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読書家シュゼットの場合。

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「それで、君はこの後どうするんですか?」
「わ、私に手を出すとロッド兄さんが黙ってませんよっ! ロッド兄さーん、助けてくださーいっ!!」

 またしても他力本願なことを言い、ロディウスを呼ぶシュゼット。

「・・・ロッドは来ませんよ。とりあえず、久し振りですね? シュゼット」
「? どうして悪い人が私の名前を・・・?」
「ワタシの声を忘れましたか? 君には聴力検査も必要なようですねぇ」
「声? って、エスト兄さんじゃないですかっ!?」

 きょとんと顔を上げたシュゼットが、自身の両肩へ手を置いたエステバンを見上げて驚く。

「はい、ワタシですよ。シュゼット」
「エスト兄さん、お久し振りです。今日はどうしてここへ? あ、とりあえず、肩を治してくれませんか? このままでは本が読めませんよ」
「はい。読まなくていいんです。本命はベティ君だったのですが、本日は君のメンテナンスです」
「え?」

 ピシっ! と、笑顔が固まったシュゼットをひょいと肩へ担ぎ、エステバンは図書室から移動する。

「そんなっ!? 酷いですぅっ! 本がぁっ」
「大人しくしましょうね? シュゼット」

 両肩の関節を外された為、動かせない両腕の代わりにバタバタと足を動かすシュゼットの足を押さえ、軽く注意しながらも歩を進めるエステバン。

「エスト兄さんっ!」
「とりあえず、シュゼット。前回の食事はいつ摂りましたか? そして、なにを食べましたか?」

 抗議の声を無視しての質問へ、

「え? え~と・・・覚えて、ません……」

 首を傾げ、小さく答えるシュゼット。

 文字通り、時間を忘れる程に読書へ没頭していたシュゼットは、つい先程・・・・の食事・・・になにを食べたのか、全く思い出せなかった。

「では、何時間前に起きましたか?」
「え~と・・・三十時間、くらい前?」
「プラス十二時間と言ったところでしょうか? 四十二時間以上寝ていませんね。ちなみに、前回の食事は二十三時間程前だそうです。教えてくれた侍女が、とても呆れていましたよ? シュゼット」
「ぇ~、と・・・ごめんなさい?」
「全く・・・」

 エステバンは、生存本能がぶっ壊れているとしか思えない年下の幼馴染みに溜息を零す。

「まずは水分補給と軽い食事。後に入浴。その後で、診察と整体をしてから点滴ですね」
「はいっ、質問ですエスト兄さん!」
「はい、どうぞ。シュゼット」
「読書の時間が入ってません!」
「ええ。ありません」
「そんなぁ・・・酷いですよぉ」
「言ったでしょう? 君のメンテナンスです。君は、同じ姿勢で何時間も何十時間も、身体を動かさないで読書や書き物をするんですから、身体中バッキバキなんですよ。しかも、非常に不摂生ですからね。それがどれだけ身体に悪いことか、解りますか? 君はワタシやリディ君が定期的に診てないと、コロっと呆気なく死んでしまいそうですからね」

 エステバンは溜息を吐きながら、待ち構えていた侍女へシュゼットを引き渡した。

「では、シュゼットをお願いしますよ」
「かしこまりました」
「え? そんなっ・・・肩を填めてくださいよぉ、エスト兄さんっ!」

 という、シュゼットの慌てる声を無視して・・・
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