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建築士ヴァルクの場合。

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「辺境に城を建てるのは、他国へ武威ぶいを示し、侵略を躊躇ためらわせることへ有効ではあるが、大きな城をむやみに乱立させてみろ?戦争の準備をしていると思われてしまうだろうが。しかも、中央政権にはクーデターを疑われて面倒なこと必至だ。ちゃんと考えて発言しろ。この馬鹿者が」
「あー、戦争かー・・・う~ん・・・」

 青年が少し考えるような素振りをする。その様子に、レディは確りと釘を刺す。

「おい、馬鹿者。戦争起こせば城建てられるなら、戦争起こすのもありかな?などと考えているなら、ヴァルク・グラジオラス。今すぐ貴様の素っ首、叩き落とさせるぞ?」
「ええ~!ヒドいよ姫ー。ちょっと迷っただけだしー。俺平和主義者よー?まあ、クーデターじゃなくて、グラジオラス領独立の方ならいいんじゃなーい?どうですー?姫ー。グラジオラス公国とかー。チョー素敵で格好いいじゃないですかー?」

 間延びした口調で喋りながら、青年は行儀悪く執務机に腰掛けてキラキラとした瞳でレディを見下ろす。

「この馬鹿者が。国の管理など面倒極まりないこと、誰がするか。国など要らんわ」
「面倒だから国を要らないかー・・・」

 レディの返答へしょんぼりする青年。

「当然だ。あと、クーデターなど、余所よそで他言するな。揉み消すのが面倒だ」
「わかってまーす。あーあ、でも俺ー、兄として弟へお城プレゼントしたかったなー?ごめんよパトリックー。姫がOKしてくれないから、お兄ちゃんお前を祝ってやれないよー」
「誰が、誰と、兄弟か」
「やー、どうせ親族ですしー。ノリですよ姫ー」

 ヴァルク・グラジオラスはパトリック・グラジオラスの兄…ではなく、兄弟のような友人関係だ。ちなみにヴァルクは、伯爵家の子息となる。しかも、長子だったりする。
 しかし彼は、とある事情からグラジオラス大公に拠って表舞台から完全に身を引かせられている。
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