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お帰りなさい。
しおりを挟む母親であるわたしが、『あの子』の面倒を見るのは当然のこと。なのに、
「本当にありがとうございます、叔母さん。感謝しています。叔母さんさえよかったら、これからもあの子のことをよろしくお願いします。妻が、少し不安定になっているみたいで……」
と、『彼』がわたしに感謝して、『彼』の家の合鍵を渡してくれた。
『あの女』のことなんてどうでもいいけど、『あの子』に当たり散らすのだけは苦々しく思う。
でも……ああ、合鍵があればいつでも『あの子』に会いに行けるわ。
それからは、『あの子』に会いに。『あの子』の世話をするために。毎日『あの女』のいる家に通った。
そんな日々が続いて――――
ある日のことだった。
いつものように『あの子』の名前を呼んで、
「おかあさん」
って、呼ばれて『あの子』を抱き締めたら、
「……アンタの娘は、何年も前に死んだんだから……いい加減っ、わたしの娘を代わりにするのはやめてよっ!?」
いきなり、鬼のような形相で怒鳴られた。
なにを言われたのか、わからなく……
「あの子は死んだじゃない!!」
っ!?、誰のせいであの子がっ……
「この子は、わたしの娘よ!」
……っ、違う。違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違うっ!!!!!!!!
「この子は、あの子よっ!!!!」
わたしには一目で判ったんだからっ……
「あの子は優しいから、裏切ったあなた達を許して、二人の子供として生まれ変わって来てあげたんだから、この子に感謝しなさい」
「うる、さいっ……うるさい、うるさいうるさいうるさいっ!? わたしの娘を返せっ!?!?」
わたしの言葉を聞かず、『あの女』は暴れ出した。
それを見た『あの子』が怖がったから、わたしは娘を連れて外へ飛び出した。
「おかあさん、あのひとこわい」
と、わたしにしがみ付く『あの子』を、安心させるように抱き締める。
「大丈夫よ、大丈夫。今度こそ、お母さんがあなたを守ってあげるから。二度と奪わせないわ」
そう、だわ。
そう、なのよ。『あの子』は、ちゃんとわたしのところへ、小さくなって戻って来たのよ。
『あの子』をうちに連れて帰って、寝かし付けた後。夜になって、疲れた顔の『彼』が、『あの子』を迎えに来たと言って連れて行ってしまったの。
とても寂しかったけど……夫が、
「君も疲れているだろう? 今日は……いや、もうしばらくは彼の家に預けておこう」
って、言ったから。『あの子』を、また『彼』と『あの女』の家に預けることにした。
それから、『あの女』はどんどん情緒不安定になって行って、『あの子』に酷く当たり散らすようになってしまった。
可哀想に・・・
病弱であることを、一番負担に思って辛い思いをしているのは『あの子』の方なのに。
なんでこんなに酷いことが言えるの?
やっぱり、本物の母親であるわたしの方が『あの子』のことをわかってあげられるのよ。
『あの子』が可哀想だから、早く『あの子』を家に連れて帰らなきゃ・・・
そう、焦っていたときだった。
『彼』と『あの女』が、離婚したと聞いた。
ヒステリーを起こして、『あの子』に酷く当たるようになったことが原因だそうだ。
そして、『あの女』は『あの子』を置いて出て行ったという。あまつさえ、向こうの親は二度と自分達に関わるなと『彼』に言ったそうだ。
さすが、『あの女』の親。酷く薄情だこと。
でも、よかったわ。これでわたしは、ようやく『あの子』と一緒に暮らすことができる。
『彼』に、
「あなた一人で『あの子』の面倒を看るのは大変でしょう? よければ、わたし達が面倒を看るわ」
そう言って、『あの子』を引き取った。
こうして、『わたしの娘』は我が家へやっと帰って来ることができた。
「お帰りなさい。長いこと離れていてごめんなさいね? 寂しかったでしょう? でも、これからは親子三人、一緒に暮らせるわ」
「うん、おかあさん」
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