にも迷子の子を家まで送ってあげようとしている・・・ってことだったり、するのかにゃー♪」

 どことなく嘲笑混じりのカボチャ頭の質問に、子供を連れた男女がニヤニヤと下品な笑みを浮かべてカボチャ頭を見下ろす。

「誰がダサくて顔と頭が悪いだっ!?」

 男の一人が声を荒げ、

「怖がらせるんじゃないよ。お前は黙ってな」

 女がそれを黙らせ、

「そうそう、俺らは親切なんだよ」

 別の男がニヤニヤと猫なで声を出す。

「そうさ。なんだったら、ぼくも迷子だってンなら、あたしらが家まで送ってあげるよ」

 にこりとカボチャ頭に笑い掛ける女。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

【完結】「まずは……手前ぇよりも上位の存在に犯されて来い。話はそれからだ」

月白ヤトヒコ
ファンタジー
よその部署のヘルプという一仕事を終えて帰ろうとしたら、突然魔法陣が現れてどこぞの城へと『女神の化身』として召喚されたわたし。 すると、いきなり「お前が女神の化身か。まあまあの顔だな。お前をわたしの妻にしてやる。子を産ませてやることを光栄に思うがいい。今夜は初夜だ。この娘を磨き上げろ」とか傲慢な国王(顔は美形)に言われたので、城に火を付けて逃亡……したけど捕まった。 なにが不満だと聞かれたので、「まずは……手前ぇよりも上位の存在に犯されて来い。話はそれからだ」と言ってやりました。 誘拐召喚に怒ってないワケねぇだろっ!? さあ、手前ぇが体験してみろ! ※タイトルがアレでBLタグは一応付けていますが、ギャグみたいなものです。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

【完結】淘汰案件。~薬屋さんは、冤罪だけど真っ黒です~

月白ヤトヒコ
ファンタジー
とある酒場で、酒を飲んでいた冒険者のうち、約十名が体調不良を訴えた。そのうち、数名が意識不明の重体。そして、二人が死亡。 調査の結果、冒険者の体調不良や死因は、工業用アルコールの混ぜ物がされた酒と、粗悪なポーションが原因であると判明。 工業用アルコールが人体に有害なのは勿論だが。その上、粗悪なポーションは酒との飲み合わせが悪く、体外へ排出される前にアルコールを摂取すると、肝臓や腎臓へとダメージを与えるという代物。 酒屋の主人は、混ぜ物アルコールの提供を否定。また、他の客からの証言もあり、冒険者のうちの誰かが持ち込んだ物とされている。 そして、粗悪なポーションの製作者として、とある薬屋が犯人として浮上した。 その薬屋は、過去に幾度も似たような死亡事故への関与が疑われているが、証拠不十分として釈放されているということを繰り返している、曰く付きの怪しい薬屋だった。 今回もまた、容疑者として浮上した薬屋へと、任意で事情聴取をすることになったのだが―――― 薬屋は、ひひひひっと嬉しげに笑いながら・・・自らを冤罪だと主張した。 密やかで、けれど致命的な報復。 ざまぁと言えばざまぁですが、あんまりすっきりはしない類のざまぁだと思います。

【完結】悪役令嬢の断罪現場に居合わせた私が巻き込まれた悲劇

藍生蕗
ファンタジー
悪役令嬢と揶揄される公爵令嬢フィラデラが公の場で断罪……されている。 トリアは会場の端でその様を傍観していたが、何故か急に自分の名前が出てきた事に動揺し、思わず返事をしてしまう。 会場が注目する中、聞かれる事に答える度に場の空気は悪くなって行って……

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

処理中です...